Last Updated on 2025年8月21日 by 勝
出張中に近くの観光地に行ったり温泉に入ったりしている社員がいるという報告を受けました。その社員の場合は、出張の用務はきちんとこなしたうえで隙間時間を利用したようですが、黙認してよいでしょうか、黙認した場合、考えられる問題点はありますか?
出張中に観光や温泉に行くことを黙認した場合、いくつかの問題があります。
黙認した場合の主な問題点
- 労働時間管理との整合性
出張中の時間は基本的に勤務時間として扱い、賃金の対象になる労働時間にあたります。観光や温泉に行っている間も、特に申告がなければ「勤務中」、つまり労働時間として取り扱っていることになります。労働時間と実態の乖離が生じます。後に労務トラブルになりうる点です。 - 旅費・交通費の扱い
観光目的の移動や滞在の費用を会社に負担させた場合、公私混同と見られる恐れがあります。内部監査や経理上の不正利用と評価される可能性もあります。 - 公平性・規律の問題
他の社員に伝わったとき、「あの人は出張で遊んでいる」との不公平感が広がり、管理職が黙認しているとわかれば、「会社のルールはあっても実際は緩い」というメッセージになります。職場規律やモラルの低下につながりかねません。 - 労災・安全管理のリスク
出張中であるにもかかわらず、観光や温泉で事故や怪我があった場合、労災か私傷病かが曖昧になり、トラブルになる可能性があります。黙認していたのであれば「管理職は知っていたのに止めなかった」と責任追及を受ける恐れもあります。
関連記事:労災保険の認定と不認定の例
実務的な対応の考え方
出張に「隙間時間」があるのは事実で、それを出張目的外に利用することを完全に排除するのは非現実的です。
- 成果重視
出張の目的を果たしており、会社経費に影響がなく、かつ労働時間管理上も問題がなければ、ある程度は容認できる余地があります。 - ルール整備
公私混同をしないことは必ず守らせなければなりません。出張の目的地以外に立ち寄るのであれば、出張を中断した時間の交通費等は自己負担、出張中断中の私的行動時に発生した事故等は労災適用にならない、といったルールを明確にします。
結論としては、出張の目的を完了させたあとであれば、隙間時間を利用して目的外の行動をするのは直ちに問題とはいえませんが、「労働時間・経費・公平性と規律・安全」の観点からみると単に黙認してよいとは言えません。
ルール化の例
旅費規程に載せるかどうかは会社それぞれの判断ですが、例えば、人事からの通達の形で周知させる例を示します。
出張中の空き時間について
社員各位
人事部長
日頃より業務にご尽力いただきありがとうございます。
出張の際には、移動や業務の合間に空き時間が生じることがあります。その時間をどのように過ごすかは個々人に委ねられる部分ではありますが、以下の点についてご留意ください。
- 出張の目的である業務に支障をきたさないこと
- 私的な活動に伴う費用は自己負担とすること
- 私的な活動中の事故やトラブルは自己責任となること
出張中に隙間時間が生じたときに、現地での時間を有意義に活用すること自体を制限するものではありません。公私の区別を意識し、節度ある行動をお願いいたします。
会社事務入門>事務処理のいろいろと事務処理の効率化>出張について>このページ