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介護休業制度のあらまし

Last Updated on 2025年6月22日 by

介護休業とは、「要介護状態」である「対象家族」がいる労働者が、介護のために取得することができる休業です。一人について、通算して93日まで、3回を上限として分割して介護休業を取得することができます。

介護休業制度に関する Q&A

Q1: 介護休業制度とは何ですか?

介護休業制度は、労働者が「要介護状態にある対象家族」を介護するために取得できる休業です。

介護休業中は、雇用保険から介護休業給付金が支給されます。

関連記事:雇用保険の介護休業給付

Q2: 介護休業の対象となる家族の範囲は?

対象家族

介護休業の対象となる家族は、以下の通りです。

•配偶者(事実婚を含む)
•父母
•子
•配偶者の父母
•祖父母
•兄弟姉妹
•孫

要介護状態

「要介護状態」とは、負傷、疾病または身体上若しくは精神上の障害により、厚生労働省令で定める期間(2週間以上)にわたり常時介護を必要とする状態を指します。

要介護状態について、具体的にどう判断すればよいか厚生労働省が基準を示しています。

Q3: 介護休業はどれくらいの期間、何回取得できますか?

介護休業は、対象家族1人につき、通算93日まで取得でき、原則として3回まで分割して取得することが可能です。

Q4: 介護休業の取得を申し出る際の手順や必要事項は何ですか?

申出方法

介護休業の申出は、原則として書面で行う必要がありますが、労働者が希望し、事業主が認める場合は、FAXや電子メール(webメール、SNS、イントラネット経由の専用ブラウザなど)でも可能です。電子メール等の場合は、労働者と事業主が送信した情報を出力して書面を作成できるものに限ります。

必要事項

申出書には、以下の事項を記載する必要があります。

◦介護休業申出の年月日
◦申出をする労働者の氏名
◦申出に係る対象家族の氏名と労働者との続柄
◦申出に係る対象家族が要介護状態にある事実
◦介護休業を開始する日(介護休業開始予定日)と終了する日(介護休業終了予定日)

申出時期

介護休業開始予定日の2週間前までに申し出る必要があります。申出が遅れた場合、事業主は申出の日の翌日から1週間を経過する日までの間で開始日を指定できます。

通知義務

事業主は、申出があった場合、速やかに以下の事項を労働者に通知しなければなりません。

◦介護休業申出を受けた旨
◦介護休業開始予定日および終了予定日
◦申出を拒む場合はその旨と理由


この通知も、書面、FAX、電子メール等(労働者が希望する場合)で行うことができます。

証明書類

事業主は、介護休業申出に係る対象家族が要介護状態にあること等を証明する書類の提出を求めることができますが、これを制度利用の条件とすることはできません。

Q5: 事業主は介護休業の申出を拒否できますか?

原則として、事業主は労働者からの介護休業申出を拒むことはできません。ただし、労使協定が締結されている場合、以下の労働者は介護休業の対象から除外されることがあります。

•週の所定労働日数が2日以下の労働者。
•申出があった日から93日経過後さらに6か月を経過する日までに労働契約が満了し、更新されないことが明らかである有期雇用労働者。

関連記事:育児・介護休業等に関する労使協定のサンプル

経営困難や事業繁忙などを理由に介護休業の申出を拒むことは認められていません。

Q6: 介護休業期間が終了する「特別な事情」や、再度取得が可能なケースはありますか?

期間終了

休業期間が終了する特別な事情: 介護休業期間中に以下の事情が生じた場合、休業は終了します。

◦申出に係る対象家族の死亡
◦離婚、婚姻の取り消し、離縁等により対象家族と労働者との親族関係が消滅したとき
◦労働者自身が負傷、疾病または身体上若しくは精神上の障害により、当該対象家族を介護できない状態になったとき(ただし、法で定める介護休業日数が93日に達するまでの間に限る)
◦労働者について、産前・産後休業期間、育児休業期間、出生時育児休業期間、または新たな介護休業期間が始まったとき

再度の取得

対象家族1人につき3回まで取得が可能です。

Q7: 事業主は、介護休業の取得を促進するためにどのような措置を講じる必要がありますか?

事業主は、介護休業申出が円滑に行われるようにするため、以下のいずれか2つ以上の措置を講じなければなりません。可能な限り複数の措置を行うことが望ましいとされています。

研修の実施

労働者に対する介護休業に関する研修を実施します。年度当初にまとめて実施したり、動画によるオンライン研修も可能ですが、受講管理を行う必要があります。

相談体制の整備

介護休業に関する相談窓口を設置し、労働者に周知します。他のハラスメントの相談窓口と一体的に設置することも推奨されます。

事例の収集・提供

労働者の介護休業取得に関する事例を収集し、労働者に提供します。

方針の周知

介護休業に関する制度および取得促進に関する事業主の方針を労働者に周知します。

また、上記以外に以下の措置も求められます。

早期の情報提供(40歳到達時等)

労働者が40歳に達する年度または40歳に達する日の翌日から1年間など、介護に直面する前の早い段階で、介護休業や介護両立支援制度等に関する情報(制度内容、申出先、給付についてなど)を提供しなければなりません。介護保険制度についても併せて周知することが望ましいです。

個別周知・意向確認

対象家族が介護を必要とする状況に至った旨の申出をした労働者に対し、介護休業や介護両立支援制度等について個別に周知し、意向を確認するための措置を講じなければなりません。この際、取得を控えさせるような形で行ってはなりません。

雇用管理上の配慮

介護休業後においては、原則として原職または原職相当職に復帰させるよう配慮することが求められます。

Q8: 介護休業に関連するハラスメントとは何ですか?また、事業主はどのように防止措置を講じる必要がありますか?

定義

職場における介護休業等に関するハラスメントとは、事業主が雇用する労働者に対して、介護休業や介護両立支援制度等の利用に関する言動により、当該労働者の就業環境が害されることです。

典型的な例

◦介護休業の取得を検討している労働者に対し、解雇や不利益な取扱いを示唆する言動。
◦制度の利用を阻害する言動(例:上司や同僚が、申出等をしないよう繰り返し言ったり、取り下げるよう言ったりすること)。ただし、労働者の事情やキャリアを考慮して早期復帰を促すことはハラスメントには該当しません。

事業主が講ずべき措置

事業主は以下の雇用管理上の措置を講じなければなりません。

方針の明確化と周知・啓発: 介護休業等に関するハラスメントの内容、その発生の原因や背景、およびハラスメントを行ってはならない旨の方針を明確化し、管理監督者を含む全労働者に周知・啓発します。

相談体制の整備: 相談窓口をあらかじめ定め、労働者に周知します。相談担当者が適切に対応できるよう体制を整え、被害者が萎縮せず広く相談できるよう配慮します。

事後の迅速かつ適切な対応: ハラスメントの事実関係を迅速かつ正確に確認し、確認できた場合には、被害者への配慮措置、行為者への措置、再発防止策を講じます。

原因・背景要因の解消: 業務体制の整備(業務分担の見直しや効率化など)を通じて、ハラスメントの原因や背景となる要因を解消する措置を講じます。周囲の労働者の業務負担にも配慮が必要です。

プライバシーの保護: 相談者や行為者に関する情報はプライバシーに属するため、適切に保護されるべきです。

不利益取扱いの禁止: 相談や協力したことを理由として、労働者に対して解雇その他の不利益な取扱いを禁止し、その旨を労働者に周知・啓発します。

Q9: 期間を定めて雇用される労働者(有期雇用労働者)も介護休業を取得できますか?

日々雇用される労働者を除き、期間を定めて雇用される労働者も介護休業の対象となります。ただし、「介護休業開始予定日から起算して93日を経過する日から6か月を経過する日までに、その労働契約が満了することが明らかでない者」に限られます。

労働契約の更新回数の上限が明示されており、上限まで労働契約が更新された場合の期間末日が当該期間以前である場合や、書面または口頭で労働契約を更新しない旨が明示されている場合は、原則として更新がないことが確実であると判断されます。

しかし、雇用の継続の見込みに関する事業主の言動、同様の地位にある他の労働者の状況、および当該労働者の過去の契約更新状況等によっては、労働契約の更新がないことが確実でないと判断され、介護休業の取得要件を満たす場合もあります。


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