カテゴリー: 育児介護

  • 育児・介護休業等に関する労使協定のサンプル

    育児・介護休業等に関する労使協定

    〇〇株式会社(以下「会社」という)と同社従業員代表〇〇〇〇とは、育児・介護休業等に関し、下記のとおり協定する。

    (育児休業の例外)
    第1条 会社は、次の従業員から1歳(法定要件に該当する場合は1歳6か月または2歳)に満たない子を養育するための育児休業の申出があったときは、その申出を拒むことができるものとする。
    1.入社1年未満の従業員
    2.申出の日から1年(法第5条第3項および第4項の申出にあっては6月)以内に雇用関係が終了することが明らかな従業員
    3.1週間の所定労働日数が2日以下の従業員

    (介護休業の例外)
    第2条 会社は、次の従業員からの介護休業の申出を拒むことができる。
    1.入社1年未満の従業員
    2.申出の日から93日以内に雇用関係が終了することが明らかな従業員
    3.1週間の所定労働日数が2日以下の従業員

    (子の看護休暇の例外)
    第3条 会社は、次の従業員からの子の看護休暇の申出を拒むことができる。
    1.入社6か月未満の従業員
    2.1週間の所定労働日数が2日以下の従業員

    (介護休暇の例外)
    第4条 会社は、次の従業員からの介護休暇の申出を拒むことができる。
    1.入社6か月未満の従業員
    2.1週間の所定労働日数が2日以下の従業員

    (育児・介護のための所定外労働の制限の例外)
    第5条 会社は、次の従業員からの所定外労働の制限の申出を拒むことができる。
    1.入社1年未満の従業員
    2.1週間の所定労働日数が2日以下の従業員

    (育児短時間勤務の例外)
    第6条 会社は、次の従業員からの育児短時間勤務の申出を拒むことができる。
    1.入社1年未満の従業員
    2.週の所定労働日数が2日以下の従業員

    (介護短時間勤務の例外)
    第7条 会社は、次の従業員からの介護短時間勤務の申出を拒むことができる。
    1.入社 1 年未満の従業員
    2.1週間の所定労働日数が2日以下の従業員

    (従業員への通知)
    第8条 会社は、従業員の申出を拒むときは、その旨を速やかに従業員に通知するものとする。

    (出生時育児休業の申出期限)
    第9条 会社(三を除く。)は、出生時育児休業の申出が円滑に行われるよう、次の措置を講じることとする。その場合、会社は、出生時育児休業の申出期限を出生時育児休業を開始する日の1か月前までとすることができるものとする。
    一 全従業員に対し、年1回以上、育児休業制度(出生時育児休業含む。以下同じ。)の意義や制度の内容、申請方法等に関する研修を実施する。
    二 育児休業に関する相談窓口を各事業所に設置し、事業所内の従業員に周知する。
    三 育児休業について、当会社として、毎年度「男性従業員の取得率○%以上 取得期間平均○か月以上」「女性従業員の取得率○%以上」を達成することを目標とし、この目標及び育児休業の取得の促進に関する方針を社長から従業員に定期的に周知する。また、男性従業員の取得率や期間の目標については、達成状況を踏まえて必要な際には上方修正を行うことについて労使間で協議を行う。
    四 育児休業申出に係る従業員の意向について、人事課から、当該労働者に書面を交付し回答を求めることで確認する措置を講じた上で、従業員から回答がない場合には、再度当該従業員の意向確認を実施し、当該労働者の意向の把握を行う。

    (出生時育児休業中の就業)
    第10条 出生時育児休業中の就業を希望する従業員は、就業可能日等を申出ることができるものとする。

    (有効期間)
    第9条 本協定の有効期間は、平成◯年◯月◯日から平成◯年◯月◯日までとする。ただし、有効期間満了の1か月前までに、両当事者いずれからも申出がないときには、更に1年間有効期間を延長するものとし、以降も同様とする。

    令和〇年〇月〇日

    〇〇株式会社
    取締役社長 〇〇〇〇

    〇〇株式会社
    従業員代表 〇〇〇〇

    解説

    上の労使協定を締結することにより、育児・介護休業、子の看護休暇、介護休暇、所定外労働の制限、短時間勤務の対象者を限定することが可能になります。

    この労使協定については、労働基準監督署長への届出は不要です。

    出生時育児休業は、省令で定める雇用環境整備の取組実施を労使協定で定めた場合に限り、申出期限を2週間超~1か月の範囲内で労使協定で定める期限とすることが可能です。本協定記載の取組は一例です。ほかにも対象となる取組があります。

    労使協定を締結しなければ、出生時育児休業中の就業はできません。就業可能な部署等を労使協定で限定することも可能です。休業中の就業を強制する等、労働者の意に反して就業させてはいけません。

    子の看護休暇、介護休暇を時間単位で取得することが困難と認められる労働者については、労使協定により適用除外とすることができます。

    育児短時間勤務の申出を拒むことができる労働者について、このほかにも一定の範囲で規定することができます。


    関連記事:育児・介護休業法の全体像を解説

    会社事務入門労使協定のサンプル>このページ

  • 育児短時間勤務を適用するのが困難な場合

    適用困難者を除外できる

    育児のための短時間勤務制度には、いくつかの例外措置があります。

    その一つが「業務の性質又は業務の実施体制に照らして、短時間勤務制度を講ずることが困難と認められる業務に従事する労働者」を短時間勤務制度の対象外にする制度です。

    除外できる業務

    まず、除外できる業務を具体的に説明します。

    指針(子の養育又は家族の介護を行い、又は行うこととなる労働者の職業生活と家庭生活との両立が図られるようにするために事業主が講ずべき措置に関する指針 平成21年厚生労働省告示第509)で次のようなケースを例示しています。

    イ 業務の性質に照らして、制度の対象とすることが困難と認められる業務 国際路線等に就航する航空機において従事する客室乗務員等の業務

    ロ 業務の実施体制に照らして、制度の対象とすることが困難と認められる業務 労働者数が少ない事業所において、当該業務に従事しうる労働者数が著しく少ない業務

    ハ 業務の性質及び実施体制に照らして、制度の対象とすることが困難と認められる業務

    (イ) 流れ作業方式による製造業務であって、短時間勤務の者を勤務体制に組み込むことが困難な業務

    (ロ) 交替制勤務による製造業務であって、短時間勤務の者を勤務体制に組み込むことが困難な業務

    (ハ) 個人ごとに担当する企業、地域等が厳密に分担されていて、他の労働者では代替が困難な営業業務

    例示ですから、類似するものであれば、労使の合意により対象にすることができます。

    代替措置をとる

    ただし、対象外にした場合、何も措置しなくてもよいのではなく、代替措置を用意しなければなりません。

    具体的には、対象から除外される従業員に対して、
    (1)育児休業
    (2)フレックスタイム制
    (3)始業・終業時刻の繰上げ・繰下げ
    (4)テレワーク
    (5)保育施設の設置運営その他これに準ずる便宜の供与
    のうちのいずれかの措置を講じなければなりません。

    育児休業

    育児休業をとれれば短時間勤務制度の問題は生じません。

    育児休業制度

    フレックスタイム制

    フレックスタイム制

    始業・終業時刻の繰上げ・繰下げ

    実働時間を変更せずに、始業時刻と終業時刻を同じ時間だけ繰上げ・繰下げすることができます。1日8時間、1週40時間の範囲内であれば、労働時間の規制にかかりません。


    会社事務入門出産と育児を支援する諸制度育児のための短時間勤務制度>このページ

  • 職業家庭両立推進者

    育児介護休業法に規定

    職業家庭両立推進者の選任は、育児介護休業法に規定された努力義務です。強制的なものではありませんが、できるだけ選任するべきです。

    育児介護休業法第29条
    事業主は、厚生労働省令で定めるところにより、第21条から第27条までに定める措置及び子の養育又は家族の介護を行い、又は行うこととなる労働者の職業生活と家庭生活との両立が図られるようにするために講ずべきその他の措置の適切かつ有効な実施を図るための業務を担当する者を選任するように努めなければならない。

    具体的な業務

    ① 育児休業・介護休業等の就業規則の作成、周知
    ② 育児・介護休業をしている労働者の職業能力の開発等に関する措置の企画立案、周知
    ③ 短時間勤務の企画立案、周知
    ④ 転勤をともなう異動をしようとする際の各社員への配慮
    ⑤ 育児等離職者の再雇用の企画立案、周知
    等です。

    新たに選任したとき、又は変更したときは、選任・変更届を都道府県労働局に設置されている雇用環境・均等部(室)に提出します。届出すると、各種セミナーの開催案内等の情報提供があります。

    選任届の様式は厚労省ホームページの下記のページからダウンロードすることができます。


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  • 育児休業を取得すれば育児休業給付金が支給される

    はじめに

    多様な働き方が求められる現代において、従業員の育児と仕事の両立支援は、企業の採用力や定着率にも直結する重要なテーマです。特に、育児休業を取得する社員が安心して子育てに専念できるよう、「育児休業給付金」の知識は人事担当者にとって必須と言えるでしょう。

    この給付金は、育児のために仕事を休む従業員の生活を支え、育児後にスムーズに職場復帰できるよう、国が支援してくれる制度です。今回は、人事担当者の皆さんがこの制度をスムーズに活用し、子育て中の社員を力強くサポートできるよう、給付金の仕組みから具体的な手続き、そして実務で役立つチェックリストまで、詳しく解説していきます!

    育児休業給付金って、どんな制度?

    育児休業給付金は、1歳未満の子どもを養育するために仕事を休む従業員に対して、雇用保険から給付金が支給される制度です。

    2022年10月からは「産後パパ育休(出生時育児休業)」も創設され、男性育休の取得促進にも繋がっています。

    この給付金があることで、従業員は収入の心配を軽減しながら育児に専念でき、会社は大切な人材の流出を防ぎ、長期的なキャリア形成を支援することができます。

    受給できる条件をチェック!

    育児休業給付金をもらうには、以下の条件をすべて満たす必要があります。

    1.雇用保険に加入していること: 育児休業を開始する日(※原則、子が1歳になる誕生日の前日まで)までに、雇用保険の被保険者期間が2年以上あること。

    具体的には、休業開始前2年間に、賃金支払いの基礎となった日数が11日以上ある月が12ヶ月以上必要です。

    1ヶ月の間に欠勤して給与の対象外とされた日がある場合は、給与の対象になる「賃金支払基礎日数」が11日以上あれば、1ヶ月とみなしてもらえます。

    賃金支払基礎日数が11日以上の月が12ヶ月ない場合でも、完全月で賃金の支払の基礎となった時間数が80時間以上の月については1ヶ月として算定します。

    また、転職した場合、1日の空白期間もなく再就職し、前職と通算で要件を満たした場合は、給付金を申請できます。

    2.子どもを養育していること1歳未満の子どもを養育するために休業していること。特別の事情がある場合は、1歳6ヶ月、2歳まで延長が可能です。 (※パパ・ママ育休プラス制度や出生時育児休業(産後パパ育休)など、状況に応じた特例もあります。)

    3.育児休業を取得していること: 会社から育児休業の承認を受け、実際に休業していること。

    4.休業中の賃金が低いこと: 育児休業中の各月に、会社から支払われている賃金が、休業開始前の賃金の80%未満であること。 (全く賃金が支払われていない場合はもちろん対象です。給付金と会社からの賃金を合わせても、休業開始前の80%未満になる場合も対象です。)

    5.休業が労働日であること: 休業期間中の各支給対象期間に、就業している日数が10日以下であること。 (10日を超える場合は、給付金は支給されません。ただし、就業している時間が80時間以下の場合は、例外的に支給されることもあります。)

    6.退職を予定ししていないこと:育児休業給付金は、育児休業後に復職することが前提なので、次の人は受給できません。
    ・妊娠中に退職する人
    ・育児休業開始時点で、育児休業後に退職する予定をもっている人

    いくらもらえるの?

    育児休業給付金の支給額は、休業開始前の賃金をベースに計算されます。

    支給額の計算式

    育児休業開始から6ヶ月間(180日)休業開始時賃金日額 × 支給日数(原則30日) × 67%

    育児休業開始から6ヶ月以降休業開始時賃金日額 × 支給日数(原則30日) × 50%

    支給期間: 原則として、子どもが1歳になる誕生日の前日までです。 ただし、保育園に入れないなどの条件を満たして育児休業の延長が認められた場合は、育児休業給付金も子が1歳6ヵ月になるまで育児休業給付金の支給期間も延長されます。さらに最大で2歳の誕生日の前日まで延長されます。そのとき、入所申出書、入所不承諾通知書、育児休業延長申出書、育児休業給付に係る延長事由申出書が必要です。

    支給上限額: 給付金には上限額があります。これは毎年8月1日に見直しが行われます。

    開始から6ヶ月間(67%支給期間)の上限額: 月額 305,712円(令和6年8月1日~令和7年7月31日)

    6ヶ月以降(50%支給期間)の上限額: 月額 228,150円(令和6年8月1日~令和7年7月31日)

    【ポイント】

    支給率は育休期間によって変わること、そして上限額があることを社員に明確に伝えましょう。特に給料が高い社員の場合、上限額に達して手取りが大きく減ることがあるので誤解がないように説明しなければなりません。

    給付金は、社員個人の口座に、ハローワークから直接振り込まれます

    人事担当者が行う手続き

    育児休業給付金の申請は、原則として事業主(会社)が行うこととされています。

    申請の流れ

    1.社員からの育児休業取得の申し出: まず、社員から会社へ育児休業の申し出があります。この際、子の生年月日や休業期間、復帰予定日などを確認します。

    2.会社で育児休業を承認・休業開始: 社員が育児休業を取得します。休業期間中は、給付金の支給条件を満たすように賃金支払い状況などを管理します。

    3.初回の申請書類提出: 育児休業開始日からしばらく経ってから、ハローワークへ初回の申請書類を提出します。

    4.2ヶ月ごとの継続申請: その後、原則として2ヶ月ごとに、休業の継続状況と賃金支払い状況をハローワークに届け出て、給付金を申請します。

    提出時期

    初回申請: 出生時育児休業給付金の申請は、子ども出生日(出産予定日前に子が出生した場合は出産予定日)から起算して8週間を経過する日の翌日から申請が可能です。

    給付金の申請は、育児休業が始まってから2ヶ月たってから行うことが多いです。育休支給単位期間ごとに、就労日数、就労期間等を記載するからです。そして、原則、2支給単位ごとの申請となっているので、育休開始から2ヶ月経過後に申請する流れになります。

    よって、最初の給付金を手にするのは育休開始から3ヶ月以降になるのが一般的です。

    なお、当該日から起算して4ヶ月を経過する日の属する月の末日までに、申請する必要があります。

    2回目以降の申請: 原則として、前回の支給対象期間の末日の翌日から2ヶ月以内。 ハローワークから「育児休業給付支給申請書」が送られてくるので、それに合わせて手続きを進めます。

    必要な書類(主なもの)

    1.雇用保険被保険者休業開始時賃金月額証明書 (会社が作成。休業開始前の賃金状況を証明する書類)

    2.育児休業給付金支給申請書 (会社が作成し、社員にも署名・押印してもらう欄があります)

    3.休業していることを証明する書類 (出勤簿、賃金台帳、就業規則など)

    4.子の住民票記載事項証明書など (世帯全員の記載があり、本人と子の氏名・生年月日が確認できるもの)

    実務上のポイント

    事前の情報提供と社内ルールの整備

    1.育児休業制度の周知:就業規則等で育児休業制度を明確にし、社員に周知しましょう。特に、男性社員も取得できる「産後パパ育休」については、取得促進の観点から積極的に案内しましょう。

    2.相談窓口の設置:育児に関する相談をしやすい環境を整え、早期に育休取得の意向を把握できるようにしましょう。

    3.給付金制度の説明:育休を検討している社員に対し、給付金制度の概要(期間、金額の目安、申請の流れなど)を分かりやすく説明できるよう準備しましょう。

    チェックリスト

    【社員との事前確認】

    □育児休業の取得要件を満たしているか?  雇用保険加入期間、見込み退職なしなど(就業規則確認)

    □雇用保険の被保険者期間は2年以上あるか? 休業開始前2年間に、11日以上賃金支払い基礎日数(または80時間以上)月が12ヶ月以上

    □子どもは1歳未満か? (延長の有無) 特別な事情(保育園入所不可など)があれば延長可能

    □休業希望期間と復帰予定日を確認したか? 男性育休の分割取得にも対応

    【会社での準備・作成】

    □賃金台帳・出勤簿の確認 休業開始前賃金の算出、休業中の就業日数確認に使用

    □「休業開始時賃金月額証明書」の作成 賃金計算期間(原則として休業開始前6ヶ月間)を正確に記入

    □「支給申請書」の作成 従業員記入欄の依頼、会社記入欄の正確な記入

    【社員から受領】

    □子の住民票記載事項証明書など 世帯全員の記載があり、本人と子の氏名・生年月日が確認できるもの

    【ハローワークへの提出】

    □初回申請の提出期限は確認したか? 育休開始日から4ヶ月を経過する日の属する月の末日まで

    □2回目以降の申請は計画的に行っているか? ハローワークから送付される申請書に基づいて、期限内に提出

    □必要書類はすべて揃っているか?添付書類に漏れがないか最終確認

    □電子申請・郵送・窓口提出のいずれか?

    まとめ

    育児休業給付金は、子育て中の社員が安心してキャリアを継続するために、そして企業が優秀な人材を確保し定着させるために、非常に重要な制度です。人事担当者として、この制度を正しく理解し、適切なサポートを行うことは、社員のモチベーション向上だけでなく、企業のブランドイメージ向上にも繋がります。

    手続きで不明な点があれば、管轄のハローワークや社会保険労務士に相談することをおすすめします。

    この記事が、皆さんの会社の育児休業取得支援と、働きやすい職場づくりに貢献できれば幸いです。


    関連記事:夫婦そろって育児休業を取得すれば出生後休業支援給付

    会社事務入門出産と育児を支援する諸制度>このページ

  • 人事担当者が知っておくべき「介護休業給付金」のすべて

    「介護休業給付金」は、介護のために仕事を休む従業員の生活を支援し、安心して職場に戻れるようにするための、国からの給付金です。今回は、人事担当者の皆さんがこの制度をスムーズに活用し、従業員をサポートできるよう、給付金の仕組みから具体的な手続き、そして実務で役立つチェックリストまで、詳しく解説していきます!

    介護休業給付金って、どんな制度?

    介護休業給付金は、家族の介護のために仕事を休む従業員に対して、雇用保険から給付金が支給される制度です。育児休業給付金と並び、仕事と家庭の両立を支援する目的で設けられています。

    この給付金がもらえることで、従業員は収入の心配を軽減しながら介護に専念でき、会社は大切な人材の流出を防ぐことができます。

    受給できる条件をチェック!

    介護休業給付金は、以下の条件をすべて満たした場合に支給対象となります。

    雇用保険に加入していること

    介護休業を開始する日までに、雇用保険の被保険者期間が2年以上あること。具体的には、休業開始前2年間に、賃金支払いの基礎となった日数が11日以上(または就業時間が80時間以上)ある月が12ヶ月以上必要です。

    家族を介護していること

    以下に示す「対象家族」の介護をしていること。

    □配偶者(事実婚含む)
    □父母
    □子
    □配偶者の父母
    □祖父母
    □孫
    □兄弟姉妹

    同居・扶養の有無は問いません。

    介護休業を取得していること

    従業員が、介護休業制度を利用して会社を休んでいること。介護休業の取得は、対象家族1人につき通算93日まで、3回を上限として分割取得が可能です。

    休業中の賃金が低いこと

    介護休業中の各月に、休業開始前の賃金の80%未満の賃金が会社から支払われていること。 (全く賃金が支払われていない場合はもちろん対象です。給付金と会社からの賃金を合わせても、休業開始前の80%未満になる場合も対象です。)

    休業が労働日であること

    休業期間中の各支給対象期間に、就業している日数が10日以下であること。 (10日を超える場合は、休業手当は支給されません。)

    労働契約の終了予定

    介護休業給付金は休業後の職場復帰を前提としています。そのため、介護休業当初から退職が予定されている場合、給付の対象となりません。

    有期雇用契約の人は、介護休業開始予定日から起算して93日を経過する日から6ヶ月を経過する日までに、その労働契約(労働契約が更新される場合にあっては、更新後のもの)が満了することが明らかでないこと。

    なお、労使協定を締結することにより、以下の労働者については介護休業の対象から除外することが可能であり、介護休業の対象でない場合は介護休業給付金の対象にもなりません。

    ・入社1年未満の労働者
    ・申出の日から93日以内に雇用関係が終了することが明らかな労働者
    ・1週間の所定労働日数が2日以下の労働者

    産前・産後の休業中である場合

    産前・産後休業中などの期間は、介護休業に入れません。また、介護休業中にそのほかの家族に対する介護休業や産前・産後・育児休業に入ると、それまでの介護休業は打ち切られてしまいます。

    「いくらもらえるの?」気になる給付金の額と期間

    給付金は、介護休業開始前賃金の67%が支給されます。

    <計算式> 介護休業開始前賃金日額 × 支給日数(原則30日) × 67%

    給付金は、従業員個人の口座に、ハローワークから直接振り込まれます

    支給期間

    対象家族1人につき、通算93日まで支給されます。この93日は、3回を上限として分割して取得できます。

    支給上限額

    給付金には上限額があります。347,127円(令和6年8月)

    金額は毎年8月に改定されるため、ハローワークで確認が必要です。

    「どうすればもらえる?」人事担当者が行う手続き

    介護休業給付金の申請は、原則として事業主(会社)が行うこととされています。従業員本人が申請することもできますが、多くのケースで会社がサポートすることになります。

    申請の流れ

    従業員からの介護休業取得の申し出

    まず、介護休業開始日の2週間前までに従業員から会社へ介護休業の申し出があります。この際、対象家族や休業期間などを確認します。

    【受給資格確認に必要な書類】

    1.雇用保険被保険者休業開始時賃金月額証明書
    2.賃金台帳、出勤簿またはタイムカード(①に記載した賃金の額および賃金の支払い状況を証明できる書類)

    介護休業の取得

    従業員が介護休業を取得します。休業期間中は、給付金の支給条件を満たすように賃金支払い状況などを管理します。

    申請書類の準備

    会社がハローワークへ提出する申請書類を準備します。従業員本人に記入してもらう箇所もあるため、連携が必要です。

    ハローワークへの提出

    ハローワークへ申請書類を提出します。

    提出時期:原則として、対象家族につき一回の介護休業を終了した日の翌日から、2ヶ月を経過する日の属する月の末日までに提出します。 例えば、5月10日に休業を終了した場合、2ヶ月後の7月10日の属する月、つまり7月末日までが提出期限となります。

    【提出書類】

    □ 雇用保険被保険者休業開始時賃金月額証明書(会社が作成。休業開始前の賃金状況を証明する書類)
    □ 介護休業給付金支給申請書(会社が作成し、従業員にも署名・押印してもらう欄があります)

    【添付書類】

    □介護休業給付金支給申請書 ※個人番号欄にマイナンバー(個人番号)の記載必須
    □被保険者が事業主に提出した介護休業申出書
    □住民票記載事項証明書等(介護対象家族の方の氏名、申請者本人との続柄、性別、生年月日等が確認できる書類)
    □出勤簿、タイムカード等(介護休業の開始日・終了日、介護休業期間中の休業日数の実績が確認できる書類)
    □賃金台帳等(1.の申請書に記載した支給対象期間中に支払われた賃金の額および賃金の支払い状況、休業日数および就労日数を確認できる書類)

    支給(不支給)決定を受け、支給決定通知書が交付され、支給決定日からおおむね1週間程度で指定口座に給付金が振り込まれます。


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  • 妊娠出産等の申出に対して制度周知や意向確認をするときの注意点

    個別周知と意向確認

    労働者から、本人又は配偶者が妊娠又は出産した旨等の申出があった場合に、当該労働者に対して、育児休業制度等(出生時育児休業を含む。)について周知するとともに、制度の取得意向を確認するための措置を実施する必要があります。この場合、取得を控えさせるような形での個別の周知と意向確認は認められません。(令和4年4月1施行)

    育児介護休業法第21条 事業主は、労働者が当該事業主に対し、当該労働者又はその配偶者が妊娠し、又は出産したことその他これに準ずるものとして厚生労働省令で定める事実を申し出たときは、厚生労働省令で定めるところにより、当該労働者に対して、育児休業に関する制度その他の厚生労働省令で定める事項を知らせるとともに、育児休業申出に係る当該労働者の意向を確認するための面談その他の厚生労働省令で定める措置を講じなければならない。
    2 事業主は、労働者が前項の規定による申出をしたことを理由として、当該労働者に対して解雇その他不利益な取扱いをしてはならない。

    ポイント1 個別に説明する

    法律では「当該労働者に」となっています。ですから、一般的に知らせるのではなく、育児介護休業法の適用を受ける状態になった人、一人一人に個別に説明しなければなりません。

    ポイント2 書面を交付する

    周知の具体的なやり方は、
    ① 面談
    ② 書面交付(郵送によることも可能)
    ③ FAX
    ④ 電子メール等
    のいずれかによって行う必要があります。なお、③、④は労働者が希望した場合のみとなっているので注意しましょう。

    説明用の書面を作成し、その書面を交付しつつ概略を説明し、質問を受けるという形がよいでしょう。いつでも対応できるように事前に書面を用意しておきましょう。また会社としても説明した記録を残すために、同じ文書を作成して一通に「この説明書を受領しました。年月日。署名」を記載してもらって保管するとよいでしょう。

    ポイント3 申し出が無くても

    労働者から申し出が無くても、何らかの方法(他の社員の会話など)で会社(上司等が)がそのようなことを知ったときは、知らぬふりをせずにこの周知をしなければなりません。

    ポイント4 周知する内容

    ①~④の全てを周知しなければなりません。

    ① 育児休業・出生時育児休業に関する制度
    ② 育児休業・出生時育児休業の申出先
    ③ 育児休業給付に関すること(制度の内容など)
    ④ 労働者が育児休業・出生時育児休業期間において負担すべき社会保険料の取り扱い

    確実に周知するために書面を作成しましょう。

    厚生労働省ホームページの「育児・介護休業等に関する規則の規定例」のページに、「参考様式(個別周知・意向確認書記載例、事例紹介、制度・方針周知 ポスター例)」が掲載されています。

    厚生労働省の「例」を基本にするのが望ましいのですが、次のように要点を書面にして足りない部分はパンフレットなどを添付するやり方も可能です。

    育児休業等について

    年 月 日

    〇〇〇〇殿

    説明者 総務部 〇〇

    育児休業について説明します。

    1.まず最初に、説明資料として育児休業などの制度について厚生労働省が作成したパンフレットと当社の育児介護休業規程をお渡しします。説明資料を読みながら説明をお聞きください。分からないところがあったら、説明の途中でもかまわないので遠慮なく質問してください。

    2.育児休業等の期間は現在の部署での在籍が継続します。ただし、休業中の連絡等は総務部が窓口になります。担当者は〇〇です。遠慮なくご連絡ください。

    3.休業から復帰したときは、従来の等級並びに職位で現在の部署に復帰します。ただし、機構改革等により部署に変動があったとき、またはそれに準じるやむを得ない事情が発生したときは、従前と異なる部署に配属することになります。この件についてはあなたの希望を聞いて決定します。

    4.休業中は給与は支給されません。雇用保険から支給される育児休業給付金の支給については総務部がお手伝いします。

    5.休業期間は賞与の対象期間になりません。給与は支給されませんが、休業期間中に昇級が実施されたときは、直前2年間の平均評語を用いて昇給を実施します。

    6.やむを得ない事情で休業を中止するときは、会社の諸準備のため、原則として申出日より1週間後から出社していただきます。この件についてはあなたの希望を聞いて決定します。

    6.以上で説明は終わりますが、何か不明のことがあれば遠慮なく質問してください。また、後日、分からないことがでてきたときは、遠慮なく総務部〇〇にご連絡ください。

    7.

    この文書によって説明を受けました。

     年 月 日 〇〇〇〇(署名)

    意向の聴取

    説明のあとに希望等の意向を聴取します。

    子や家庭の状況により、両立が困難となる場合もあるため、労働者の離職を防ぐ観点から、勤務時間帯や勤務地、両立支援制度の利用期間の希望等の意向を確認しなければなりません。

    意向の配慮

    意向を確認したあとは、自社の状況に応じ、事業主はその意向に配慮をしなければなりません。

    配置、業務量の調整、両立支援制度の利用期間等の見直し、労働条件の見直しなど

    子が3歳になるまでに行うべき面談等

    上記は妊娠出産等の申出を受けた際の面談等の説明ですが、子が3歳になるまでの適切な時期に行うべき面談についても育児・介護休業法に定められています。

    関連記事:子が3歳になるまでに仕事と育児の両立に関する制度の説明と取得意向を確認するための面談をしなければなりません


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