Last Updated on 2025年7月22日 by 勝
🏁 イントロ:Q&Aの狙い
政府が連名で出した本資料の目的は明確です:
テレワークやデジタル化時代に「押印」という慣行を見直すべきというメッセージです。
法的には、契約が法的に有効となるために押印が必要となることは基本的にありません。押印がなくとも契約は有効に成立します。
「押印についてのQ&A」は、このことを前提としていて、必ずしも押印がなくとも法律上の問題はそんなにありませんということを言っているのです。
「押印についてのQ&A」は下のリンク(法務省ホームページ)で見ることができます。
以下で、「問」ごとに解説します。
🔍 Q1:契約書に押印がなくても契約は有効?
問1.契約書に押印をしなくても、法律違反にならないか。
ポイント
回答では、契約が法的に有効となるために押印が必要となることは基本的にない、と書いています。
「特段の定めがある場合を除き」というのは、契約書を公正証書で作らなければならないなどを指します。
⚖️ Q2:裁判で押印の有無はどう扱われる?
問2.押印に関する民事訴訟法のルールは、どのようなものか。
ポイント
回答を要約すれば、民事裁判では、文書に押印があるとその文書を本人が作った証明の負担が軽減されることになるが、その文書が証拠としてどれだけ役に立つのかは、押印の有無とは別の話だというようなことが書いています。
実務では
押印があるだけでは心元ない → 打ち合わせ議事録やメール記録をセット保存するべき。押印がない場合は、さらに関係記録の保存が重要になる。
🧩 Q3〜Q5:「押印があれば完全」ではない?
問の本文は割愛します。Q2の部分をさらに深堀りして解説しています。
📌 Q6:押印に代わる手段は?
問6.文書の成立の真正を証明する手段を確保するために、どの
ようなものが考えられるか。
ポイント
このQ6がこのQ&Aのキーだと思われるので回答の全文を引用します。
① 継続的な取引関係がある場合
▶取引先とのメールのメールアドレス・本文及び日時等、送受信記録の保存(請求書、納品書、検収書、領収書、確認書等は、このような方法の保存のみでも、文書の成立の真正が認められる重要な一事情になり得ると考えられる。)
② 新規に取引関係に入る場合
▶契約締結前段階での本人確認情報(氏名・住所等及びその根拠資料としての運転免許証など)の記録・保存
▶本人確認情報の入手過程(郵送受付やメールでのPDF 送付)の記録・保存
▶文書や契約の成立過程(メールやSNS上のやり取り)の保存
③ 電子署名や電子認証サービスの活用(利用時のログインID・日時や認証結果などを記録・保存できるサービスを含む。)
・ 上記①、②については、文書の成立の真正が争われた場合であっても、例えば下記の方法により、その立証が更に容易になり得ると考えられる。また、こういった方法は技術進歩により更に多様化していくことが想定される。
(a) メールにより契約を締結することを事前に合意した場合の当該合意の保存
(b) PDF にパスワードを設定
(c) (b)のPDF をメールで送付する際、パスワードを携帯電話等の別経路で伝達
(d) 複数者宛のメール送信(担当者に加え、法務担当部長や取締役等の決裁権者を宛先に含める等)
(e) PDF を含む送信メール及びその送受信記録の長期保存
実務では
主なものを要約すれば次のようになります。
手段 | 内容 |
---|---|
メールの送信履歴 | PDF契約書をメール送信 → 日時と送付元・宛先が記録 |
電子署名サービス | DocuSign, クラウドサイン等で「誰が」「いつ」OKしたか記録 |
チャット/SNS記録 | Slack等で「契約に〇〇さん同意済」とメッセージ保存 |
契約書に自署(手書き署名) | 専門印の代わりに本人の署名を記入してもOK |
実務的には、単に押印を廃止するのではなく、電子署名を導入するのが安全安心な運営だと思われます。電子署名は、印影の役割を代替し、法的にも有効な手段として認められています。電子署名を導入することで、契約業務の効率化やコスト削減、テレワークの推進など、多くのメリットが得られます。
✅ まとめ:実務に活かすには?
1.契約成立=当事者の意思合致があればOK
2.押印は“形式的には証拠力あり”だが万能ではない
3.メール・ログ・電子署名などで真正性を担保すれば、押印不要でも安全
4.社内ルールとして「ケースに応じた証拠手段」を定め、統一運用が安心
5.電子署名を導入すれば更に安全安心
会社事務入門>庶務の仕事>社内文書作成の基礎知識>このページ