出張とは?手当の基準、労働時間、規程の作り方を解説

会社の運営

出張とは

会社の業務における「出張(しゅっちょう)」とは、従業員が通常の勤務場所(オフィスなど)を一時的に離れ、会社の業務命令に基づいて他の場所へ赴き、業務を行うことを指します。

主なポイントは以下の通りです。

目的と場所

  • 業務遂行のため: 顧客との商談、会議、市場調査、研修、イベント参加など、業務上の必要性から行われます。
  • 通常の勤務地以外: 普段働いている場所(本社や支店など)から、比較的遠方に移動する場合を指すことが一般的です。国内だけでなく、海外出張もあります。

期間と種類

  • 一時的: 異動や転勤とは異なり、短期間で行われます。
  • 日帰り出張: 当日中に帰宅・帰社が可能な場合。
  • 宿泊出張: 1泊以上を伴う場合。

※「出張」と「社用外出(近隣への訪問など)」の具体的な線引き(距離や時間)は、企業ごとに定められている「出張旅費規程」などの社内ルールに基づきます。

費用と手当

出張に伴い発生する費用については、以下の形で会社が負担することが一般的です。

  • 出張経費(実費清算):
    • 移動にかかる費用(交通費:新幹線、飛行機、タクシー代など)。
    • 宿泊にかかる費用(宿泊費)。
    • これらは通常、従業員が一時的に立て替え、後で領収書などに基づき実費が精算されます。
  • 出張手当(日当):
    • 通常の勤務地と異なる環境での業務による精神的・肉体的疲労への慰労や、出張先でかかる食費や雑費などの補填を目的として、定額で支給される手当です。
    • これは経費の実費清算とは異なり、企業が任意で定めるもので、金額も企業ごとに異なります。

担当者の業務

出張の手配

出張者本人が出張手配を行う企業もありますが、総務課等が手配実務やサポートを行うことも多くあります。

  • 交通機関・宿泊施設の手配:
    • 規定に基づき、飛行機、新幹線、ホテルなどの予約・チケット手配を代行またはサポートします。
    • 法人契約の旅行会社や出張手配システムの選定・導入・運用管理を行います。
  • 海外出張のサポート:
    • パスポートやビザの取得サポート。
    • 海外旅行保険の手配。
    • 現地の治安や危険情報などの確認(危機管理)。
  • 仮払い・精算の準備: 出張経費の仮払いや、帰社後の経費精算に必要な書類やシステム運用を準備します。

出張申請・承認の流れ

以下に、一般的な出張申請・承認フローの例を示します。

1. 事前申請と承認(出発前)

出張の必要性と費用が、会社の規定に合致しているかを確認する段階です。

ステップ担当者業務内容ポイントと総務の関与
1. 申請出張者「出張申請書」を作成し提出する。 (デジタルシステムまたは紙)【ポイント】 目的、訪問先、日程、概算費用、利用予定の交通機関・宿泊先を明確に記載させる。
2. 一次承認直属の上長申請内容(業務の必要性、緊急性、日程)をチェックし、承認する。【ポイント】 業務上の妥当性を判断する。
3. 費用確認/二次承認総務/経理担当者概算費用が出張旅費規程(宿泊費上限、座席クラスなど)に適合しているか確認し、承認する。【総務業務】 規定違反がないかをチェックするガバナンス強化の要。
4. 手配出張者、または総務担当者承認された内容に基づき、航空券、新幹線、宿泊施設などを手配する。【総務業務】 法人契約の旅行会社やオンライン手配ツールの利用方法を指導・提供する。
5. 仮払い(必要な場合)経理担当者多額の費用を伴う場合、出張者へ仮払金を支給する。【ポイント】 仮払い申請もこの段階で行う。

2. 事後精算と報告(帰社後)

出張で実際に発生した費用を清算し、業務結果を会社に報告する段階です。

ステップ担当者業務内容ポイントと総務の関与
6. 出張報告と精算出張者出張報告書経費精算書を作成・提出する。 領収書や利用明細を添付する。【ポイント】 実際の費用と事前申請の概算との差額を明確にする。
7. 精算承認直属の上長/経理担当者報告内容(業務成果、費用の妥当性)を確認し、最終承認する。【経理/総務連携】 領収書と精算内容が規定に沿っているかを最終確認する。
8. 旅費支給経理担当者立替払いした費用(実費)と**出張手当(日当)**を出張者に支給する。【ポイント】 迅速な精算処理で従業員の負担を軽減する。

総務部門が留意すべきポイント

  1. システム化の推進: 紙やメールによる申請は煩雑でミスの原因になりやすいため、出張管理システム(BTMツール)や経費精算システムを導入し、申請・承認・手配・精算を一元管理することで効率化を図ります。
  2. 規程との連携: 申請書やシステムは、必ず出張旅費規程と連動させ、「規定上限を超える予約はできない」などの設定をすることで、規定違反を未然に防ぎ、ガバナンスを強化します。
  3. 危機管理体制の整備: 出張申請の情報(日程・滞在先)は、緊急時の安否確認に必要な情報となるため、総務が即座に確認できる体制を整えておく必要があります。

移動時間について

目的地に着くまでの移動時間、目的地から帰るための移動時間が労働時間であるかどうか(賃金の対象になるかどうか)問題になることあります。原則として労働時間にカウントしなければなりませんが、夜間や休日の移動は労働時間にならない場合があります。

隙間時間の利用

旅費規程

出張の都度支払額を決めるのは現実的ではありません。また、支給基準が明確でなければ、同じケースでも異なる基準で支払いが行われることが起こり、従業員の間に不満が生じることになります。

また、旅費規程を定めて、その定めに基づいて支払う場合は、会社は経費として処理することができ、受け取る側にも所得税がかかりません。もし、規程がなければ、給与や報酬として所得税をかけなければなりません。

ただし、旅費規程によるものであっても、役員に対して過大に有利になっている、あるいは、一般従業員に支給する場合であっても、実際の費用に比べて高すぎるなどの場合は税務調査の際に否認されることがあります。

なお、税務調査の際は、実際にその出張が行われたかどうか、業務上の必要があったのかを調べるために、出張の申請書や報告書、その他の資料を求められることがあります。出張関係の資料はいつでも取り出せるようにまとめて保管しておきましょう。