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労働基準法

労働基準監督署の調査や是正勧告への対応

Last Updated on 2023年2月26日 by

事業場に対する調査

労働基準監督官は、労働基準法などの実施状況を調べるために、事業場を訪問し調査する権限があります。

労働基準法第101条 労働基準監督官は、事業場、寄宿舎その他の附属建設物に臨検し、帳簿及び書類の提出を求め、又は使用者若しくは労働者に対して尋問を行うことができる。
第104条の2 労働基準監督官は、この法律を施行するため必要があると認めたときは、使用者又は労働者に対して、必要な事項を報告させ、又は出頭を命ずることができる。

条文に「臨検し」と書いてあるので、この調査を臨検ということがあります。臨検(りんけん)とは、その場所に出向いてとりしらべることです。

また、104条の2にあるように、臨検せずに調査が行われることがあります。

その場合は、労働基準監督署から「出頭通知書」という書類が送られてきます。事業場の責任者が、指定の日時に、指定の書類を持参して労働基準監督署へ出頭しなければなりません。

調査の種類

こうした調査は、一般に、労災事故が発生しやすい建設業・運送業・製造業または過去に大きな労災事故を起こした事業所に対して一定の計画に基づいて行う行われています。

年度ごとの重点事項に基づく調査も行われます。

重大な労働災害が発生したときや、その事業場に勤務する労働者から申告があったときには臨時に実施されます。

主な調査事項

一般的には、次のような事項を中心に調査が行われます。

法定帳簿の確認
法定帳簿作成の注意点

労働時間管理の不備や残業代未払い等の確認
労働時間管理の不備や残業代未払いについての是正勧告

就業規則の取扱いを確認
就業規則についての是正勧告

従業員雇入時の労働条件明示義務履行の確認
労働条件の明示についての是正勧告

安全衛生管理状況の確認
安全衛生管理についての是正勧告

指摘されることが多い事項には、次のようなものがあります。

□ 就業規則の未作成、労働基準監督署への未提出
□ 残業代の不払い(いわゆるサービス残業)
□ 36協定の未届出、法定労働時間、変形労働時間制に関する違反
□ 雇入時における労働条件明示違反
□ 健康診断の未実施、結果報告書の未提出

臨検の進み方

労働基準監督署の臨検は、労働基準監督官が行います。事前の予告があることもあるし、予告なしに来ることもあります。通常は2人、または1人の場合もあります。

労働基準監督官が事業場に来ると、まず、身分証明書を提示して自身の身分を明らかにして、責任者への面会を求めます。

このとき、責任者がいなくても、原則として調査を拒むことはできません。どうしても対応が困難である場合は、その旨を説明し、その理由が真にやむを得ないと認められるものであれば日程の変更に応じてもらえることがあります。

そして、次のように進みます。

□ 法定帳簿、就業規則のサンプルと逐条解説、安全管理体制がわかる書類、労働時間を把握するための書類などの点検
□ 事業主・人事労務担当者への質問
□ 会社内の立ち入り調査及び従業員への質問

日頃からの準備

上述したように、労働基準監督官は、書類の提出を求めて、内容を点検します。以下に列記した書類は、一度の調査ですべて求められるという訳ではありませんが、日頃からよく整備し、要望に応じてすぐに取り出せるようにしておきましょう。

□ 組織図(事業場の組織図と会社全体の組織図)
□ 労働者名簿
□ 賃金台帳
□ タイムカード等の勤務時間が確認できる書類
□ 従業員の年次有給休暇の取得状況に関する管理簿
□ 就業規則などの会社規程
□ 従業員別の時間外労働・休日労働の実績が分かる書類
□ 36協定届
□ 変形労働時間制などの定めをしている場合の労使協定
□ 変形労働時間制を実施しているときはそのシフト表
□ 従業員に交付した労働条件通知書・雇用契約書
□ 健康診断の実施結果などの書類(健康診断個人票など)
□ 安全管理者、衛生管理者などの選任状況
□ 産業医の選任状況について書類
□ 安全委員会、衛生委員会の議事録などの書類

調査があったときの注意事項

労働基準監督官の調査等は、法律に基づいて行われているので、協力しなければなりません。特に次のような行為は厳禁です。罰則が適用されることがあります。

□ 書類等を隠す
□ 書類等を改ざんする
□ 虚偽を述べる
□ 従業員に虚偽を述べるように強要する

違反が見つかったときは

調査の結果、法令違反などの問題が見つかったときは、違反内容等を記載した「是正勧告書」という書面を交付され、指定された期日までに是正するよう勧告されることとなります。

是正勧告は行政指導ですが、その内容は労働基準法違反の指摘ですから、本来であれば逮捕や送検になっても仕方のない案件です。深刻にとらえて対応するようにしましょう。

是正勧告書では十分でないほど悪質とみなされたときや是正勧告書を無視し続けた場合は送検されることもあります。

是正勧告を受けた場合は、同時に是正報告書の期限を指定され、期限内に是正した結果の報告を行わなければなりません。

この期限は厳守しなければなりませんが、期限までにどうしても報告できない場合は、期限前に電話等で理由を説明すると再度期限を切って延長されることもあります。

また、「指導票」というものを交付されることもあります。指導票は、法令違反とは言い切れないが、改善が必要と判断された項目があるときに交付されるものです。是正勧告書より拘束力がないからと油断せずに、指摘に沿って改善するようにし、報告を求められたときは期日までに提出してください。

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