Last Updated on 2025年6月16日 by 勝
労災保険の認定要件
労災保険は、業務が原因でケガや病気になった場合に給付される制度です。持病をお持ちの方が業務によってその症状が悪化した場合も、以下の3つの要件をすべて満たせば、労災と認定される可能性があります。一般的な労災は、1と2の2つの要件を満たせば認定されます。
- 業務遂行性(業務中の出来事であること)
- 労働者の方が、会社の指揮命令下にある状態で病気が発生したこと、または悪化したこと。例えば、会社で荷物の運搬作業をしている最中に腰痛が悪化したなど、業務と時間的・場所的なつながりがあるかどうかがポイントです。
- 業務起因性(業務と病気の因果関係)
- 労働者の方の病気や症状の悪化と、行っていた業務の間に「相当な因果関係」があること。これは、「その業務を行っていれば、その病気が発生したり悪化したりするのは自然なことだ」と客観的に判断できる関係を指します。
- 業務の過重負荷(持病の自然な経過を超えた悪化)
- 業務が原因で、持病の「自然な経過」を超えて、症状を著しく悪化させたことがポイントです。
- 「自然な経過を超えて」とは、普段の生活を送っているだけでは考えられないようなスピードや程度で症状が悪化した、という意味です。
- 例えば、普段から腰痛があっても、通常の生活では急激に椎間板ヘルニアを発症するようなことはなく、それが会社での重い荷物運搬によって急激に悪化した、といったケースが該当します。
- また、高血圧や糖尿病などの持病がある方が、長時間労働や過度なストレスなどの業務による負担で、脳卒中や心筋梗塞といった重い病気を発症したケースも可能性があります。
- 業務が原因で、持病の「自然な経過」を超えて、症状を著しく悪化させたことがポイントです。
判断は労働基準監督署が行います
業務が持病を悪化させた主な原因であると認められれば、労災保険の給付を受けられる可能性があります。ただし、最終的な判断は、詳細な状況や証拠に基づいて行われます。
労災保険が適用されるかどうかは、会社ではなく所轄の労働基準監督署が判断します。そのため、会社が安易に「持病だから労災にはならない」と判断することはできませんし、すべきではありません。
会社がアドバイスできること
労働基準監督署への相談を勧める
まず、かかりつけの医師に相談し、業務が腰痛悪化の原因となった可能性について意見を聞いてみてください。医師の意見は、労災認定の重要な判断材料となります。
その上で、お住まいの地域を管轄する労働基準監督署の労災課に相談に行くことをおすすめします。労働基準監督署では、具体的な状況を詳しく聞き取った上で、労災認定の可能性や必要な手続きについて教えてくれます。
労災認定が受けられなかったときのアドバイス
仮に労災認定の要件を満たさないと判断された場合でも、健康保険に加入していれば、傷病手当金の支給対象となる可能性があります。これは、病気やケガで仕事を休んだ場合に、生活を保障するための制度です。
また、どうしても労災保険の手続きを進めたいにもかかわらず、不支給決定が出た場合は、その決定に対して不服申立てを行うことも可能です。