Last Updated on 2023年10月15日 by 勝
不正競争防止法とは
不正競争防止法とは、企業間の不適切な競争を防ぐための法律です。
不正競争に該当する行為
「不正競争」に該当するとされているのは以下の行為です。
周知表示混同惹起行為
他人の商品・営業の表示(商品等表示)として広く認識されているものと同一または類似の表示を使用し、混同を生じさせる行為です。
「商品等表示」は、人の業務に係る氏名、商号、商標、標章、商品の容器・包装、その他の商品または営業を表示するものです。
事例
有名コーヒーチェーンの「珈琲所コメダ珈琲店」と類似する店
舗外観を使用した同業者に対し、店舗外観の使用禁止が認められた。(東京地判平28.12.19)
著名表示冒用行為
他人の商品や営業の表示(商品等表示)として著名なものを、自己の商品・営業の表示として使用する行為です。
「周知表示混同惹起行為」のように混同を生じさせないものの、顧客吸引力の不当な利用、ブランドイメージの稀釈化、ブランドイメージの汚染などの悪影響を与えるような行為を指します。
事例
三菱の名称及び三菱標章(スリーダイヤのマーク)が企業グループである三菱グループ及びこれに属する企業を示すものとして著名であるとして、信販会社、建設会社や投資ファンドへの使用を差し止めた。(三菱信販事件-知財高判平22.7.28)(三菱ホーム事件-東京地判平14.7.18)(三菱クオンタムファンド事件-東京地判平14.4.25)
形態模倣商品の提供行為
他人の商品の形態を模倣した商品を譲渡などする行為です。
ここでいう「商品の形態」とは、需要者が通常の用法に従った使用に際して知覚によって認識できる、商品の外部及び内部の形状並びに形状に結合した模様、色彩、光沢及び質感のことです。
ここでいう「模倣」とは、他人の商品の形態に依拠して、これと実質的に同一の形態の商品を作り出すことです。
営業秘密の侵害
窃取等の不正な手段によって営業秘密を取得し、自ら使用する、もしくは第三者に開示する行為などです。
なお、「営業秘密」として法律の保護を受けるためには、以下の3つの要件を満たす必要があります。
① 秘密として管理されていること(秘密管理性)
② 事業活動に有用な技術上または営業上の情報であること(有用性)
③ 公然と知られていないこと(非公知性)
関連記事:営業秘密の侵害
限定提供データの不正取得等
窃取等の不正な手段によって限定提供データを取得し、自ら使用する、もしくは第三者に開示する行為などです。
ここでいう「限定提供データ」は、企業間で複数者に提供や共有されることで、新たな事業の創出につながったり、サービス製品の付加価値を高めるなど、その利活用が期待されているデータのことです。
なお、「限定提供データ」として法律の保護を受けるためには、以下の3つの要件を満たす必要があります。
① 業として特定の者に提供する(限定提供性)
② 電磁的方法により相当量蓄積されている(相当蓄積性)
③ 電磁的方法により管理されている(電磁的管理性)
技術的制限手段無効化装置等の提供行為
技術的制限手段により制限されているコンテンツの視聴やプログラムの実行などを可能とする(技術的制限手段の効果を無効化する)装置、プログラム、指令符号(シリアルコードなど)、役務を提供するなどの行為です。
ここでいう「技術的制限手段」は、音楽、映像、ゲーム等のデジタルコンテンツについて、無断複製や無断視聴などを防止するための技術的手段のことです。
ドメイン名の不正取得等の行為
図利加害目的で、他人の商品・役務の表示(特定商品等表示)と同一・類似のドメイン名を使用する権利を取得・保有、または使用する行為をです。
ここでいう「図利加害目的」は、不正の利益を得る目的または他人に損害を加える目的のことです。
事例
原告の著名な商品等表示である「maxell」と類似する「maxellgrp.com」というドメイン名を使用し、ウェブサイトを開設して、その経営する飲食店(風俗業)の宣伝を行っていた会社に対し、使用許諾料相当額(第5条第3項)の損害賠償(約530万円)が命ぜられた。(マクセルコーポレーション事件-大阪地判平16.7.15)
誤認惹起行為
商品・役務またはその広告等に、原産地、品質・質、内容等について誤認させる表示をする行為、またはその表示をした商品を譲渡するなどの行為です。
事例
酒税法上「みりん」とは認められない液体調味料を、「本みりん」の部分のみの印象が強く残り「タイプ」の部分は目にとまらないような態様で「本みりんタイプ」との商品表示を行い販売した行為が誤認惹起行為に当たるとした。(本みりんタイプ調味料事件-京都地判平2.4.25)
信用毀損行為
競争関係にある他人の、営業上の信用を害する虚偽の事実を告知または流布する行為です。
ここで「競争関係」とは、双方の営業につき、その需要者又は取引者を共通にする可能性があることで足りるとされています。なお、非競争者間での誹謗行為等は、本法ではなく、一般不法行為(民法第709条)の問題です。
ここで「他人」とは、名称自体が明示されていなくても、告知等の内容及び、業界内の情報等から、告知の相手方において誰を指すのか理解できれば足りるとされています。
代理人等の商標冒用行為
パリ条約の同盟国等において商標に関する権利を有する者の代理人が、正当な理由なく、その商標を使用などする行為です。
不正競争行為への対応
不正競争行為が行われた場合、被害者が取り得る手段として、加害者に対する民事上の①差止請求、②損害賠償請求、③信用回復措置請求があります。
差止請求
不正競争によって営業上の利益を侵害され、又は侵害されるおそれがある者は、その営業上の利益を侵害する者又は侵害するおそれがある者に対し、その侵害の停止又は予防を請求することができます(法第3条1項)。
損害賠償請求
他人の不正競争行為によって営業上の利益を侵害された被害者は、侵害者に対する損害賠償請求を行うことができます(法第4条)。
信用回復措置請求
不正競争行為によって営業上の信用を害された者は、侵害者に対し、営業上の信用の回復をするために必要な措置を請求することができます。(法第14条)