Last Updated on 2025年6月13日 by 勝
育児のための短時間勤務制度について
制度の概要
何かの先生: 社長、本日はお忙しいところ恐縮です。今回は、育児のための短時間勤務制度について、最近の法改正も踏まえて詳しくご説明させていただきます。
社長: いつもありがとうございます。育児短時間勤務ですね。改めてきちんと把握しておきたいと考えておりました。よろしくお願いします。
何かの先生: はい、かしこまりました。まず、この制度の基本的な義務についてですが、3歳に満たないお子さんを養育しており、かつ育児休業を取得していない従業員から申し出があった場合、会社は所定労働時間を短縮する措置を講じなければなりません。これは企業の義務として定められております。
社長: 義務なのですね。どの程度の短縮すればよいのでしょうか?
何かの先生: 原則として、1日6時間に短縮することが基本となります。ただし、例えば5時間、6時間、7時間といった複数の選択肢を設けて、従業員が自由に選べるようにすることも可能です。あまりに短くしすぎますと、賃金面などで従業員に不利益が生じてしまうため、極端な短縮は認められていません。
2024年改正育児介護休業法のポイント
何かの先生: そして、特に社長にお伝えしたいのが、2024年5月31日に成立いたしました改正育児介護休業法についてですす。まだ施行日は未定ですが、公布後1年6か月以内の政令で定められることになります。
社長: どういう変更があるのですか?
何かの先生: はい、これまでは、3歳以上小学校入学前のお子さんを持つ従業員への対応は「努力義務」とされておりました。しかし、改正後は、3歳以上小学校就学前のお子さんを養育する従業員に対しても、会社が具体的な措置を講じる義務が発生します。
社長: 具体的な措置というのは、どのような内容でしょうか?
何かの先生: 会社は、職場の状況に合わせて、以下の柔軟な働き方から2つ以上を選択し、従業員に提供することが義務付けられます。そして、従業員はその中からご自身に合った働き方を選んで利用できるようになるのです。
1.始業・終業時刻の変更
2.テレワーク
3.短時間勤務
4.新たな休暇の付与
5.その他、働きながら子を養育しやすくするための措置
何かの先生: また、会社は、この提供する措置について個別に従業員へ周知し、利用の意向を確認することも義務付けられることになります。
社長: なるほど、今後は対象となる年齢層が広がり、会社として複数の選択肢を用意する必要が出てくるのですね。これは事前にしっかりと準備を進めておく必要がありそうです。
短時間勤務制度の対象外となる従業員
何かの先生: この制度には、適用対象外となる従業員もいらっしゃいます。例えば、日雇いの従業員や、元々1日の所定労働時間が6時間以下の従業員は、原則として適用除外となります。
社長: 他にはありますか?
何かの先生: 労使協定を結ぶことで、以下の従業員も適用を除外することが可能です。
1.勤続期間が1年に満たない従業員
2.1週間の所定労働日数が2日以下の従業員
3.業務の性質上、短時間勤務が困難な場合
何かの先生: ただし、最後の「業務の性質上困難な場合」を適用する際は、代わりに始業・終業時間の変更やフレックスタイム制度など、短時間勤務制度に代わる措置を必ず講じる必要がありますので、その点はご留意ください。
社長: 管理職の場合はどうなるのでしょうか?
何かの先生: 労働基準法上の管理監督者には、この制度は適用されません。しかし、その従業員が真に管理監督者に該当するかどうかは、慎重に判断していただく必要があります。
社長: 派遣社員の方々の対応は、どのように考えればよいでしょうか?
何かの先生: 派遣従業員については、労働契約を結んでいる派遣元で締結された労使協定が適用されます。もし派遣元が、派遣先の業務で短時間勤務が難しいと判断し、適用除外とする場合は、あらかじめ労使協定にその旨を定める必要があります。具体的な手続きは通常の従業員と同様です。
育児のための短時間勤務のポイント
何かの先生: ここでいくつか、短時間勤務制度における重要なポイントについてお話しいたします。
社長: はい、お願いします。
何かの先生: まず、この制度は、正社員をパートタイマーにするといった雇用形態の変更を伴うものではありません。正社員のまま短時間勤務を認める必要があります。もし会社が一方的に労働契約の変更を求めるようなことがあれば、不利益な取り扱いとして問題になる可能性があります。
社長: なるほど、正社員のまま勤務時間が短くなるということですね。残業を命じることはできるのでしょうか?
何かの先生: 原則として、短時間勤務制度を利用している従業員にも残業を命じることは可能です。しかし、従業員が所定外労働の免除を請求できる期間にあり、実際に免除を請求している場合は、残業を命じることはできません。
社長: 育児時間という制度もあったかと思いますが、それとはまた異なるのですね?
何かの先生: はい、その通りです。労働基準法には、1歳未満のお子さんを育てる女性からの請求があれば、1回30分、1日2回の育児時間を与える義務がありますが、これは短時間勤務制度とは全く別のものです。ですので、短時間勤務制度を利用している女性従業員から請求があれば、別途、育児時間も与える必要があります。
社長: 変形労働時間制を導入している部署の場合、どのように対応すればよいでしょうか?
何かの先生: 変形労働時間制が適用されている従業員も、適用除外に該当しない限り、短時間勤務制度の対象となります。シンプルな方法としては、その従業員様だけ変形労働時間制の対象から外し、通常の時間管理に切り替えた上で短時間勤務を適用するのが良いかと思います。状況によっては、変形労働時間制を維持したまま短時間勤務を適用することもできますが、その場合、制度として導入しても、実際に運用できないようなシステムでは法違反となる可能性がありますのでご注意ください。
社長: 勤務時間が短くなると、給与が減って、将来受け取る年金も減ってしまうのではないかと心配する従業員もいるようですが。
何かの先生: この制度では、短時間勤務で収入が減っても、「養育期間の従前標準報酬月額のみなし措置」という特例が適用されます。これにより、減給前の給与を元に厚生年金保険料を払っていたとみなされ、将来の年金受給額は減りません。ただし、この特例は介護のための短時間勤務には適用されませんので、その点はご留意ください。
育児時短就業給付
何かの先生: さらに、2025年4月からは「育児時短就業給付」という新しい給付金制度が始まります。
社長: それはどのような給付なのでしょうか?
何かの先生: 2歳未満のお子さんを養育するために短時間勤務制度を利用している従業員に対して支給されるものです。短時間勤務によって減少する賃金の一部を補填し、子育て中の従業員の生活を支援することを目的としています。
社長: なるほど、従業員が安心して短時間勤務を選べるような制度が、さらに整っていくのですね。よく理解が深まりました。ありがとうございます。
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