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労働基準法

シフト確定後の有給休暇申請にどう対応するか

Last Updated on 2025年8月20日 by

質問

シフトが確定してしまってから、休みの希望を出されるのは困ります。本人の年次有給休暇取得の希望も踏まえてシフトを組んでいるので、シフトを組む前に申請しなかった年次有給休暇を拒むことはできますか?

回答

結論から申し上げると、シフト確定後に申請された有給休暇であっても、原則として会社は拒否することはできません。

労働基準法第39条第5項において、「使用者は、前各項の規定による有給休暇を労働者の請求する時季に与えなければならない。」と定められており、これは「時季指定権」といって、労働者がいつ有給休暇を取得するかを決定する権利です。

ただし、同条ただし書きに「ただし、請求された時季に有給休暇を与えることが事業の正常な運営を妨げる場合においては、他の時季にこれを与えることができる」とあり、これを「時季変更権」といいます。

つまり、会社が有給休暇の取得を拒否できるのは、この時季変更権を行使できる場合に限られます。

シフト確定後の有給休暇申請と時季変更権

ご質問のケースのように、「本人の休みの希望を踏まえてシフトを組んでいる」「シフトが確定してしまってから、休みの希望を出されるのは困る」というお気持ちは大変よく理解できます。しかし、法律上は以下の点に注意が必要です。

「事業の正常な運営を妨げる場合」の判断は厳格

単なる人手不足や、繁忙期であるというだけでは、時季変更権の行使は認められにくい傾向にあります。

具体的には、

・その労働者が休むことで、その日の業務が全く立ち行かなくなる(他の労働者では代替できない、業務に重大な支障が生じる)

代替要員を確保することが客観的に困難である

・同日に多数の労働者が有給休暇を申請し、人員配置上、やむを得ない

といった、具体的な事実と合理的な理由が必要です。

「シフトを組む前に申請しなかったから」という理由だけで拒否することは、認められません。

拒否はできず「時季の変更」である

時季変更権は、あくまでも「他の時季に与えることができる」権利であり、有給休暇そのものの取得を認めないことではありません

したがって、時季変更権を行使する場合は、労働者と協議し、別の取得可能な日を提示する必要があります。「有給は取らせない」という対応は違法となる可能性があります。

申請時期のルール化の限界

「シフトを組む前に申請してください」というルールを就業規則等で定めること自体は、事業運営上、望ましい運用です。

しかし、「○日前までに申請しなければ有給休暇を認めない」といった、取得を実質的に困難にするような厳しい申請期限を設けることは、労働者の時季指定権を侵害することになり、無効と判断される可能性が高いです。

「〇日前までの申請をお願いします」という「お願い」レベルであれば問題ありませんが、それをもって申請が遅れたことを理由に拒否することはできません。

運用上のポイント

シフト制の職場で有給休暇の取得トラブルを防ぐためには、以下の点に配慮することが重要です。

有給休暇希望日に関するルールの明確化と周知徹底

「シフト作成前に希望を提出すること」を就業規則やシフト運用ルールに明記し、労働者全員に周知徹底します。あくまで「お願い」ベースであることを理解してもらうことが重要です。

事前の希望ヒアリングの徹底

シフト作成時に、通常の休日希望と合わせて有給休暇の希望も丁寧に聞き取る機会を設けます。

コミュニケーションの重視

シフト確定後に有給休暇の申請があった場合でも、一方的に拒否するのではなく、まずは労働者と十分に話し合い、なぜその日に休みたいのか、業務への影響はどうか、代替案はないかなどを丁寧に確認します。

代替要員の確保努力

もし、その日の有給休暇取得が事業運営に支障をきたす可能性があるのであれば、他の労働者との調整や応援体制の検討など、代替要員確保に向けた努力を最大限行う姿勢が求められます。

時季変更権行使の慎重な判断

時季変更権を行使する場合は、その具体的な理由(なぜ事業の正常な運営が妨げられるのか)を明確に説明し、別の取得可能日を提示します。安易な時季変更権の行使は、トラブルの原因となります。

まとめ

シフト制の職場であっても、年次有給休暇は労働者の権利であり、原則として労働者の請求する時季に与えなければなりません。シフト確定後の申請であっても、会社が有給休暇を拒否できるのは、「事業の正常な運営を妨げる」という厳格な要件を満たし、かつ「時季変更権」を行使する場合に限られます。


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