カテゴリー
就業規則 採用の事務

業務上必要な費用は全部会社負担か

Last Updated on 2023年9月30日 by

就業規則に定める

基本的には業務上必要な費用は全部会社が負担しなければなりません。

「基本的には」と書いたのは、例外もあるからです。

労働基準法第89条に就業規則に定めるべき事項が規定されています。

第八十九条 常時十人以上の労働者を使用する使用者は、次に掲げる事項について就業規則を作成し、行政官庁に届け出なければならない。次に掲げる事項を変更した場合においても、同様とする。
一〜四(略)
五 労働者に食費、作業用品その他の負担をさせる定めをする場合においては、これに関する事項
六〜十(略)

「労働者に食費、作業用品その他の負担をさせる定めをする場合においては、これに関する事項」とあります。

つまり、

就業規則に定めてあれば「労働者に食費、作業用品その他の負担をさせる」ことは問題ありません。もちろん、社会通念からずれるような決め方はできませんが。

例えば、昼の弁当代は自己負担している人が多いと思われます。仕事中に着用するスーツ等は自己負担であると思われます。作業中に汗をふくタオル、移動中にさす雨傘なども自己負担で準備していると思われます。他にもあると思われます。

こうした取り扱いを、きちんと就業規則に定めましょうと、労働基準法は求めているわけです。

定めてあれば、非常識な負担を労働者に求めるものでない限り、労働者が負担することが認められます。

就業規則に定めがなければ、微妙な問題になってきます。

明文化されていなくても、長いことそれが慣例になって、事実上就業規則化していることが多いと思われますが、いずれ、きちんと決めておいたほうが良いでしょう。

関連記事:労働慣行について

これまでは昼食代の補助を出していたのに今後は出さないなどと、待遇を悪くする方向に決めるのであれば、「不利益変更」になりますが、実質的に慣行として行われていることを明文化するのは不利益変更とは言えないので、労働者側から抵抗される心配はあまりないでしょう。

関連記事:就業規則改定による不利益変更

労働条件明示との関係

労働基準法は、採用時に労働条件を明示しなければならないと定めています。

第十五条 使用者は、労働契約の締結に際し、労働者に対して賃金、労働時間その他の労働条件を明示しなければならない。この場合において、賃金及び労働時間に関する事項その他の厚生労働省令で定める事項については、厚生労働省令で定める方法により明示しなければならない。

明示すべき事項は労働基準法施行規則第5条第1項に規定されています。

たくさんありますが、今回の話題に関係するところは次です。

(8)労働者に負担させるべき食費、作業用品その他に関する事項

労働者に対して制服代や備品の負担について明示しないで雇用することは労働条件の明示義務違反になります。

テレワークの場合

自宅でテレワークする場合には、自宅にある私物を利用することになります。

インターネット環境、照明、エアコン、机や椅子、その他いろいろあります。

こうした労働者の私物をただで借りるのは「労働者に食費、作業用品その他の負担をさせ」ていることになります。

先述したように、就業規則に定めがあれば、一定のものについては労働者に負担させることも可能ですが、一般的には仕事に使う費用は会社持ちが原則です。

テレワークの場合、明確に分けにくい部分もあるので、就業規則の規定にしても、労働条件明示にしても、計算方法も含めて規定することが必要になるでしょう。


会社事務入門社内規程の基礎知識>このページ