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介護のための短時間勤務制度

Last Updated on 2025年6月13日 by

介護のための短時間勤務制度についての説明

家族を介護する従業員に対する措置

何かの先生: 社長、いつもお世話になっております。本日は、介護のための短時間勤務制度について、詳しくご説明させていただきたく参りました。育児のための制度とは少し異なる点もありますので、そのあたりも踏まえてお話しできればと思います。

社長: いつもありがとうございます。介護のための制度も、今後ますます重要になってくるでしょうから、きちんと理解しておきたいと考えていました。

何かの先生: はい、まず、この制度の基本的な考え方についてです。要介護状態にあるご家族を介護する従業員に対して、会社は以下のいずれかの措置を講じる義務があります。育児の場合と違い、複数の選択肢の中から会社が用意し、従業員が選べる点が特徴です。

社長: どのような選択肢があるのですか?

何かの先生: 主に以下の4つが挙げられます。

1.短時間勤務の制度: 1日の所定労働時間を短縮する制度です。

2.フレックスタイム制度: 従業員が始業・終業時刻を柔軟に設定できる制度です。

3.始業または終業時刻を繰り上げ、または繰り下げる制度: 従業員が勤務開始時間や終了時間を変更できる制度ですね。

4.介護サービス利用費用の助成制度、その他これに準ずる制度: 介護サービスを利用する際の費用を会社が補助する、といった制度も含まれます。

社長: なるほど、短時間勤務だけではなく、多様な選択肢があるのですね。

介護のための短時間勤務制度とは

何かの先生: その中で、特に活用されることが多い「短時間勤務制度」についてもう少し詳しくご説明します。育児のための短時間勤務制度と異なり、介護の場合は「1日6時間」という勤務時間の制約がありません。

社長: そうなんですね。例えば、8時間勤務を7時間にするといったことも可能なのでしょうか?

何かの先生: はい、その通りです。所定労働時間が8時間の場合、1時間短縮して7時間勤務とするといった柔軟な設定が可能です。ただ、制度の趣旨を考えると、ある程度まとまった時間を確保できるような短縮、例えば6時間勤務と設定するのが望ましいとも言われています。

利用できる期間と回数

何かの先生: この介護のための短時間勤務は、介護休業とは別に利用できます。利用開始から3年の間で、合計2回以上利用できるようにする必要があります。1回あたりの期間に制限はありませんので、運用によっては3年間を限度に連続して短時間勤務を適用することも可能です。

社長: もし、複数の家族を介護する場合はどうなりますか?

何かの先生: 対象となるご家族が複数いらっしゃる場合、それぞれの介護を順次行うのであれば、対象となる家族の人数ごとに最大3年間、短時間勤務の適用を受けることが可能です。例えば、お父様の介護で3年利用し、その後お母様が要介護状態になったら、さらに3年利用できる、というイメージですね。

対象外となる従業員

何かの先生: この制度にも、労使協定を結ぶことで適用除外とできる従業員がいます。 以下の従業員は、労使協定を結ぶことで短時間勤務制度の適用を除外できます。

1.勤続期間が1年に満たない従業員
2.1週間の所定労働日数が2日以下の従業員

社長: 育児の短時間勤務では、業務の性質上難しい場合に適用除外できると聞きましたが、介護の場合はどうでしょうか?

何かの先生: その通りです。育児のための短時間勤務制度には「業務の性質上、短時間勤務を講じることが困難な業務に従事する労働者」を適用除外とできる規定がありますが、介護のための短時間勤務制度には、このような適用除外の規定はありませんのでご注意ください。

社長: 管理職の場合はどうなるのでしょうか?

何かの先生: 労働基準法上の管理監督者には、この制度は適用されません。ただし、その方が本当に法律上の管理監督者に該当するかどうかは、慎重に判断していただく必要があります。

社長: 派遣社員の方々の対応は、どのように考えればよいでしょうか?

何かの先生: 派遣従業員については、労働契約を結んでいる派遣元の会社で締結された労使協定が適用されます。もし派遣元が、派遣先の業務で短時間勤務の措置を講じるのが困難と判断し、適用除外とする場合は、あらかじめ労使協定にその旨を定める必要があります。具体的な手続きは通常の従業員の場合と同様です。

短時間勤務制度利用時の注意点

何かの先生: 最後に、制度利用にあたってのいくつかの注意点をお伝えします。

社長: はい、お願いします。

何かの先生: まず、この制度は、正社員をパートタイマーに変更するといった雇用形態の変更を伴うものではありません。正社員のまま短時間勤務を認める必要があります。もし会社が一方的に労働契約の変更を求めるようなことがあれば、不利益な取り扱いとして問題になる可能性があります。

社長: 短時間勤務になった場合でも、残業を命じることはできるのでしょうか?

何かの先生: 所定労働時間が短縮されたとしても、原則として残業を命じること自体は可能です。しかし、従業員が所定外労働(残業)の免除を請求できる期間にあり、実際にその免除を請求している場合は、残業を命じることはできません。介護のための所定外労働免除も、利用できる期間が定められています。

社長: 変形労働時間制を導入している部署の場合は、どうすればよいでしょうか?

何かの先生: 変形労働時間制が適用される従業員も、労使協定による適用除外に該当しない限り、短時間勤務制度の対象となります。一番シンプルなのは、その従業員の方だけ変形労働時間制の対象から外し、通常の時間管理に切り替えて短時間勤務を適用する方法です。事情によっては、変形労働時間制を維持したまま短時間勤務を適用することもできますが、その場合、制度として用意しても、実際に利用できないような運用になってしまうと、法違反となる可能性もありますので注意が必要です。

社長: 介護のための短時間勤務の場合、年金受給額への影響はありますか?育児の場合は減らないと聞きましたが。

何かの先生: はい、育児のための短時間勤務制度で利用できる「養育期間の従前標準報酬月額のみなし措置」は、介護のための短時間勤務には適用されません。そのため、勤務時間短縮に伴い給与が減少し、社会保険料が下がれば、将来の年金受給額にも影響が出る可能性があります。この点は、育児と介護で大きく異なりますので、従業員の方にも誤解がないように説明が必要です。

社長: なるほど、その点は重要な違いですね。今日の話で、介護のための短時間勤務制度について、かなり具体的に理解できました。今後の従業員対応に役立てたいと思います。ありがとうございました。


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