家族手当について

賃金・賃金制度

家族手当とは

家族手当は、福利厚生的な手当の一つです。

家族手当の対象者と支給額

家族手当は、一般的には扶養家族である妻、子供に対して、1人いくらと決めて支給されます。扶養手当ともいいます。

どの家族を支給対象にするかは、それぞれの会社の規程によります。独自に支給対象範囲を決める会社もあれば、健康保険の被扶養者の基準と同じにする会社もあります。

また、税法上の配偶者控除・扶養控除を基準とする会社もあります。

就業規則規定例

支給する場合は、就業規則または賃金規程にその内容を定めます。

給与計算における扱い

所得税の扱い

家族手当は、所得税では非課税ではありません。「給与所得」の一部として源泉徴収税の対象になります。

家族手当は、社会保険料の計算における標準報酬月額の対象になる賃金等に含まれます。また、家族手当は、労働保険料の計算における賃金総額に含まれます。

割増賃金の基礎

家族手当(扶養手当)が割増賃金の基礎に含まれるか、含まれないかは、その手当の支給要件によります。

労働基準法では、家族手当は原則として割増賃金の基礎から除外できる手当の一つとして認められていますが、除外するためには厳格な要件を満たす必要があります。

1. 原則:割増賃金の基礎に「含まれない」要件

家族手当が割増賃金(残業代など)の基礎から除外できるのは、以下のすべての要件を満たす場合です。

  1. 扶養家族の人数または有無に応じて支給されていること。
    • 支給額が、家族の人数によって変動することが明確である必要があります。
  2. 労働と直接的な関係がないこと。
    • 労働者の能力、経験、役職、または特定の労働条件(危険度、深夜勤務など)とは無関係に支払われていることが必要です。

具体的な例

  • 「扶養家族1人につき月額5,000円を支給する」のように、家族の人数に応じて金額が決定されている場合

2. 注意点:割増賃金の基礎に「含まれる」ケース

以下のようなケースでは、名目が「家族手当」であっても、実質的に労働の対価とみなされ、割増賃金の基礎に含めなければなりません

該当するケース理由
家族数に関わらず一律支給扶養家族の有無や人数に関係なく、全従業員に一律の定額が支給されている場合、これは実質的に労働の対価(基本給の一部)とみなされます。
役職や能力に応じて変動扶養家族の有無に加えて、役職や勤続年数、資格など、労働と関連する要件によって金額が大きく変動する場合。
「全員に一律」+「扶養者に加算」の合計を支給家族の有無に関わらず全員に支給される一律部分は、割増賃金の基礎に含める必要があります。ただし、扶養家族に応じて加算された部分のみは除外可能です。

家族手当についての考え方

家族手当は、本人の貢献度や職務の内容などと関係なく、扶養する家族があるかどうかで支払われます。家庭を持てばいろいろと金がかかるだろうということで、生活費補完という意味合いで支給されてきたのですが、独身者とのアンバランスなどが問題にされるようになってきています。

家族手当そのものを廃止する会社もでてきており、見直しをして、配偶者に対する手当を廃止する動きもあります。人件費の削減のために、見返りがなく家族手当を廃止、縮小してしまえば、「労働条件の不利益変更」に抵触すると考えられます。

家族手当を見直す代わりに基本給を上げたり、配偶者に対する手当は廃止するが、子女教育手当の増額するなどの措置をとるのであれば、部分的に不利益になることであっても、改正することに合理性があるとされ認められると考えられます。