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退職の事務

退職予定者が引継ぎをしない

Last Updated on 2023年3月5日 by

引継ぎしない人への対応

人はいろいろです。退職が決まると、もう辞めるんだからほどほどでいいと思う人もいれば、あと少しだからきちんとやろうと思う人もいます。ほどほどまでは許容範囲ですが、一線を超えれば、辞める直前でも懲戒処分できる可能性があります。

懲戒処分の可能性

基本的には、不正や不祥事があったら、時期は関係ありません。退職直前であっても懲戒処分をすることができます。退職直前の懲戒処分は、隠していた不祥事が発覚したケースが多いのですが、なかには業務妨害のような引継ぎ拒否のケースもあります。

故意に引き継ぎをしない、取引上の資料を隠蔽する、引き継ぎでウソを教えるなどの業務妨害のような行為があれば、懲戒処分が有効になる可能性があります。また、発生した損害について損害賠償請求をすることも選択肢に入ってきます。

ただし、損害が実際に発生していないのに、あるいは軽微な損害しか発生していないのに懲戒処分を科したり多額の損害賠償を提起すればそれ自体が不法行為となることもあります。本当に懲戒処分が必要なのか、本当に請求しなけれならない損害が生じたのか、感情に流されずに事実に基づいて決定しなければなりません。

関連記事:懲戒処分をするときの注意点

有給休暇の消化

引継ぎを満足にしないうちに長期の有給休暇をとり出社しなくなった。分からないことがでてきたので電話したのだが電話に出てもくれない。こんなときはどうするべきでしょうか。

有給休暇の取得は正当な権利ですから阻むことはできません。

退職直前の有給休暇取得が、その従業員に会社が困っても知ったことかという多少の悪意があったとしても、正当な権利の行使に正当性があります。

そもそも、退職直前に長期の有給休暇を取るということは、満足に有給休暇を使わせていなかったことを意味しますから、直前にまとめて使われたとしても文句は言えません。

退職までは従業員ですから、引き継ぎをきちんとするようにという業務命令を出すことができます。しかし、休まずにやれということは言えません。従業員が普通の仕事の範囲で引継ぎ作業をしてくれたら満足せざるを得ません。

有給休暇に対して会社には時季変更権がありますが、時季を変更させる日が残っていないのであればどうにもなりません。どうしてもその人でないとできない仕事がある場合は、良い条件を提示して退社後にアルバイト出社してもらう交渉をするしかないでしょう。

引継ぎの基本

そもそも引継ぎがうまく行かないのは、本人だけに責任があるわけではありません。

引継ぎで困るというのは、逆に言えば、会社や上司がその従業員の業務内容を承知していないということです。会社がやるべきことをやっていなかったのですから、会社の管理責任も問われます。

引き継ぎを受けなければまったく分からないという状況を作らないことが大事です。

日頃からの対策としては、次の通りです。

1.就業規則に退職時の引継ぎ義務について記載する。
就業規則規定例:退職|就業規則

2.従業員の一人一人の仕事はすべて、業務マニュアルとして整備する。マニュアルを見れば誰でも仕事を引き継げるレベルを目指す。
3.仕事の進捗状況を把握するシステムをつくる。システム的なものが無くても、作業報告書、営業報告書などは書式を定めて、進捗状況が分かるようにしておく。日報などの報告システムがない会社は論外です。
4.仕事上で作成する企画書、見積書その他の書類は全てその日のうちにファイリングして所定の場所に置く。

退職が決まってから引き継ぎ書の作成をさせることがありますが、普段から上記に基づく仕事をやっていれば引き継ぎ書などA4一枚で済むものです。

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