カテゴリー: 労働時間

  • 法定休日は労働基準法に定められた「絶対休ませる日」

    法定休日って何?

    会社で働く皆さんにとって、「休日」は心身をリフレッシュし、プライベートな時間を過ごすために不可欠なものです。この休日について、労働基準法という法律が、会社に「これだけは必ず休ませなさい」と義務付けている最低限の休日があります。それが「法定休日(ほうていきゅうじつ)」です。

    法定休日の具体的なルール

    労働基準法第35条で、以下のように定められています。

    原則:1週間に1日以上

    つまり、会社は、原則として1週間に少なくとも1日は労働者に休日を与えなければなりません。

    例外(変形休日制):4週間に4日以上

    特別な場合として、「4週間を通じて4日以上」の休日を与えることで、週に1日の休日を与えられない週があっても良い、という例外も認められています。

    この場合でも、連続して25日以上働かせることはできません。

    ただし、これは特定の運用の場合に限られるため、原則は「週に1日」と覚えておくと良いでしょう。

    なぜ法定休日があるの?

    法定休日は、労働者の健康と生活、そして労働生産性を守るために極めて重要な役割を果たしています。

    心身のリフレッシュ:連続して働き続けると、疲労が蓄積し、生産性の低下や健康問題につながります。定期的な休日によって、心身を回復させることが必要です。

    労働災害の防止:疲労は注意力の低下を招き、労働災害のリスクを高めます。休日を確保することで、事故のリスクを低減します。

    生活の保障:労働者が仕事以外の時間も確保し、家族との交流や地域活動、自己啓発などに充てられるようにすることで、人間らしい生活を送れるようにします。

    なお、法定休日は暦日でとらせなければなりません。暦日というのは午前0時から午後12時までの24時間です。1日のうちの一部だけを休日にすることはできません。

    法定休日は特定されているの?

    ここが少しポイントです。 労働基準法は、「週に1日以上」の休日を義務付けていますが、その「週1日」が具体的に「何曜日」でなければならない、とは定めていません。

    例えば、多くの会社で「日曜日」が法定休日とされていることが多いですが、これは法律で決まっているわけではなく、その会社の就業規則などで「日曜日を法定休日とする」と定めているからです。

    もし、就業規則などで特に法定休日が定められていない場合は、原則としてその週の最後にとった休日が法定休日と解釈されることが多いです。

    法定休日に労働させたらどうなる?

    会社が、労働基準法で定められた「法定休日」に労働者と働かせた場合、それは「休日労働」となります。

    そして、この「休日労働」をさせるには、以下の2つの条件をクリアしなければなりません。

    36協定(サブロク協定)の締結と届け出

    時間外労働と同様に、労働者と使用者(会社)の間で、「休日労働をさせることがありますよ」という内容の協定を結び、これを労働基準監督署に届け出る必要があります。

    36協定がなければ、原則として法定休日に働かせることはできません。

    割増賃金の支払い

    法定休日に労働させた時間については、通常の賃金に35%以上の割増し(1.35倍以上)をして支払う義務があります。これは、時間外労働の割増率(25%以上)よりも高く設定されています。

    法定休日と所定休日の違い

    「所定休日」と混同しやすいので整理しておきましょう。

    法定休日は、法律で決められた「最低限必ず与えなければならない休日」(原則1週間に1日以上)です。

    所定休日は、会社が就業規則などで独自に定めた「この日もお休みにしますよ」という休日(土日祝日、年末年始など、法定休日を超える部分)です。

    会社が定める「所定休日」の中には、必ず「法定休日」が含まれている必要があります。 (例:週休2日制の場合、どちらか1日が法定休日であり、もう1日は所定休日(法定外休日)となります。)

    まとめ

    「法定休日」は、労働者の健康と生活を守るための、法律で定められた最も基本的な休日のルールです。原則として1週間に1日以上与える必要があり、これに労働させた場合は36協定の締結と、通常の賃金の1.35倍以上の割増賃金の支払いが必要となります。

    この法定休日を正しく理解し、会社がこれを遵守することは、健全な労使関係を築き、労働災害を防止する上で極めて重要です。


    関連記事:所定休日は会社が任意に定める休日

    会社事務入門休日についてのあれこれを解説>このページ

  • 所定労働時間とは何か?法定労働時間との違いを中心に詳細解説

    所定労働時間(しょていろうどうじかん)」を簡単に言うと、会社が従業員に対して、この時間働いてくださいねと定めている時間のことです。では、この所定労働時間について詳しく見ていきましょう。

    「法定労働時間」は国が決めている

    「所定労働時間」を理解する上で、まず知っておくべきは「法定労働時間(ほうていろうどうじかん)」です。

    法定労働時間とは、労働基準法という法律で決められている「労働時間の絶対的な上限」のことです。

    法定労働時間は、原則として、1日8時間、1週40時間です。

    どの会社も、原則としてこの時間を超えて労働者を働かせてはいけません。これが、労働基準法の最も基本的なルールです。

    関連記事:法定労働時間って何?〜法律で決められた「これ以上働かせちゃダメ!」な時間です

    「所定労働時間」は会社が決める

    さて、いよいよ「所定労働時間」です。 会社は、この「法定労働時間」の範囲内で、自由に「うちの会社では、何時間働くか」を決めることができます。

    例えば、

    「1日8時間、週40時間」 と定める会社(法定労働時間と同じ)

    「1日7時間30分、週37時間30分」 と定める会社(法定労働時間より短い)

    「1日7時間、週35時間」 と定める会社(法定労働時間より短い)

    など、様々なパターンがあります。

    このような、会社が独自に定めた働く時間が「所定労働時間」なのです。

    所定労働時間は、必ず就業規則(会社の働くルールを定めたもの)や労働契約(会社と個人の契約書)に記載されています。

    所定労働時間と残業の関係

    この「所定労働時間」を超えて働いた場合が、「残業」になるわけですが、実は残業には2種類ある、ということを知っておくと、より理解が深まります。

    法定内残業(所定外労働)

    会社の「所定労働時間」は超えたけれど、まだ「法定労働時間」の範囲内におさまっている労働時間のことです。

    例:

    所定労働時間が1日7時間の会社で、その日に8時間働いた場合。

    この1時間分は「法定内残業」です。

    法定労働時間(8時間)以内なので、割増賃金(残業手当)を支払う義務は、法律上は原則ありません。ただし、会社によっては就業規則などで「所定労働時間を超えた分は割増で支払う」と定めている場合もあります。

    割増部分以外は払わなければならない

    割増賃金を支払う義務はありません、という部分を誤解してはいけません。

    法定内残業(所定外労働)については、割増賃金を支払う義務はありませんが、通常の労働時間に対する賃金(追加賃金)は支払う必要があります。

    具体的にどういうことか?
    もう一度、具体例で見てみましょう。

    前提:

    あなたの会社の所定労働時間:1日7時間

    法定労働時間:1日8時間

    あなたの1時間あたりの通常賃金:1,000円

    ある日の労働時間: 8時間

    この場合、

    最初の7時間:これは所定労働時間内の労働なので、通常の賃金が支払われます。

    7時間 × 1,000円/時間 = 7,000円

    追加の1時間:これが「法定内残業(所定外労働)」にあたります。

    所定労働時間の7時間を超えていますが、法定労働時間の8時間以内です。

    この1時間に対しては、割増しをする必要はありません。しかし、働いた分の賃金は当然支払われるべきです。

    1時間 × 1,000円/時間 = 1,000円

    合計の賃金: 7,000円 + 1,000円 = 8,000円

    つまり、この日の労働に対しては、合計で8,000円が支払われます。この1,000円は通常の賃率で計算された「追加賃金」であり、「割増賃金」ではありません。

    まとめると、法定内残業(所定外労働)については、割増率を上乗せした賃金(例:1.25倍)を支払う義務はない。しかし、通常の賃率で計算した追加の賃金は必ず支払う必要がある。ということになります。

    法定外残業(時間外労働)

    会社の「所定労働時間」を超え、さらに「法定労働時間」(1日8時間、週40時間)も超えて働いた時間を、法定外残業(法定外時間外労働)といいます。

    例:

    所定労働時間が1日8時間の会社で、その日に9時間働いた場合。

    この1時間分は「法定外残業」です。

    法定労働時間を超えているので、会社は割増賃金(通常賃金の1.25倍以上)を支払う義務があります。

    このように、「所定労働時間」を基準として、どこまでが通常の賃金で、どこからが割増賃金の対象になるのかが変わってきます。

    労働基準法には直接書いていない

    「所定労働時間」という言葉は、労働基準法の条文の中には直接見当たりません。この点が、分かりにくい部分だと思います。

    まず結論から言えば、

    労働基準法では「所定労働時間」という用語は直接使われていません。

    しかし、労働基準法が定める「法定労働時間」を基準として、各企業が独自に「所定労働時間」を定めることを前提としたルールが存在します。

    労働基準法以外の法律(特に育児介護休業法やパートタイム・有期雇用労働法など)では、「所定労働時間」という用語が明確に出てきます。

    なぜ労働基準法にないか?

    労働基準法が「所定労働時間」という言葉を直接使わないのは、労働基準法が「最低限の労働条件の基準」を定める法律だからです。

    労働基準法は、「これ以下にしてはいけない」基準を定めています。労働時間であれば「法定労働時間(原則1日8時間、1週40時間)」です(労働基準法第32条)。

    会社は、この法定労働時間の範囲内であれば、例えば「1日7時間」や「週35時間」など、自由に労働時間を設定することができます。

    この「会社が独自に設定した労働時間」を「所定労働時間」と呼ぶわけですが、労働基準法は、個々の企業がそれぞれ自由に設定するこの「所定労働時間」について直接規定するのではなく、あくまで「法定労働時間」という上限を設けることで、所定労働時間の決め方をコントロールしているのです

    労働基準法は「所定労働時間」という用語そのものを使っていないものの、所定労働時間という概念は存在しているのです。

    労働基準法以外の法律

    労働基準法以外の法律では「所定労働時間」という用語が明確に出てくることが多々あります。特に、労働者の働き方や雇用形態の多様化に対応するための法律で用いられます。

    具体的な例を挙げると、

    育児介護休業法

    この法律では、育児や介護のための「所定労働時間の短縮等の措置」という言葉が頻繁に登場します(例:育児介護休業法第23条、第24条)。

    これは、「会社が定めた所定の労働時間を短くする」という制度を指しており、労働基準法上の「所定労働時間」の概念が前提となっています。

    パートタイム・有期雇用労働法

    この法律は、正社員とパート・有期雇用労働者の間の不合理な待遇差をなくすことを目的としています。

    「通常の労働者と同視すべき短時間・有期雇用労働者」の判断基準の一つとして、「通常の労働者と同一の業務に従事し、かつ、通常の労働者と同一の所定労働時間である短時間・有期雇用労働者」という表現が用いられています(例:同法第8条、第9条)。

    ここでも「所定労働時間」は、雇用契約に基づいて企業が定める労働時間を明確に指す言葉として使われています。

    まとめ

    所定労働時間とは、法定労働時間という法律の上限の範囲内で、会社が就業規則などで独自に定めた「働く時間」のことです。

    労働時間の上限の基準:会社がどれだけ働かせてよいかの基本的な上限となります。

    残業代の計算基準:どの時間から残業となり、割増賃金が必要になるかの区分の基準となります。

    皆さんの会社の就業規則には必ず記載されているはずですので、一度確認してみると良いでしょう。


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  • 代休について

    振替休日との違い

    休日に労働させる必要が生じたときに、あらかじめ、代わりに休ませる日を指定して休日を変更することを「休日の振替」といいます。

    関連記事:振替休日について

    この場合、「あらかじめ」というのが大事です。出勤させる休日が到来する前に、代わりに休ませる日を指定しなければなりません。それをしなければ、「代休」になります。

    休日に出勤させてから、その代償として別の日に休暇を与えても振替休日とはいいません。代休になります。

    振替休日であれば、その出勤した休日は労働日になり、代わりに与えられた振替休日が休日になります。単に休日の日が変更になっただけです。休日出勤手当の問題は生じません。

    代休であれば、その出勤した休日は「休日労働」になります。つまり、代りの休日を与えても、本来の休日分について割増した賃金を払わなければなりません。

    昭和23.4.19基収1397号、昭和63.3.14基発150号

    就業規則によって休日を特定したとしても、別に休日の振替を必要とする場合休日を振り替えることができる旨の規定を設け、これによって休日を振り替える前にあらかじめ振り替えるべき日を特定して振り替えた場合は、当該休日は労働日となり、休日に労働させることにはならない。

    休日に労働を行った後にその代償としてその後の特定の労働日の労働義務を免除するいわゆる代休の場合はこれにあたらない。

    賃金の扱い

    出勤した日については、当然、賃金を払う必要があります。

    たとえば、1日8時間労働の従業員が、月曜日から金曜日まで勤務して、所定休日の土曜日にも出勤した場合は、土曜日の労働時間は週40時間を超えるので、土曜日の労働時間については25以上の割増賃金の対象となります。

    法定休日の日曜日に出勤した場合には休日労働なので35%以上の割増賃金の対象となります。つまり、各々125%以上、135%以上の賃金支払を支払う必要があります。

    前述したように、「代休を与えるから支払わなくてもよい」という措置はできません。

    次に、代休を与えた日、代休取得日の賃金について検討します。

    代休を与えた場合、代休取得日には就労してはいませんが、使用者による就労免除であるため、通常の賃金を支払う必要があります。

    出勤日に賃金を支払い、代休日に賃金を支払えば実質的に二倍払いになります。

    労働協約、就業規則に定めがあれば、代休日について賃金控除することが可能です。

    この場合、休日労働の割増賃金を支払って、別途、代休の日の賃金1日分を差し引くことができます。結果的に、通常賃金部分が相殺の形になって、割増分のみを支払えばよいことになります。

    代休付与の義務はない

    法律上は代休を与える義務はありません。労働基準法等に書かれていないからです。つまり、休日に出勤した人に、その休日出勤に休日勤務の割増を含む賃金を払っていれば、代休がなくてもかまいせん。

    代休を与えないことになっていれば代休取得日の賃金問題も生じません。

    就業規則に代休を与えると書いてあれば与えなければなりません。代休を与えない場合は、法律にないから与えないということでなく、就業規則に明記したほうがよいでしょう。

    代休を与えないことによって、法定休日(1週間に少なくとも1回、4週間に4回以上の休日)を満たさないと法違反になるので、結果的に代休を与えなければならない場合もあります。


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  • 振替休日について

    振替休日とは

    振替休日とは、休日に労働させるさせる必要が生じたときに、別の労働日を休日に指定して休日の交換をさせることです。

    この場合、出勤することになった休日は普通の労働日となるので、通常の賃金を支払えばよく、休日労働割増賃金の必要はありません。

    振替休日は「あらかじめ」決めることが必須です。あらかじめ決めておかないと代休と同じ扱いになります。

    遅くとも、休日出勤する日の前日の終業時間前までに、「いつの休み」を「どこの出勤日」と入れ替えるのか書面で指示または承認しましょう。

    昭和23.4.19基収1397号、昭和63.3.14基発150号
    就業規則によって休日を特定したとしても、別に休日の振替を必要とする場合休日を振り替えることができる旨の規定を設け、これによって休日を振り替える前にあらかじめ振り替えるべき日を特定して振り替えた場合は、当該休日は労働日となり、休日に労働させることにはならない。
    休日に労働を行った後にその代償としてその後の特定の労働日の労働義務を免除するいわゆる代休の場合はこれにあたらない。

    関連記事:代休について

    振替日は、振替えられた日になるべく近い日にしなければなりません。

    同一週内に振替日を指定できない場合で、その週の労働時間が法定労働時間を超えたときは、超えた分が時間外労働になります。

    振替した後に、1週間に1日の休日、または4週間を通じて4日以上の休日が確保できない場合は、割増賃金にしなければなりません。

    就業規則に定める

    振替休日は、就業規則に「休日の振替を行うことがある」旨の定めを記載しておく必要があります。就業規則の定めがないときはこの制度を利用できません。

    代休の方は、就業規則の定めがなくても利用することができます。

    就業規則規定例:休日|就業規則


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  • 災害時の時間外労働

    災害時の臨時対応

    会社が労働者に対して時間外労働や休日労働を命じることができるのは次の2つの場合です。


    1.労働基準法第36条に基づく労使協定を締結したとき
    2.労働基準法第33条第1項に定められた、災害、緊急、不可抗力その他客観的に避けることのできない場合の特例を適用するとき

    33条の許可申請

    時間外労働等の必要が生じたときは36協定によって対応するのが原則ですが、災害等により、臨時的に36協定の定めを上回る労働時間が発生する場合、36協定を締結していない場合に臨時的に法定労働時間等を上回る労働時間が発生するときは33条を適用して労働基準監督署長に許可を求めることができます。

    労働基準法第33条 災害その他避けることのできない事由によつて、臨時の必要がある場合においては、使用者は、行政官庁の許可を受けて、その必要の限度において第32条から前条まで若しくは第40条の労働時間を延長し、又は第35条の休日に労働させることができる。ただし、事態急迫のために行政官庁の許可を受ける暇がない場合においては、事後に遅滞なく届け出なければならない。

    この許可は事前にとるのが原則ですが、事後も認められています。労働基準法33条が想定している「非常災害」の性質上、事前に所轄労働基準監督署長の許可を取得できるケースはむしろ稀だと考えられているからです。

    許可の基準

    「災害その他避けることのできない事由によつて臨時の必要がある」かどうかの判断は、事前に労働基準監督署に問い合わせる時間があればよいのですが、そうでなければまず使用者において判断しなければなりません。

    その際の参考になるのが、厚生労働省の通達「災害等による臨時の必要がある場合の時間外労働等に係る許可基準の一部改正について」です。

    ここでは次のような基準を示しています。

    1.単なる業務の繁忙その他これに準ずる経営上の必要は認めないこと。

    2.地震、津波、風水害、雪害、爆発、火災等の災害への対応(差し迫った恐れがある場合における事前の対応を含む。)、急病への対応その他の人命又は公益を保護するための必要は認める。例えば、災害その他避けることのできない事由により被害を受けた電気、ガス、水道等のライフラインや安全な道路交通の早期復旧のための対応、大規模なリコール対応は含まれる。

    3.事業の運営を不可能ならしめるような突発的な機械・設備の故障の修理、保安やシステム障害の復旧は認めるが、通常予見される部分的な修理、定期的な保安は認めない。例えば、サーバーへの攻撃によるシステムダウンへの対応は含まれる。

    4.上記の2及び3の基準については、他の事業場からの協力要請に応じる場合においても、人命又は公益の確保のために協力要請に応じる場合や協力要請に応じないことで事業運営が不可能となる場合には認める。

    災害はもちろん、急病への対応、インフラ復旧への対応、大規模リコールへの対応、サーバーへの攻撃によるシステムダウンも認められます。

    自分の所属する事業所だけでなく、他の事業所が被災した時の支援活動も認められます。

    上限規制との関係

    働き方改革による時間外労働の上限規制について、災害等による臨時の必要がある場合の時間外労働は、上限規制の対象ではありません。

    また、建設業等においては、災害時における復旧・復興の事業については、当分の間、別の扱いが適用されます。

    健康障害の防止

    あくまで必要な限度の範囲内に限り認められるものなので、過重労働による健康障害を防止するため、実際の時間外労働時間を月45時間以内にするように求めています。

    また、やむを得ず長時間にわたる時間外・休日労働を行わせた労働者に対しては、医師による面接指導等を実施し、適切な事後措置を講じることも求められています。

    なお、時間外労働・休日労働や深夜労働をした時間について割増賃金を支払う必要があります。

    不許可の場合

    労働基準監督署長が届出を不適当と認めたときは、その働かせた時間に相当する休憩や休日を与えなければなりません。

    労働基準法第33条2 前項ただし書の規定による届出があつた場合において、行政官庁がその労働時間の延長又は休日の労働を不適当と認めるときは、その後にその時間に相当する休憩又は休日を与えるべきことを、命ずることができる。

    公務員の場合

    公務員の場合は、第1項の「行政官庁の許可を受けて」という規定がありません。労働基準監督署長の許可はいりません。

    労働基準法第33条3 公務のために臨時の必要がある場合においては、第一項の規定にかかわらず、官公署の事業(別表第一に掲げる事業を除く。)に従事する国家公務員及び地方公務員については、第32条から前条まで若しくは第40条の労働時間を延長し、又は第35条の休日に労働させることができる

    就業規則の定め

    第33条による許可申請は、就業規則に定めがあるかどうかを問いませんが、そういう場合があることを就業規則に定めておいた方がよいでしょう。

    災害時の時間外労働|就業規則


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  • 時間単位年休について課長に聞いてみた!

    年次有給休暇は時間単位で取得できる


    新人人事(以下、新): 課長、おはようございます! 年次有給休暇について調べていたのですが、「時間単位年休」という言葉を見つけまして…。普通の有給休暇とどう違うのか、よく分からなくて困っています。教えていただけますでしょうか?

    課長: それじゃ説明しよう。時間単位年休は、労働基準法で認められている、比較的新しい有給休暇の取り方なんだ。

    時間単位年休の基本的な考え方

    課長: まず、通常の年次有給休暇は、1日単位で取得するのが原則だよね。でも、時間単位年休は、その名の通り、有給休暇を1時間単位で取得できるようにする制度なんだ。

    新: 1時間単位ですか!それは便利そうですね。ちょっと病院に行きたい時とか、子どものお迎えに少しだけ早く帰りたい時とかに良さそうです。

    課長: まさにその通り!労働者のワークライフバランスを向上させる目的で、2009年の労働基準法改正で導入されたんだ。

    時間単位年休を導入するための条件

    課長: ただ、この時間単位年休は、会社が「必ず導入しなければならない」という義務があるわけではないんだ。導入するには、いくつか条件がある。

    労使協定の締結が必要:会社が時間単位年休を導入するには、労働組合(ない場合は労働者の過半数を代表する者)と会社の間で「労使協定」を締結し、管轄の労働基準監督署に届け出る必要があるんだ。

    就業規則への明記:労使協定で定めた内容を、就業規則にも明記する必要があるよ。

    新: 勝手に始めていいわけではないんですね。ちゃんとルール作りが必要なんですね。

    労使協定で定めるべき内容

    課長: そうだね。そして、その労使協定では、主に次のことを定める必要があるんだ。

    時間単位年休の対象となる労働者の範囲:全従業員にするのか、一部の従業員にするのか、など。

    時間単位年休の具体的な取得単位:何時間単位で取得できるのか(1時間単位が一般的)。

    1年間の時間単位年休の取得上限時間数:これが重要なポイントで、1年間で取得できる時間単位年休は、5日分までと決まっているんだ。例えば、所定労働時間が8時間の会社なら、8時間 × 5日 = 40時間まで、ということになる。

    時間単位年休の申請方法:いつまでに、誰に申請するのか、など。

    新: 5日分まで、という上限があるんですね。

    労働者が気をつけるべき点

    課長: 労働者の視点から見ると、時間単位年休を利用する上で、いくつか気をつけるべき点があるよ。

    会社に制度があるか確認する:まず、自分の会社に時間単位年休の制度があるかどうかを確認することが重要だ。なければ利用できないからね。就業規則を確認するか、人事部に問い合わせるのが一番確実だ。

    年5日の上限があることを理解する:1年間で5日分(例えば40時間)しか使えないので、計画的に利用することが大切だ。頻繁に利用しすぎると、本当に必要な時に使えなくなってしまう可能性があるからね。

    時間単位年休は繰り越しの際に「日」に戻る:これは少し複雑なんだけど、もし今年、時間単位年休を使いきれずに翌年に繰り越す場合、時間単位で残った有給は、「日」単位に換算されて繰り越されるんだ。例えば、今年8時間分の時間単位年休が残っていても、翌年に繰り越されるのは1日分の有給休暇としてカウントされる、ということだ。端数が出てしまう場合は、切り捨てられてしまう可能性もあるから、できるだけ使い切るか、計画的に残しておく必要がある。

    労働者の判断に委ねられる:時間単位年休の取得は、労働者の自由な意思に委ねられている。会社は、事業の正常な運営を妨げる場合に限り、時季変更権を行使できるとされているけど、これは日単位の有給休暇と同じだね。ただし、会社が日単位での請求を時間単位に変えることや、時間単位での請求を日単位に変えることはできないんだ。

    不利益な扱いは禁止:時間単位年休を取得したことによって、賃金の減額や人事評価での不利益な取り扱いをすることは、法律で禁止されている。

    新: 5日分の上限や、繰り越しの際に日単位に戻る、という点は特に注意が必要ですね!これは申請する側も知っておかないと損をしてしまう可能性がありますね。

    課長: その通りだ。だからこそ、人事担当として、制度を正しく理解して、従業員にも適切に情報提供することが大事なんだよ。制度があっても、知らなければ利用できないし、誤解があるとかえってトラブルになる可能性もあるからね。

    新: はい、よく分かりました! ありがとうございます。

    関連情報

    労使協定についての補足

    労使協定では次の4項目を定めます。

    第1:時間単位年休の対象者の範囲を決めます。必ずしも全ての労働者にする必要はありません。

    ただし、正常な事業運営の必要性などで対象外の労働者を設定することができますが、例えば、育児を行なう労働者に限るなど取得目的による制限は認められません。

    第2:時間単位年休の日数を5日以内で決めます。

    第3:時間単位年休一日の時間数を決めます。一日の所定労働時間が8時間であれば、時間で取得した時間数の累計が8時間分になったときに、一日の有給休暇を取得したと数えます。7時間であれば7時間分になったときです。もし、所定労働時間が7時間30分のように端数があれば、(有給休暇に分単位の概念がないため)繰り上げて8時間付与することになります。端数処理を労働者に有利にということです。

    第4:一時間以外の時間を単位とする場合はその時間数を決めます。普通は1時間単位で決めると思いますが、選択肢としては2時間、3時間という単位も認められています。

    繰り越しについての補足

    通達では「当該年度に取得されなかった年次有給休暇の残日数・時間数は、次年度に繰り越されることになるが、 当該次年度の時間単位年休の日数は、 前年度からの繰越分も含めて5日の範囲内となるものであること」と示しています。

    時間単位年休は繰り越しされません。例えば、5日分40時間の時間単位年休のうち20時間を使って20時間を残した場合、翌年の時間単位年休は40時間プラス20時間にはならず、あくまでも5日分40時間となります。

    年次有給休暇全体としては繰り越されるので、消えるわけではありません。

    労使協定と就業規則のサンプル

    対象者を限定しない労使協定のサンプル
    時間単位年休に関する労使協定のサンプル1

    対象者を限定する労使協定のサンプル
    時間単位年休に関する労使協定のサンプル2

    就業規則の規定:時間単位付与|就業規則

    追加質問(年5日取得義務との関連)

    新: 課長、先日教えていただいた時間単位年休について、もう一つ確認したいことがあります。この時間単位年休って、「年5日の有給取得義務化」の対象になるんでしょうか? もし時間単位で5日分取ったら、義務を果たしたことになるんですか?

    課長: いい質問だね。そこは、よく誤解されやすいポイントなんだ。結論から言うと、時間単位年休は、「年5日の有給取得義務化」の対象にはならないんだよ。

    新: え、そうなんですか!? 時間単位で5日分取得しても、義務は果たせない、ということですか?

    課長: そうなんだ。それぞれの制度の目的と、法律上の位置づけが違うからなんだよ。

    課長: まず、「年5日の有給取得義務化」というのは、2019年に法律で義務付けられたもので、年に10日以上の有給が付与される従業員に対して、会社は最低5日は有給を取らせないといけない、というルールだよね。これは、従業員にまとまった休みを取ってもらって、心身のリフレッシュを図ることが一番の目的とされているんだ。

    新: はい、それは理解しています。

    課長: そして、この「年5日」にカウントされるのは、原則として「日単位」で取得された有給休暇なんだ。

    課長: 一方、時間単位年休は、従業員がもっと柔軟に有給を使えるように、という目的で作られた制度だ。例えば、病院にちょっと行ったり、子どもの学校行事で少しだけ早く帰ったり、といった短い時間の用事に対応するためにある。会社が労使協定を結んで導入すれば、1年間に最大5日分までを時間で取得できる、という制度だね。

    新: 確かに、目的が違いますね。

    課長: そうなんだ。だから、この二つの制度は目的も性質も異なるから、時間単位年休を5日分取得したとしても、「年5日の取得義務」を果たしたことにはならないんだ。

    簡単に言うと、

    年5日義務化: 「年間で最低5日間は、まとまった休みを取りましょうね」という話。

    時間単位年休: 「日単位で取るほどじゃないけど、ちょっとだけ時間を休みたい時に便利だよ」という話。

    だから、例えば、君が今年、日単位で3日の有給を取って、さらに時間単位年休を20時間(8時間労働の会社なら2.5日分に相当)使ったとするよね。この場合、日単位で取ったのは3日だから、会社としては、残りの2日を日単位で取得させる義務がまだ残っている、ということになるんだ。

    新: なるほど!すごくよく分かりました!


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