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労働災害

労災保険における業務上とは

Last Updated on 2023年9月26日 by

業務上という条件

仕事中にケガなどをすれば労災保険の対象になります。ただし、厳密には「業務上災害」である必要があります。

業務上災害の要件は、

1.労働者が事業主の支配下にある(業務遂行性)
2.業務が原因で災害が発生した(業務起因性)

の2つです。

業務上の例

労働時間中

仕事をしているときに発生した事故は、原則として業務上災害です。この仕事中には、作業の準備や後片付けの時間も含まれ、手待ち時間の仮眠中の事故も業務中と認められます。

作業を中断してトイレに行って、トイレで転倒してケガをしたというような場合も、事業主の支配下にあり、業務に関連しているということで、業務上災害に認めれらています。類似の行為に、水を飲む、風で飛ばされた帽子を拾うなどがあります。

業務に関係のない私用で抜け出して事故にあった場合は業務外とされます。家族からの携帯電話に出るために外へでたときの事故などです。ただし、忘れたメガネを届けてもらって、それを門までとりに行く途中の事故については仕事に必要だったとして認められた例があります。

担当業務でないことを行って事故にあった場合、それが使用者の命令で行ったことであれば業務上となりますが、単なる親切心から行ったときは難しいようです。事情により判断が分かれます。

休憩時間中

休憩時間中に、事務所や作業場で何かにつまづいて転んだなどの事故は、業務上災害に認められるようです。しかし、休憩時間を利用して外出し、そこで事故にあった場合や、休憩時間中に同僚とボール遊びなどをして怪我をした場合などは難しいようです。

出張中

出張中であっても、事業主の命令で出張している以上、事業主の支配下にあると認められ、業務上災害に認められることが多いようです。ただし、仕事が終わってから一人で飲みに行って転んだとかは難しいようです。また、仕事中であっても、例えば脳卒中で倒れた場合などは、仕事との関連性があるかどうかが微妙な判断になります。

在宅勤務中

在宅勤務の場合も、①会社の指揮命令による業務中である。②傷病が業務と因果関係がある、ということであれば労災として認められます。

在宅勤務の場合は事故の確率は低いと思われますが、皆無ではありません。
例えば、

□ 居間のテーブルで仕事をしていたときに、誤ってポットを倒してやけどをしてしまった。
□ 書類を取りに隣の部屋に行ったときに、つまづいて転んで捻挫してしまった。

□ 自宅が落ち着いて仕事をできる環境にないので、近くの喫茶店で仕事をするために出かけたが途中で転んでけがをしてしまった。

ただし、私的行為が原因であるものは業務上の災害とはなりません。

自宅にいれば私的行為との区別が難しくなります。

例えば、上記のやけどの場合、食事中にポットをひっくり返してやけどをした場合は、私的行為だと考えられます。

この場合、通勤労災における逸脱と中断は在宅勤務においても参考になると思われます。

通勤を逸脱したり中断すれば、その後は原則として労災保険上の通勤と認められません。

中断とは、通勤を中断して通勤と関係のない行為を行うことです。 逸脱とは、通勤途中で合理的な経路からそれることです。

通勤における逸脱や中断の例
・帰宅途中に映画を見た
・帰宅途中にパチンコをやった
・居酒屋やスナックでの飲酒等

つまり、在宅勤務中に、息抜きに映画やパチンコ、居酒屋に行けば、家を出た時点で労災保険の対象にならないでしょう。

戻ってくれば、再び対象になりますが、お酒を飲んでいれば、認められない可能性が髙いでしょう。

通勤災害には「ささいな行為」という考え方があります。

「ささいな行為」に該当すれば、中断中の出来事でも通勤災害になります。

ささいな行為の例
・公衆トイレの使用
・公園で一休み(経路から離れた公園はだめ)
・タバコや雑誌などを素早く購入する買い物
・駅の構内でジュースを立ち飲みする
・経路上の店で渇きをいやすためにお茶などを飲む(ごく短時間にかぎる)等

これからすると、だいぶ、労災適用の幅が広がりそうです。

いずれにしても、個別の判断については所轄の労働基準監督署長が行うので、会社の担当者が簡単に判断してはいけませんが、在宅勤務中の傷病については労災の可能性をまず考える必要があると思われます。

分かりやすくするために事例で説明しましたが、実際の事故がいろいろな事情を含めて事例に完全一致することはないと思います。労災申請をこのような事例だけで判断すると誤る場合があります。ご注意ください。


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