Last Updated on 2025年7月22日 by 勝
年次有給休暇の付与要件の基本
年次有給休暇は、労働基準法第39条で定められている労働者の権利です。年休が付与されるには、以下の2つの要件を満たす必要があります。
1.雇い入れの日から6ヶ月継続して勤務していること
2.その6ヶ月間の全労働日の8割以上出勤したこと
7ヶ月目以降は、1年ごとに区切られた期間(基準日以降1年間)における全労働日の8割以上出勤している場合に、年休が付与されます。
出勤率8割未満だった場合:
例えば、雇入れ後1年目に、全労働日に対する出勤率が8割未満だった労働者には、2年目に有給休暇を付与されません。通常、有給休暇は勤続年数ごとに日数が追加されるので、本来であれば、2年目には11日付与されるはずですが、このケースでは1年目の出勤率が影響して2年目の有給休暇はゼロとなります。ただし、さらに次の年である2年目の出勤率が8割以上に戻った場合には、3年目の付与日数は3年目に相当する日数、つまり12日が付与されます。出勤率により年次有給休暇が付与されないのはあくまでその年度の付与のことで、継続勤務年数には影響しないのです。
全労働日とは?
全労働日とは、従業員に労働義務が課されている日を指します。
具体的には、基本的には、総歴日数から所定休日を除いた日です。
よって、所定休日に出勤(いわゆる休日出勤)した日は所定休日から除外する必要があります。
次にあげる日数も全労働日にはカウントされないため注意しましょう。
①業務上傷病による休業期間
②育児・介護休業期間
③産前産後休業期間
以上については、労働基準法第39条⑩に規定されています。
次の期間についても全労働日にはカウントしません。
①年休を取得した日
欠勤として取り扱うことは当を得ないため、出勤として取り扱う(昭22.9.13 発基第17号)
②使用者の責に帰すべき事由による休業
事実上労働の義務が免除されているため、全労働日(分母)から除外すべき(昭33.2.13 基発第90号他)
③ストライキ期間
労働者の勤怠評価の対象とするのは妥当でないため、全労働日(分母)から除外すべき(同上)
④生理休暇
欠勤として取り扱う休暇として定め得るが、出勤として取り扱うことも差し支えない(昭23.7.31 基収第2675号)
さらに、台風、地震などの不可抗力による休業も、労働者の勤怠評価の対象とするのは妥当でないため計算上出勤に入れるべきでしょう(客観的に出勤ができない状態であったかの実情を考慮する必要はあります)
休職期間については、実質的に欠勤を連続して取得するもの考えれば、出勤率計算上は欠勤と同様に取り扱うことになりますが、会社からの発令による休職であれば、会社都合と言えなくもありません。そもそも休職については労働基準法に定めがなく、会社が任意に設定したものなので、運用について事前に就業規則等で定めておく必要があります。
出勤した日とは?
「出勤した日」とは、実際に出勤した日に加えて、前述の「全労働日」の項目で挙げた「出勤したものとして扱われる日」が「出勤した日」に含まれます。
一方、以下の日は「出勤した日」には含まれません。
・欠勤日: 労働者が自己都合で休んだ日。
・私傷病による休業日: 業務外の傷病による休業で、休業補償の対象外となる期間。
・遅刻・早退をした日: 遅刻や早退があっても、その日は1日出勤したものとしてカウントされます。その日を労働時間に応じて按分して計算するような運用は認められません。
出勤率の計算方法
出勤率は、以下の計算式で求められます。
出勤率=出勤した日数の合計÷全労働日数の合計×100(%)
計算例:
基準日前1年間の所定労働日が240日だったとします。
・会社都合の休業が5日
・有給休暇の取得が10日
・欠勤が30日
この場合、
1.全労働日数の合計
所定労働日数240日 - 会社都合の休業5日 = 235日
※有給休暇は全労働日数には影響しません。
2.出勤した日数の合計
(実際に労働した日数)+ 有給休暇の取得10日
実際に労働した日数は、
235日(全労働日数)- 欠勤30日 = 205日
したがって、出勤した日数の合計は、205日 + 10日 = 215日
3.出勤率の計算(215日÷235日)×100≈91.49%
この例の場合、出勤率は約91.49%となり、8割を満たしているため、次回の年休が付与されます。なお、この場合、欠勤が57日を超えれば8割を切ります。
計算上の留意点
1.労働時間短縮の場合:育児・介護休業法に基づく短時間勤務制度を利用している場合でも、年休の付与日数は所定労働時間に比例して減額されることはありません。出勤率の計算も同様に、短縮勤務を考慮せずに行われます。
2.基準日の統一:多くの企業では、従業員ごとに異なる入社日を基準日とすると管理が煩雑になるため、基準日を全従業員で統一する「斉一的取扱い」を採用しています。その場合も、最初の年休付与時のみ、入社日から6ヶ月間の出勤率を算定し、その後は統一された基準日から1年間の出勤率を算定します。
まとめ
年次有給休暇の出勤率の計算は、単に休んだ日数だけを見るのではなく、「全労働日」と「出勤した日」のそれぞれに、法的に出勤とみなされる期間や事由を正確に含めることが重要です。特に、育児・介護休業、産前産後休業、業務上の負傷・疾病による休業期間などは、労働者の権利保護の観点から出勤扱いとなるため、計算から除外しないよう注意が必要です。
正確な計算と適切な年休付与は、労働者の権利を守り、企業のコンプライアンスを確保するために不可欠です。疑問点があれば、労働基準監督署や社会保険労務士などの専門家に相談することをお勧めします。
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