有給休暇の時季変更権を行使する前に知っておくべきこと

Last Updated on 2021年4月19日 by

時季変更権とは

有給休暇の時季変更権とは、労働者から有給休暇を取得する旨の申し出があったときに、その取得時期を変更させ、別の日に取得させる使用者の権利のことです。

権利ではありますが強い権利ではありません。それは、時季変更権よりも、労働者の有給休暇取得権が大きいからです。

時季変更権行使の条件

労働基準法に時季変更権が認められる条件についての定めがあります。

「労働基準法第39条第5項 請求された時季に有給休暇を与えることが事業の正常な運営を妨げる場合においては、他の時季にこれを与えることができる。」

「事業の正常な運営を妨げる場合」とはどのような状況でしょうか。

例えば、

その労働者の仕事を代われるものがいない状況で急に長期間の有給休暇を取得を申し出た。あるいは、その職場の機能が欠けてしまう人数の労働者が同時に有給休暇の取得を申し出た。

というケースは「事業の正常な運営を妨げる場合」に相当すると思われます。

しかし、そうであっても無条件で時季変更権を行使できるわけではありません。

以下の要素を加味しなければなりません。

事業所の規模

規模の大きい事業所であれば、他の部門から応援要員を出すなどして乗り切れると考えられます。多少の不便はあったとしても、努力すれば乗り切れると判断されるような職場であれば、時季変更権を行使することは難しいでしょう。

職務の性質

当該労働者の担当している職務が特殊で、代わって仕事をすることができる労働者が全くいないのであれば、その状況で有給休暇を取得されれば「正常な運営を妨げる場合」に該当すると考えられます。

この場合でも、まずは、本当に代替できないのか、多少不自由であっても乗り切れるのではないかという観点から慎重に検討しなければなりません。

さらに、常態的にその人を欠かすことができない状態になっているのであれば、その責任は、そうした状況を改善していない使用者にあります。使用者の怠慢でそのような状態になっていると認められる場合は、時季変更権の行使が不当だとされる可能性が高まります。

繁忙期

通常であれば問題なく有給休暇を取ってもよい職場でも、一定の期間だけは困るという場合があると思われます。繁忙期というのも時季変更権行使の理由になります。

この場合でも、単に「忙しいから困る」というだけでは、時季変更権の行使は認められません。

他部門からの応援、外注、アルバイトの雇用などの対策を検討し、多少不自由であっても乗り切れるのではないかと判断できる場合は、時季変更権を行使できないでしょう。

日ごろからの対策

時季変更権の行使が簡単には認められない実情になっているのは、「今は忙しい」「人手不足だ」などの理由で時季変更権が認められるのであれば、実質的に有給休暇を自由に取れない状態が常態化してしまうからです。

有給休暇取得が労働者の権利であることを日ごろから認識して、どのような職種においても代替可能な状態にしておく、あるいは繁忙期においても有給休暇をとる者が少しくらいいても対応できる体制を作るのが使用者の責任です。

結論として、

時季変更権は労働基準法に定めがある使用者の権利ですから、必要があれば行使することができます。

しかし、

それは、考えられるあらゆる努力をしても、それでもその時季に有給休暇を取らせることはできないという状態のときだと考えるべきです。

そのような状況にならないよう、日ごろから適正な人員を確保し、従業員研修やマニュアルを充実させて人員の調整ができるようにしておくことも必要です。

時季変更権を行使できない場合

次のようなときは「事業の正常な運営を妨げる場合」であったとしても時季変更権を行使できません。

□ 有給休暇が時効で消滅する前に有給休暇を取得する場合
□ 産後休業・育児休業の期間と重なる場合
□ 退職予定日までに日数が少なく、時季変更する日が残っていない場合
□ 計画的年休付与により取得時季を指定している場合

ほとんどの場合、有給休暇の消化を日頃から促進させていれば防げるはずです。

時季変更権行使が不当であれば

時季変更権を行使し、その結果、その行使が不当であると認められた場合には、有給休暇取得の妨害として労働基準法違反に問われる可能性があります。

また、上司のパワハラという問題になる可能性があります。

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