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取締役と監査役

監査役とは

Last Updated on 2023年2月26日 by

監査役の役割

株式会社の監査役は、会社の役員の一つだということはよく知られていると思います。また、何をする人かということについても、監査という文字、つまり、監督の「監」、査察の「査」という文字から何となく想像がつくと思います。

字が表すように、監査役の任務は、簡単にいうと代表取締役を含む取締役の仕事を監査する、不正がないように仕事ぶりに目を光らせることです。

一般的には、監査役は取締役の下であるというイメージがあります。会社では、実際に仕事をする現場が晴れ舞台で、書類を見る仕事が中心の監査役は、目立たない存在ですが、法律上は、監査役はとても重い役割を持たされており、その権限も大変大きいのです。

監査役の選任

監査役を置かないこともできます。

監査役を置かないことができるのは、定款で株式に譲渡制限を付している会社(非公開会社といいます。)であり、かつ取締役会を設置しない規定を設けている会社です。

監査役を置く会社では、監査役は株主総会で選出されます。

監査役の員数は1人以上で、定款で定めます。1名以上であれば何人であっても法律上の制限はありません。監査役会設置会社は3人以上の監査役が必要です。

監査役の種類

監査役には、会計監査のみ監査できる監査役と、会計監査に限らず会社の全般を監査できる監査役がいます。

会計監査のみ監査できる監査役は、会計帳簿を見るなどして会計に関する監査をします。業務に関する監査が全くできないわけではなく、会計の監査に関係するのであれば、業務に関して調査することができます。

会社の全般を監査できる監査役は、会計監査に限らず会社の事業に関係することは全て監査の対象になります。

監査役の監査の範囲を会計監査に限定することを定款で定めることができる会社は、非公開会社(株式の譲渡制限がある会社)です。それ以外の会社では、全般を監査する監査役にする必要があります。

非公開会社も、定款に定めることで全般を監査する監査役を置くことができます。

監査役の権限

監査役の権限は、やや簡単に説明すると次のようになります。(全般を監査する監査役と会計を監査する監査役では若干異なります。)

□ 取締役や従業員に質問すること
□ 必要があれば独自に調査すること
□ 取締役会に報告すること
□ 株主総会に報告すること
□ 裁判所に訴えること

監査役は質問する権限がある

監査役は、いつでも、取締役や従業員、子会社の役員や従業員に質問して情報を入手できます。答えがこないようであれば、適正な業務を行っているとは言えないので、問題があるという監査報告をすることができます。

監査役は独自に調査する権限がある

監査役は質問するだけでなく独自に調査する権限があります。独自にということは、金庫を開けさせて中を調べることもできるということです。調査のためにかかる経費は会社が負担しなければなりません。監査役が調査のために出張したりする費用については社長といえども拒むことができません。

監査役は取締役会で質問したり意見を言う権限がある

取締役会に出席して、質問したり意見を言うことができます。取締役会は監査役の出席を拒むことはできません。また、監査役が請求したら取締役会を開かなければなりません。取締役に請求しても取締役会が開かれないときは、監査役が取締役会を招集することができます。

監査役は株主総会で報告する権限がある

計算書類および事業報告ならびにこれらの附属明細書について、監査役の監査を受ける必要があります。株主総会では、監査役の監査報告が必要です。通常は監査の結果適正であったという報告をしますが、不適正という監査報告をすることもできます。

監査役は裁判所に訴える権限がある

取締役の責任で会社に損害が生じたときに、その責任を訴訟によって追及する場合には、監査役が会社を代表して訴えを起こすことになっています。

監査役の任期

選任後4年以内に終了する事業年度のうち最終のものに関する定時株主総会の終結の時までというのが基本です。取締役が通常2年ですから、2倍の任期です。これは、監査役の力を強化するために、できるだけ長くやれるようにしたのです。

監査役が任期の途中で退任しその補欠として新しい監査役が就任した場合には、退任した監査役の任期を引き継ぐことができます。その残りの期間は4年よりも短くなります。

非公開会社(株式の譲渡制限会社)であり、定款で定めれば10年以内で任期を定めることができます。

監査役をやめるとき

任期満了以外で監査役を辞めさせるのは難しいですが、健康上その他の理由で自ら辞任することはできます。監査役は株主総会で選出されていますが、辞任について株主総会の許可はいりません。死亡の場合も自動的に辞任になります。監査役に欠員を生じたときは、直ちに後任を選任しなければなりません。

任期満了で、再任されなかった場合は監査役でなくなります。

また、定款の監査役に関する部分の変更があったときに解任されることがあります。次の場合です。
1.監査役が居なくてもよい会社に定款変更する
2.会計監査に限る監査役から全般を監査する監査役に定款変更する。一旦解任されます
3.譲渡制限会社から公開会社に定款変更する。一旦解任されます
4.指名委員会または監査等委員会を置く定款変更をする。一旦解任されます

2~3の場合、同一人物が再任されても問題はありません。

監査役になれない人

会社法では次の場合に監査役になれないと定めています。
1.法人
2.成年被後見人、被保佐人
3.一定の法律に違反し、刑に処せられ、その執行を終わり、またはその執行を受けることがなくなった日から2年を経過しない者
4.3以外の法令に違反し、禁錮以上の刑に処せられ、その執行を終わるまでまたはその執行を受けることがなくなるまでの者

仮に株主総会でこれらの欠格事由に該当する者を監査役に選任しても、この株主総会決議は無効となります。また、任期中の監査役が上記の欠格事由に該当することになった場合、その監査役は当然に監査役を退任することになります。

上記以外の人は、例えば未成年の者でも、破産した人等も監査役になることができます。

この他に、株式の譲渡制限がある会社で、定款で、監査役の資格を株主に限定すると定めている場合は、株主でないということで就任できないことがあります。

監査役は社内業務に携わることができない

監査役は、取締役、執行役員等、使用人または子会社の取締役、執行役員等、使用人を兼任することができません。ただし、親会社の使用人が子会社の監査役に就任することはできます。

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