Last Updated on 2025年8月18日 by 勝
制度の趣旨
ストレスチェックの結果、高ストレス者と判定された労働者が申し出た場合、事業者は医師による面接指導を受けさせる義務があります。
目的は、労働者の心身の健康状態を把握し、必要な就業上の措置につなげることです。
ストレスチェック後の面接指導を行うのは医師のみであり、ストレスチェックの実施者になれる保健師や精神保健福祉士であっても、面接指導を行うことはできません。
この場合の医師というのは、産業医が想定されていますが、産業に限られません。
指導とは誰に対するものか
面接指導の中心は労働者本人に対する医学的な助言・指導です。例としては、生活習慣の見直し、睡眠改善、受診勧奨などです。
その上で、医師は事業者に対して、労働時間の調整、配置転換、一時休養の必要性など、就業上の措置の意見を提出します。
面接指導の流れ
① 申出
面接指導の対象者となるのは高ストレス者と判断されるなど医師の面接指導が必要とされた従業員のうち、本人から面接指導を申し出た人です。
面接指導の申し出は結果の通知から1か月以内に、面接指導の実施は申し出から1か月以内に行う必要があります。
② 面接指導の実施
産業医や精神科医等が本人と面接します。
内容は、ストレスの原因(職場環境・人間関係・業務量など)、睡眠・食欲・気分の変化、過重労働の有無、心身の健康状態などについて、本人の希望や不安を確認します。
医師による面接指導は、対面での面接が原則ですが、実施者が表情やしぐさなどを確認できるといった一定の要件を満たせば、テレビ電話などの通信機器を用いた面接指導を行うことができます。これは長時間労働者への医師による面接指導と同様の扱いです。
③ 医師の助言・指導(本人向け)
今後の生活や受診に関するアドバイスをします。必要に応じて専門医療機関の受診を勧めることもあります。
④ 医師の意見書作成(事業者向け)
本人の同意を前提に、事業者へ「就業上の措置に関する意見」を提出します。これには、労働時間の制限、配置変更の検討、休養の必要性などが含まれます。
医師による意見は、面接指導終了後1か月以内に聴取しなくてはなりません。
⑤ 事業者の対応
医師の意見を踏まえ、就業上の措置を講じる義務があります。ただし、本人のプライバシー保護に十分配慮しなければなりません。
産業医以外の医師が面接指導した場合
法令上の位置づけ
ストレスチェック制度に関する医師の面接指導は、労働安全衛生法に規定されています。
ここでは「医師による面接指導」とだけ定められており、必ずしも産業医に限られていません。つまり、他の医師でも実施可能です。
ただし、労働安全衛生法で、産業医は事業者に対して労働者の健康管理について意見を述べる役割を担っています。したがって、実務上は以下のように整理されます。
実務上の扱い
面接指導を行った医師は、事業者に「就業上の措置に関する意見書」を提出します。
その内容を踏まえて事業者は就業上の措置を検討しますが、その際に産業医の職務と権限を考慮して、事業者から産業医に情報を共有する必要があります。
その他実務上のポイント
面接指導は医師と労働者との信頼関係が前提で、守秘義務が重要になります。したがって、事業者に伝えるのは「必要最小限の意見」であり、診断名など詳細は伝えられないことがあります。
面談の記録は、実施後5年間保存することが義務付けられています。
面接指導を申し出た(あるいは申し出ない)こと、面接指導の結果などを理由として、その労働者に対して不利益取り扱いをしてはいけません。
関連記事:産業医の職務と権限
会社事務入門>ストレスチェックのあらまし>このページ