Last Updated on 2024年10月25日 by 勝
時間外労働は原則禁止
労働基準法は、労働時間は1日8時間、1週40時間を超えてはいけない、かつ休日を週1回以上与えなければならないと定めています。
しかし、現場の実情は、杓子定規では運営できない場合もあることから、次の場合には、例外的に、時間外と休日の勤務を認められることになっています。
①災害その他避けることのできない事由があるとして労働基準監督署長が許可した場合
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②公務のために必要がある場合
③労使協定を締結し、労働基準監督署に届け出た場合
36協定について
一般的には、時間外労働や休日労働をさせる場合には、上記の③を使います。
この労使協定を、労働基準法第36条に定めがあるので、「36協定」と言います。この協定は、時間外労働をさせる前に締結しなければなりません。
36協定を結ばないで時間外労働をさせると、たとえ残業手当を支払っていても、労働基準法違反となり、6ヶ月以下の懲役または30万円以下の罰金という重い罰則が定められています。
また、10人以上から作成義務が生じる就業規則と違って、36協定は10人未満でも必要です。
36協定で定める事項
協定に定めるべき事項は、36条の2で示されています。
① 労働時間を延長し、又は休日に労働させることができることとされる労働者の範囲
② 対象期間(この条の規定により労働時間を延長し、又は休日に労働させることができる期間をいい、一年間に限るものとする。)
③ 労働時間を延長し、又は休日に労働させることができる場合
④ 対象期間における一日、一箇月及び一年のそれぞれの期間について労働時間を延長して労働させることができる時間又は労働させることができる休日の日数
36協定を届け出すれば残業させることができると考えて実際の労働時間を軽視する経営者も見うけられますが、労使協定があっても協定した限度時間を超えて働かせれば残業代を支払っても労働基準法違反です。
⑤ 労働時間の延長及び休日の労働を適正なものとするために必要な事項として厚生労働省令で定める事項
1.時間外労働や休日労働をさせる具体的理由
具体的な理由の欄は、「業務上やむを得ない場合」などという曖昧なものではなく、臨時の受注、納期変更、急な顧客対応、クレーム対応、月末の経理作業、給与計算などのように、業務別に、具体的に記載しなければなりません。
2.その業務の種類
これも具体的に記載します。「〇〇工場」、「営業部」などの部課名でもよいし、複数の部課が同じ業務を行っている場合は、一括して「製造部門」などと書いてもかまいません。
3.対象となる労働者数
労働者数は、業務の種類ごとに時間外労働や休日労働をする可能性がある従業員数を記入します。18歳未満の従業員は時間外労働や休日労働をさせることができないので、労働者数には含みません。
4.延長することができる時間
36協定によって延長できる時間は、1ヶ月につき45時間、1年につき360時間と上限が定められています。
5.特別な事情がある場合の上限
特別な事情がある場合は特別条項を締結して「月100時間未満、年720時間以内」も可能です。
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6.協定の有効期限
期間については特に定めがありませんが、定期的に見直しを行う必要があるとして、有効期間は1年とするように指導されています。労働協約による場合は、労働組合法の規定で上限3年が適用されます。36協定に自動更新の規定を置くことはできますが、自動更新の都度、更新する旨を所轄の労働基準監督署長に届け出る必要があります。実質的には手間は同じです。
届け出
所轄の労働基準監督署の窓口に持参するか電子申請を利用して届け出をします。
「時間外労働・休日労働に関する協定届」の様式は厚生労働省ホームページの「主要様式ダウンロードコーナー」のページに掲載されています。
労使協定を調印する人
通常は、会社側は社長、労働者側は労働組合委員長がそれぞれを代表して調印します。
労働組合がない場合は、労働者の過半数を代表する人を選出して調印しなければなりません。
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就業規則の定めも必要です
36協定を結べば、法定労働時間を超えて労働させても、協定の範囲であれば労働基準法違反になりません。
しかし、時間外労働を命じることは別の問題です。従業員に時間外労働を業務として命令するには、36協定だけでは足りず、就業規則に「時間外勤務を命じることがある」という規定が記載されている必要があります。
規定例:労働時間・休憩|就業規則
規定例:休日|就業規則
労使委員会等の決議
36協定の締結・届け出に代えて、労使委員会(労働基準法第38条の4第1項に基づくもの)又は、労働時間等設定改善委員会の決議・届け出により、時間外及び休日の労働を行うことができます。
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