カテゴリー: 育児介護

  • 育児のための所定外労働の制限

    原則として所定時間外労働をさせてはならない

    小学校就学前の子を養育する労働者(日雇従業員を除く)が請求した場合は、所定労働時間を超えて労働させてはいけません。

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    請求時期

    所定時間外労働の制限を請求する1ヶ月以上1年以内の期間(制限期間)について、その初日及び終了予定日を明らかにして、初日の1ヶ月前までに請求する必要があります。

    管理監督者の扱い

    この扱いは、労働基準法による管理監督者には適用されません。ただし、労基法上の管理監督者に該当するかどうかの検討が必要です。

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    事業の正常な運営について

    法16条の8に「ただし、事業の正常な運営を妨げる場合は、この限りでない。」という規定があります。

    ただし、この規定は限定的に解釈する必要があります。「事業の正常な運営を妨げる場合」に該当するか否かは、その従業員の所属する事業所を基準として、その従業員の担当する作業の内容、作業の繁閑、代替要員の配置の難易等諸般の事情を考慮して客観的に判断しなければなりません。請求に対応できるように相当の努力をする必要があり、単に「忙しい」ということでは理由になりません。

    労使協定による除外

    労使協定の締結を条件として次の従業員からの請求を拒むことができます。

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    制度運用の注意点

    所定労働時間の短縮適用者にも適用されます。この措置を請求しているのであれば短縮された時間を超えて残業を命じることができません。

    変形労働時間制が適用される従業員も、労使協定等による適用除外に該当しない限り、所定時間外労働の免除の対象になります。

    対象となる労働者が、所定時間外労働の免除を請求したこと等を理由として、当該労働者に対して解雇その他不利益な取扱いをしてはいけません。


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  • 介護のための所定外労働の制限

    原則として所定時間外労働をさせてはならない

    要介護状態にある家族を介護(介護については対象家族1人につき介護の必要がなくなるまで)する従業員(日雇従業員を除く)が請求した場合は、所定労働時間を超えて労働させてはいけません。

    所定外労働の制限を請求する1ヶ月以上1年以内の期間(制限期間)について、その初日及び終了予定日を明らかにして、初日の1ヶ月前までに請求する必要があります。

    実務上導入が難しい場合

    事業の正常な運営を妨げる場合は、この限りでないとも定められています。

    しかし、「事業の正常な運営を妨げる場合」というのは非常に限定的に解釈しなければなりません。単に「業務が忙しい」という理由では認められません。

    対象者

    労使協定による除外

    労使協定に定めがあれば次の従業員からの申し出を拒むことができます。
    1.入社1年未満のもの
    2.1週間の所定労働日数が2日以下のもの

    管理監督者の扱い

    この扱いは、労働基準法による管理監督者には適用されません。ただし、労基法上の管理監督者に該当するかどうかの検討が必要です。

    関連記事:管理監督者の労働時間

    制度運用の注意点

    所定労働時間の短縮適用者に対しても、この措置を請求しているのであれば短縮された時間を超えて残業を命じることができません。

    変形労働時間制が適用される従業員も、労使協定等による適用除外に該当しない限り、所定外労働の免除の対象になります。

    所定外労働の制限に該当する労働者が、所定時間外の労働をしなかったことを理由として、当該労働者に対して解雇その他不利益な取扱いをしてはいけません。


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  • 育児のための短時間勤務制度

    育児のための短時間勤務制度について

    制度の概要

    先生: 社長、本日はお忙しいところ恐縮です。今回は、育児のための短時間勤務制度について、最近の法改正も踏まえて詳しくご説明させていただきます。

    社長: いつもありがとうございます。育児短時間勤務ですね。改めてきちんと把握しておきたいと考えておりました。よろしくお願いします。

    先生: はい、かしこまりました。まず、この制度の基本的な義務についてですが、3歳に満たないお子さんを養育しており、かつ育児休業を取得していない従業員から申し出があった場合、会社は所定労働時間を短縮する措置を講じなければなりません。これは企業の義務として定められております。

    社長: 義務なのですね。どの程度の短縮すればよいのでしょうか?

    先生: 原則として、1日6時間に短縮することが基本となります。ただし、例えば5時間、6時間、7時間といった複数の選択肢を設けて、従業員が自由に選べるようにすることも可能です。あまりに短くしすぎますと、賃金面などで従業員に不利益が生じてしまうため、極端な短縮は認められていません。

    2024年改正育児介護休業法のポイント

    先生: そして、特に社長にお伝えしたいのが、2024年5月31日に成立いたしました改正育児介護休業法についてですす。まだ施行日は未定ですが、公布後1年6か月以内の政令で定められることになります。

    社長: どういう変更があるのですか?

    先生: はい、これまでは、3歳以上小学校入学前のお子さんを持つ従業員への対応は「努力義務」とされておりました。しかし、改正後は、3歳以上小学校就学前のお子さんを養育する従業員に対しても、会社が具体的な措置を講じる義務が発生します。

    社長: 具体的な措置というのは、どのような内容でしょうか?

    先生: 会社は、職場の状況に合わせて、以下の柔軟な働き方から2つ以上を選択し、従業員に提供することが義務付けられます。そして、従業員はその中からご自身に合った働き方を選んで利用できるようになるのです。

    1.始業・終業時刻の変更
    2.テレワーク
    3.短時間勤務
    4.新たな休暇の付与
    5.その他、働きながら子を養育しやすくするための措置

    先生: また、会社は、この提供する措置について個別に従業員へ周知し、利用の意向を確認することも義務付けられることになります。

    社長: なるほど、今後は対象となる年齢層が広がり、会社として複数の選択肢を用意する必要が出てくるのですね。これは事前にしっかりと準備を進めておく必要がありそうです。

    短時間勤務制度の対象外となる従業員

    先生: この制度には、適用対象外となる従業員もいらっしゃいます。例えば、日雇いの従業員や、元々1日の所定労働時間が6時間以下の従業員は、原則として適用除外となります。

    社長: 他にはありますか?

    先生: 労使協定を結ぶことで、以下の従業員も適用を除外することが可能です。

    1.勤続期間が1年に満たない従業員
    2.1週間の所定労働日数が2日以下の従業員
    3.業務の性質上、短時間勤務が困難な場合

    先生: ただし、最後の「業務の性質上困難な場合」を適用する際は、代わりに始業・終業時間の変更やフレックスタイム制度など、短時間勤務制度に代わる措置を必ず講じる必要がありますので、その点はご留意ください。

    社長: 管理職の場合はどうなるのでしょうか?

    先生: 労働基準法上の管理監督者には、この制度は適用されません。しかし、その従業員が真に管理監督者に該当するかどうかは、慎重に判断していただく必要があります。

    社長: 派遣社員の方々の対応は、どのように考えればよいでしょうか?

    先生: 派遣従業員については、労働契約を結んでいる派遣元で締結された労使協定が適用されます。もし派遣元が、派遣先の業務で短時間勤務が難しいと判断し、適用除外とする場合は、あらかじめ労使協定にその旨を定める必要があります。具体的な手続きは通常の従業員と同様です。

    育児のための短時間勤務のポイント

    先生: ここでいくつか、短時間勤務制度における重要なポイントについてお話しいたします。

    社長: はい、お願いします。

    先生: まず、この制度は、正社員をパートタイマーにするといった雇用形態の変更を伴うものではありません。正社員のまま短時間勤務を認める必要があります。もし会社が一方的に労働契約の変更を求めるようなことがあれば、不利益な取り扱いとして問題になる可能性があります。

    社長: なるほど、正社員のまま勤務時間が短くなるということですね。残業を命じることはできるのでしょうか?

    先生: 原則として、短時間勤務制度を利用している従業員にも残業を命じることは可能です。しかし、従業員が所定外労働の免除を請求できる期間にあり、実際に免除を請求している場合は、残業を命じることはできません。

    社長: 育児時間という制度もあったかと思いますが、それとはまた異なるのですね?

    先生: はい、その通りです。労働基準法には、1歳未満のお子さんを育てる女性からの請求があれば、1回30分、1日2回の育児時間を与える義務がありますが、これは短時間勤務制度とは全く別のものです。ですので、短時間勤務制度を利用している女性従業員から請求があれば、別途、育児時間も与える必要があります。

    社長: 変形労働時間制を導入している部署の場合、どのように対応すればよいでしょうか?

    先生: 変形労働時間制が適用されている従業員も、適用除外に該当しない限り、短時間勤務制度の対象となります。シンプルな方法としては、その従業員様だけ変形労働時間制の対象から外し、通常の時間管理に切り替えた上で短時間勤務を適用するのが良いかと思います。状況によっては、変形労働時間制を維持したまま短時間勤務を適用することもできますが、その場合、制度として導入しても、実際に運用できないようなシステムでは法違反となる可能性がありますのでご注意ください。

    社長: 勤務時間が短くなると、給与が減って、将来受け取る年金も減ってしまうのではないかと心配する従業員もいるようですが。

    先生: この制度では、短時間勤務で収入が減っても、「養育期間の従前標準報酬月額のみなし措置」という特例が適用されます。これにより、減給前の給与を元に厚生年金保険料を払っていたとみなされ、将来の年金受給額は減りません。ただし、この特例は介護のための短時間勤務には適用されませんので、その点はご留意ください。

    育児時短就業給付

    先生: さらに、2025年4月からは「育児時短就業給付」という新しい給付金制度が始まっています。

    社長: それはどのような給付なのでしょうか?

    先生: 2歳未満のお子さんを養育するために短時間勤務制度を利用している従業員に対して支給されるものです。短時間勤務によって減少する賃金の一部を補填し、子育て中の従業員の生活を支援することを目的としています。

    社長: なるほど、従業員が安心して短時間勤務を選べるような制度が、さらに整っていくのですね。よく理解が深まりました。ありがとうございます。

    関連記事:「育児時短就業給付」で子育て社員の働き方をサポート!


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  • 介護のための短時間勤務制度

    介護のための短時間勤務制度についての説明

    家族を介護する従業員に対する措置

    先生: 社長、いつもお世話になっております。本日は、介護のための短時間勤務制度について、詳しくご説明させていただきたく参りました。育児のための制度とは少し異なる点もありますので、そのあたりも踏まえてお話しできればと思います。

    社長: いつもありがとうございます。介護のための制度も、今後ますます重要になってくるでしょうから、きちんと理解しておきたいと考えていました。

    先生: はい、まず、この制度の基本的な考え方についてです。要介護状態にあるご家族を介護する従業員に対して、会社は以下のいずれかの措置を講じる義務があります。育児の場合と違い、複数の選択肢の中から会社が用意し、従業員が選べる点が特徴です。

    社長: どのような選択肢があるのですか?

    先生: 主に以下の4つが挙げられます。

    1.短時間勤務の制度: 1日の所定労働時間を短縮する制度です。

    2.フレックスタイム制度: 従業員が始業・終業時刻を柔軟に設定できる制度です。

    3.始業または終業時刻を繰り上げ、または繰り下げる制度: 従業員が勤務開始時間や終了時間を変更できる制度ですね。

    4.介護サービス利用費用の助成制度、その他これに準ずる制度: 介護サービスを利用する際の費用を会社が補助する、といった制度も含まれます。

    社長: なるほど、短時間勤務だけではなく、多様な選択肢があるのですね。

    介護のための短時間勤務制度とは

    先生: その中で、特に活用されることが多い「短時間勤務制度」についてもう少し詳しくご説明します。育児のための短時間勤務制度と異なり、介護の場合は「1日6時間」という勤務時間の制約がありません。

    社長: そうなんですね。例えば、8時間勤務を7時間にするといったことも可能なのでしょうか?

    先生: はい、その通りです。所定労働時間が8時間の場合、1時間短縮して7時間勤務とするといった柔軟な設定が可能です。ただ、制度の趣旨を考えると、ある程度まとまった時間を確保できるような短縮、例えば6時間勤務と設定するのが望ましいとも言われています。

    利用できる期間と回数

    先生: この介護のための短時間勤務は、介護休業とは別に利用できます。利用開始から3年の間で、合計2回以上利用できるようにする必要があります。1回あたりの期間に制限はありませんので、運用によっては3年間を限度に連続して短時間勤務を適用することも可能です。

    社長: もし、複数の家族を介護する場合はどうなりますか?

    先生: 対象となるご家族が複数いらっしゃる場合、それぞれの介護を順次行うのであれば、対象となる家族の人数ごとに最大3年間、短時間勤務の適用を受けることが可能です。例えば、お父様の介護で3年利用し、その後お母様が要介護状態になったら、さらに3年利用できる、というイメージですね。

    対象外となる従業員

    先生: この制度にも、労使協定を結ぶことで適用除外とできる従業員がいます。 以下の従業員は、労使協定を結ぶことで短時間勤務制度の適用を除外できます。

    1.勤続期間が1年に満たない従業員
    2.1週間の所定労働日数が2日以下の従業員

    社長: 育児の短時間勤務では、業務の性質上難しい場合に適用除外できると聞きましたが、介護の場合はどうでしょうか?

    先生: その通りです。育児のための短時間勤務制度には「業務の性質上、短時間勤務を講じることが困難な業務に従事する労働者」を適用除外とできる規定がありますが、介護のための短時間勤務制度には、このような適用除外の規定はありませんのでご注意ください。

    社長: 管理職の場合はどうなるのでしょうか?

    先生: 労働基準法上の管理監督者には、この制度は適用されません。ただし、その方が本当に法律上の管理監督者に該当するかどうかは、慎重に判断していただく必要があります。

    関連記事:管理監督者も介護休業は取れる!でも短時間勤務は?知っておくべきポイント

    社長: 派遣社員の方々の対応は、どのように考えればよいでしょうか?

    先生: 派遣従業員については、労働契約を結んでいる派遣元の会社で締結された労使協定が適用されます。もし派遣元が、派遣先の業務で短時間勤務の措置を講じるのが困難と判断し、適用除外とする場合は、あらかじめ労使協定にその旨を定める必要があります。具体的な手続きは通常の従業員の場合と同様です。

    短時間勤務制度利用時の注意点

    先生: 最後に、制度利用にあたってのいくつかの注意点をお伝えします。

    社長: はい、お願いします。

    先生: まず、この制度は、正社員をパートタイマーに変更するといった雇用形態の変更を伴うものではありません。正社員のまま短時間勤務を認める必要があります。もし会社が一方的に労働契約の変更を求めるようなことがあれば、不利益な取り扱いとして問題になる可能性があります。

    社長: 短時間勤務になった場合でも、残業を命じることはできるのでしょうか?

    先生: 所定労働時間が短縮されたとしても、原則として残業を命じること自体は可能です。しかし、従業員が所定外労働(残業)の免除を請求できる期間にあり、実際にその免除を請求している場合は、残業を命じることはできません。介護のための所定外労働免除も、利用できる期間が定められています。

    社長: 変形労働時間制を導入している部署の場合は、どうすればよいでしょうか?

    先生: 変形労働時間制が適用される従業員も、労使協定による適用除外に該当しない限り、短時間勤務制度の対象となります。一番シンプルなのは、その従業員の方だけ変形労働時間制の対象から外し、通常の時間管理に切り替えて短時間勤務を適用する方法です。事情によっては、変形労働時間制を維持したまま短時間勤務を適用することもできますが、その場合、制度として用意しても、実際に利用できないような運用になってしまうと、法違反となる可能性もありますので注意が必要です。

    社長: 介護のための短時間勤務の場合、年金受給額への影響はありますか?育児の場合は減らないと聞きましたが。

    先生: はい、育児のための短時間勤務制度で利用できる「養育期間の従前標準報酬月額のみなし措置」は、介護のための短時間勤務には適用されません。そのため、勤務時間短縮に伴い給与が減少し、社会保険料が下がれば、将来の年金受給額にも影響が出る可能性があります。この点は、育児と介護で大きく異なりますので、従業員の方にも誤解がないように説明が必要です。

    社長: なるほど、その点は重要な違いですね。今日の話で、介護のための短時間勤務制度について、かなり具体的に理解できました。今後の従業員対応に役立てたいと思います。ありがとうございました。


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  • 介護休業制度のあらまし

    介護休業とは、「要介護状態」である「対象家族」がいる労働者が、介護のために取得することができる休業です。一人について、通算して93日まで、3回を上限として分割して介護休業を取得することができます。

    介護休業制度に関する Q&A

    Q1: 介護休業制度とは何ですか?

    介護休業制度は、労働者が「要介護状態にある対象家族」を介護するために取得できる休業です。

    介護休業中は、雇用保険から介護休業給付金が支給されます。

    関連記事:人事担当者が知っておくべき「介護休業給付金」のすべて

    Q2: 介護休業の対象となる家族の範囲は?

    対象家族

    介護休業の対象となる家族は、以下の通りです。

    □配偶者(事実婚を含む)
    □父母
    □子
    □配偶者の父母
    □祖父母
    □兄弟姉妹
    □孫

    要介護状態

    「要介護状態」とは、負傷、疾病または身体上若しくは精神上の障害により、厚生労働省令で定める期間(2週間以上)にわたり常時介護を必要とする状態を指します。

    要介護状態について、具体的にどう判断すればよいか厚生労働省が基準を示しています。

    Q3: 介護休業はどれくらいの期間、何回取得できますか?

    介護休業は、対象家族1人につき、通算93日まで取得でき、原則として3回まで分割して取得することが可能です。

    Q4: 介護休業の取得を申し出る際の手順や必要事項は何ですか?

    申出方法

    介護休業の申出は、原則として書面で行う必要がありますが、労働者が希望し、事業主が認める場合は、FAXや電子メール(webメール、SNS、イントラネット経由の専用ブラウザなど)でも可能です。電子メール等の場合は、労働者と事業主が送信した情報を出力して書面を作成できるものに限ります。

    必要事項

    申出書には、以下の事項を記載する必要があります。

    □介護休業申出の年月日
    □申出をする労働者の氏名
    □申出に係る対象家族の氏名と労働者との続柄
    □申出に係る対象家族が要介護状態にある事実
    □介護休業を開始する日(介護休業開始予定日)と終了する日(介護休業終了予定日)

    申出時期

    介護休業開始予定日の2週間前までに申し出る必要があります。申出が遅れた場合、事業主は申出の日の翌日から1週間を経過する日までの間で開始日を指定できます。

    通知義務

    事業主は、申出があった場合、速やかに以下の事項を労働者に通知しなければなりません。

    □介護休業申出を受けた旨
    □介護休業開始予定日および終了予定日
    □申出を拒む場合はその旨と理由

    この通知も、書面、FAX、電子メール等(労働者が希望する場合)で行うことができます。

    証明書類

    事業主は、介護休業申出に係る対象家族が要介護状態にあること等を証明する書類の提出を求めることができますが、これを制度利用の条件とすることはできません。

    Q5: 事業主は介護休業の申出を拒否できますか?

    原則として、事業主は労働者からの介護休業申出を拒むことはできません。ただし、労使協定が締結されている場合、以下の労働者は介護休業の対象から除外されることがあります。

    □週の所定労働日数が2日以下の労働者。
    □申出があった日から93日経過後さらに6か月を経過する日までに労働契約が満了し、更新されないことが明らかである有期雇用労働者。

    関連記事:育児・介護休業等に関する労使協定のサンプル

    経営困難や事業繁忙などを理由に介護休業の申出を拒むことは認められていません。

    Q6: 介護休業期間が終了する「特別な事情」や、再度取得が可能なケースはありますか?

    期間終了

    休業期間が終了する特別な事情: 介護休業期間中に以下の事情が生じた場合、休業は終了します。

    □申出に係る対象家族の死亡
    □離婚、婚姻の取り消し、離縁等により対象家族と労働者との親族関係が消滅したとき
    □労働者自身が負傷、疾病または身体上若しくは精神上の障害により、当該対象家族を介護できない状態になったとき(ただし、法で定める介護休業日数が93日に達するまでの間に限る)
    □労働者について、産前・産後休業期間、育児休業期間、出生時育児休業期間、または新たな介護休業期間が始まったとき

    再度の取得

    対象家族1人につき3回まで取得が可能です。

    Q7: 事業主は、介護休業の取得を促進するためにどのような措置を講じる必要がありますか?

    事業主は、介護休業申出が円滑に行われるようにするため、以下のいずれか2つ以上の措置を講じなければなりません。可能な限り複数の措置を行うことが望ましいとされています。

    研修の実施

    労働者に対する介護休業に関する研修を実施します。年度当初にまとめて実施したり、動画によるオンライン研修も可能ですが、受講管理を行う必要があります。

    相談体制の整備

    介護休業に関する相談窓口を設置し、労働者に周知します。他のハラスメントの相談窓口と一体的に設置することも推奨されます。

    事例の収集・提供

    労働者の介護休業取得に関する事例を収集し、労働者に提供します。

    方針の周知

    介護休業に関する制度および取得促進に関する事業主の方針を労働者に周知します。

    また、上記以外に以下の措置も求められます。

    早期の情報提供(40歳到達時等)

    労働者が40歳に達する年度または40歳に達する日の翌日から1年間など、介護に直面する前の早い段階で、介護休業や介護両立支援制度等に関する情報(制度内容、申出先、給付についてなど)を提供しなければなりません。介護保険制度についても併せて周知することが望ましいです。

    個別周知・意向確認

    対象家族が介護を必要とする状況に至った旨の申出をした労働者に対し、介護休業や介護両立支援制度等について個別に周知し、意向を確認するための措置を講じなければなりません。この際、取得を控えさせるような形で行ってはなりません。

    雇用管理上の配慮

    介護休業後においては、原則として原職または原職相当職に復帰させるよう配慮することが求められます。

    Q8: 介護休業に関連するハラスメントとは何ですか?また、事業主はどのように防止措置を講じる必要がありますか?

    定義

    職場における介護休業等に関するハラスメントとは、事業主が雇用する労働者に対して、介護休業や介護両立支援制度等の利用に関する言動により、当該労働者の就業環境が害されることです。

    典型的な例

    □介護休業の取得を検討している労働者に対し、解雇や不利益な取扱いを示唆する言動。
    □制度の利用を阻害する言動(例:上司や同僚が、申出等をしないよう繰り返し言ったり、取り下げるよう言ったりすること)。

    だし、労働者の事情やキャリアを考慮して早期復帰を促すことはハラスメントには該当しません。

    事業主が講ずべき措置

    事業主は以下の雇用管理上の措置を講じなければなりません。

    方針の明確化と周知・啓発: 介護休業等に関するハラスメントの内容、その発生の原因や背景、およびハラスメントを行ってはならない旨の方針を明確化し、管理監督者を含む全労働者に周知・啓発します。

    相談体制の整備: 相談窓口をあらかじめ定め、労働者に周知します。相談担当者が適切に対応できるよう体制を整え、被害者が萎縮せず広く相談できるよう配慮します。

    事後の迅速かつ適切な対応: ハラスメントの事実関係を迅速かつ正確に確認し、確認できた場合には、被害者への配慮措置、行為者への措置、再発防止策を講じます。

    原因・背景要因の解消: 業務体制の整備(業務分担の見直しや効率化など)を通じて、ハラスメントの原因や背景となる要因を解消する措置を講じます。周囲の労働者の業務負担にも配慮が必要です。

    プライバシーの保護: 相談者や行為者に関する情報はプライバシーに属するため、適切に保護されるべきです。

    不利益取扱いの禁止: 相談や協力したことを理由として、労働者に対して解雇その他の不利益な取扱いを禁止し、その旨を労働者に周知・啓発します。

    Q9: 期間を定めて雇用される労働者(有期雇用労働者)も介護休業を取得できますか?

    日々雇用される労働者を除き、期間を定めて雇用される労働者も介護休業の対象となります。ただし、「介護休業開始予定日から起算して93日を経過する日から6か月を経過する日までに、その労働契約が満了することが明らかでない者」に限られます。

    労働契約の更新回数の上限が明示されており、上限まで労働契約が更新された場合の期間末日が当該期間以前である場合や、書面または口頭で労働契約を更新しない旨が明示されている場合は、原則として更新がないことが確実であると判断されます。

    しかし、雇用の継続の見込みに関する事業主の言動、同様の地位にある他の労働者の状況、および当該労働者の過去の契約更新状況等によっては、労働契約の更新がないことが確実でないと判断され、介護休業の取得要件を満たす場合もあります。


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  • 育児休業制度のあらまし

    育児休業とは、子どもを養育する労働者が、原則として子どもが1歳になるまでの期間、従業員が仕事を離れて育児に専念するために法律に基づいて休業できる制度です。 場合によっては、最長2歳まで延長することも可能です。

    育児休業制度に関するQ&A

    Q1: 育児休業制度の目的は何ですか?

    育児休業制度は、子の養育や家族の介護を行う労働者の雇用の継続を促進することを目的としています。

    男女ともに仕事と育児・介護を両立できる社会を目指し、育児期を通じて多様な働き方を組み合わせることで、男女が育児・家事を分担し、希望に応じたキャリア形成を両立できるようにすることも重視されています。

    Q2: 育児休業の対象となる労働者は誰ですか?

    日々雇用される労働者を除き、1歳に満たない子を養育する労働者が対象です。

    これには、家庭裁判所に特別養子縁組の請求を行い、現に監護している者や、児童福祉法に基づき養子縁組里親として委託されている児童を養育する労働者、およびこれらに準ずる者も含まれます。

    有期雇用労働者も対象となりますが、育児休業申出の時点で、労働契約が子の1歳6か月の誕生日(または、出生時育児休業の場合は子の出生の日から8週間を経過する日の翌日から6か月、介護休業の場合は介護休業開始予定日から93日を経過する日から6か月)までに満了し、更新されないことが明らかでない者に限られます。

    Q3: 育児休業はどのくらいの期間、何回取得できますか?

    原則: 子1人につき、原則として2回まで取得可能です。

    再取得が可能な特別の事情

    以下のような事情が生じた場合には、再度取得が可能です

    □子の死亡、他人の養子になる、または同居しなくなった場合
    □配偶者が死亡した場合、または負傷、疾病、障害により子の養育が困難になった場合
    □離婚などにより配偶者が子と同居しなくなった場合
    □子が負傷、疾病、障害により2週間以上の世話が必要になった場合
    □保育所等への入所を希望しているが、当面入所できない場合

    1歳以降の育児休業

    原則として、子1人につき2回まで取得可能です。2022年10月施行の改正により、育児休業(出生時育児休業を除く)は、原則2回まで分割して取得できるようになりました。また、1歳以降の育児休業も、特定の要件を満たす場合、1歳、1歳半といった節目だけでなく、途中で開始できるよう柔軟化されています。

    出生時育児休業(産後パパ育休)

    子の出生後8週間以内に、最大4週間(28日)まで取得できます。この期間中に2回まで分割して取得できます。ただし、この8週間以内に既に2回の出生時育児休業を取得している場合や、通算で28日を超えて取得している場合は、それ以上取得できません。

    パパ・ママ育休プラス

    配偶者も育児休業を取得している場合、子が1歳2か月に達するまでの期間に育児休業を取得できる特例があります。

    Q4: 育児休業の申出方法と期限について教えてください

    申出方法

    育児休業の申出は、書面によるほか、労働者が希望する場合には、FAX、電子メール(ウェブメール、SNS、イントラネット経由の専用ブラウザなど)でも可能です。

    ただし、電子メール等の場合は、記録を出力して書面を作成できるものに限られます。事業主が申出方法を指定する場合、その方法が労働者にとって過重な負担とならないよう配慮が必要です。

    申出事項

    申出には、申出年月日、労働者の氏名、子の氏名・生年月日・続柄(未出生の場合は出産予定者の氏名・出産予定日)、育児休業開始予定日・終了予定日などの事項が必要です。特別養子縁組の場合はその事実も必要です。

    申出期限

    原則として、育児休業開始予定日の1か月前までに行う必要があります。出生時育児休業の場合は原則2週間前までです。

    申出が遅れた場合、事業主は申出日の翌日から1週間経過する日までの間で開始日を指定できます。

    Q5: 事業主は育児休業の申出を拒否できますか?

    原則として、事業主は育児休業の申出を拒否することはできません。

    請求資格を持つ従業員の請求があれば、たとえ小人数(一人でも)しか雇用していない事業主であっても休業取得を拒むことはできません。

    また、まだ就業規則、育児休業規程などを作っていない事業所であっても、法律に定められている権利なので請求があれば認めなければなりません。

    労使協定で、週の所定労働日数が2日以下の労働者など、育児休業を取得できない者として定められた労働者からの申出は拒否できる場合があります。

    育児休業等の対象者と適用除外者

    Q6:育児休業の開始日や終了日を、繰り上げたり繰り下げたりできますか?

    開始予定日は、出産予定日前の出産等の場合に限り1回に限り繰上げ変更できます。一方、休業終了予定日は、当初の休業終了予定日の1ヶ月前に申し出れば、理由を問わず、1回に限り繰下げ変更ができます。ただし、休業予定終了日は、子が満1歳に達する日の前日までに限られます。

    Q7:育児休業申請の撤回はできますか?

    業撤回の申出は、休業開始予定日の前日までは理由を問わずできますが、一度撤回すると、同じ子については、原則として再度の休業申出することができません。

    Q8:育児休業期間はどういうときに終了しますか?

    育児休業は次の場合には終了します。

    □終了予定日とされた日の前日までに、子の死亡その他の子を養育しないこととなった事由が生じたこと。この場合、労働者は、当該事由が生じた旨を遅滞なく通知しなければならない。
    □終了予定日とされた日の前日までに、子が1歳(または1歳6ヶ月)に達したこと。
    □終了予定日とされた日までに、請求をした労働者が、産前産後休業、育児休業又は介護休業が始まったこと。

    Q9:育児休業の延長はできますか?

    子が1歳に達する時点で、条件を満たせば、子が1歳に達する日の翌日から子が1歳6か月に達する日までの期間について、育児休業を延長することができます。

    子が1歳6か月に達する時点で、条件を満たせば、子が1歳6か月に達する日の翌日から子が2歳に達する日までの期間について、育児休業を延長することができます。

    育児休業を延長できる要件と手続き

    Q10: 事業主が従業員へ通知すべき事項は何ですか?

    申出に対する通知

    育児休業申出があった場合、事業主は以下の事項を労働者に速やかに通知しなければなりません。

    □育児休業申出を受けた旨。
    □育児休業開始予定日と終了予定日(事業主が開始日を指定した場合はその指定日)。
    □育児休業申出を拒否する場合には、その旨と理由。

    個別周知・意向確認

    個別周知・意向確認:労働者から本人または配偶者の妊娠・出産等の申出があった場合、または子の3歳までの適切な時期(特に2025年10月1日施行により、子が1歳11か月に達する日の翌々日から2歳11か月に達する日の翌日までの期間に改めて)に、以下の事項を個別に周知し、就業に関する意向を確認する義務があります。

    □育児休業に関する制度
    □育児休業申出等の申出先
    □育児休業給付および出生後休業支援給付に関すること
    □育児休業期間中の社会保険料の取扱い
    □勤務時間帯、勤務地、両立支援制度等の利用期間、業務量、労働条件の見直し等の意向

    通知・確認方法

    面談、書面交付、FAX、電子メール等(記録を出力できるものに限る)のいずれかの方法で行う必要があります。これらの措置は、取得を控えさせるような形で行ってはいけません。

    Q11: 事業主はどのような雇用環境整備を行う必要がありますか?

    事業主は、育児休業申出等が円滑に行われるようにするため、以下のいずれか2つ以上の措置を講じなければなりません。

    □従業員への育児休業に関する研修の実施。
    □育児休業に関する相談体制の整備(相談窓口の設置)。
    □育児休業取得に関する事例の収集と従業員への提供。
    □育児休業に関する制度や取得促進の方針の周知。
    □育児休業申出をした労働者の育児休業取得が円滑に行われるための業務の配分または人員配置に関する必要な措置。

    これらの措置は全ての事業主に義務付けられています。研修は、単なる資料配布や動画掲載だけでなく、知識を高めるための講習として実施する必要があります。

    Q12 育児休業等に関するハラスメント対策について教えてください

    事業主は、職場における育児休業等に関するハラスメント(育児休業、介護休業等の利用に関する言動により就業環境が害されること)を防止するため、以下の措置を講じる義務があります。

    方針の明確化と周知・啓発

    ハラスメントの内容、その背景となり得る否定的な言動、ハラスメントを行ってはならない旨の方針、および制度等の利用が可能である旨を明確化し、管理監督者を含む全労働者に周知・啓発すること。

    相談体制の整備

    相談窓口をあらかじめ定め、労働者に周知すること。相談窓口の担当者が適切に対応できるよう、相談者の心身の状況や認識に配慮し、広く相談に応じること。他のハラスメント(セクシュアルハラスメント、パワーハラスメント、妊娠・出産等に関するハラスメント)の相談窓口と一体的に整備することが望ましいです。

    事後の迅速かつ適切な対応

    事実関係を迅速かつ正確に確認し、事実が確認できた場合には、被害者への配慮、行為者への措置、再発防止策を講じること。

    原因・背景となる要因の解消

    業務体制の整備(業務分担の見直し、業務効率化など)により、周囲の労働者の業務負担にも配慮すること。労働者の側も、制度利用の知識を持ち、周囲と円滑なコミュニケーションを図りながら適切に業務を遂行する意識を持つことが重要です。

    不利益取扱いの禁止

    相談したことや事実確認に協力したことを理由として、労働者に対し解雇その他不利益な取扱いをしない旨を定め、周知・啓発すること。

    行為者の責務

    事業主自身(法人の役員を含む)および労働者も、ハラスメント問題に対する関心と理解を深め、他の労働者への言動に必要な注意を払う努力が求められます.

    Q13: 育児休業した場合の給付等にはどういうものがありますか?

    育児休暇中には、雇用保険から育児休業給付金が支給されます。また、社会保険料の免除等の措置を受けることができます。

    育児休業給付金

    子どもが生まれるときの社会保険手続き


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