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ハラスメント

部下を二次会に誘ったらパワハラ扱いされてしまいました。どうすればよかったのでしょうか?

Last Updated on 2025年8月22日 by

小さな商社の課長をやっています。取引先との接待が終わった帰りに、ねぎらいの気持ちで部下を誘ってもう1軒飲みに行きました。しばらくしてから部長に呼ばれて、「部下に酒の無理強いをするものではない、下手をすればパワハラだ」と注意されました。私としては無理強いしたつもりはなく、部下も喜んで飲んでいたように見えたのですが、これではもう誘うことはできません。そういう時代だと思って大人しくしているしかないのでしょうか。アドバイスをお願いします。

接待後の二次会、お疲れ様でした。部下の方をねぎらうお気持ちはとても素晴らしいと思います。しかし、部長さんから注意を受けてしまったとのこと、心中お察しいたします。

パワハラとは

まず、パワーハラスメントは一般的に以下の3つの要素で定義されます。

  • 優越的な関係に基づいて(上司と部下の関係など)
  • 業務の適正な範囲を超えて
  • 身体的・精神的な苦痛を与えること、または就業環境を害すること

今回のケースをこれに照らし合わせて考えてみましょう。

1. 優越的な関係

課長であるあなたと部下という関係は、まさにこの「優越的な関係」に該当します。

2. 業務の適正な範囲

二次会が担当業務の適正な範囲に含まれるかですが、気をつかう接待が終わって、部下を労おうとしたのであれば、業務の適正な範囲と考えてもよいでしょう。しかし、部下が「やれやれこれで帰れる」という気持ちになっていたかもしれません。さらに負担をかけることになったのであれば、業務の適正な範囲とは言えなくなるかもしれません。

また、部下が部長に訴えたのであれば、「身体的・精神的な苦痛が」あったと思われます。

パワハラかどうか

今回のご相談内容は、パワハラの定義にあてはめれば、パワハラに近いようにみえます。しかし、無理に手を引いて行ったわけではなく、もう飲めない人に無理強いしたようでもなく、そのときは楽しく飲んでいたようなので、パワハラとまではいかないように思われます。

ただし、無理強いをしたつもりがなくても、相手が「そう感じてしまった」のであれば、ハラスメントと見なされる可能性があるので、今回はパワハラに近かったかもしれないと考えましょう。

部長も「下手をすればパワハラだ」と仰っています。これは「あなたがすでにパワハラをした」という意味ではなく、「無理強い」の可能性があると言っているだけです。

上司からの誘いを断りにくいと感じる部下も少なくありません。たとえ本人が「喜んで飲んでいた」ように見えても、それは本心ではないかもしれません。このことを理解して、どのように立ち回るのが良いか考えてみましょう。

今後の対応

誘い方を工夫する

まず、部下を誘う際には「行きたい人が行く」という選択肢を明確にするとよいでしょう。

例えば、次のように声をかけてみてはいかがでしょうか。

  • 「もし良かったら、この後もう一軒どうかな? 疲れてるだろうから、無理はしなくていいからね。もちろん、まっすぐ帰っても大丈夫だよ」
  • 「二次会に行きたい人いる? 私はもうちょっと飲んで帰ろうと思うんだけど、よかったら付き合ってくれる?」

このように、相手にプレッシャーを与えない言葉を選ぶことで、部下は「帰ります」と言いやすくなります。

このことについては、誘ったときに言うだけでなく、日頃から、誘いを断ってもマイナス評価にならないと伝えておくことも大事です。

時間が長くなったり、つい飲みすぎたりして翌日に響けば、「喜んでいた」本人も、後になって後悔することもあります。

誘いに乗ってくれたとしても、一人ひとりが自分のペースで注文できるおちついた店を選ぶなどの配慮をしましょう。

二次会の時間は、1時間程度で終わるようにしましょう。また、昔は、もっと飲みなさいと勧めるのが常識だった時代もありますが、今は通用しません。上司は部下が飲みすぎないように注意を払う必要があります。

日頃からコミュニケーションを増やす

飲み会はコミュニケーションの一つの手段ですが、それだけではありません。

日々の業務の中で、部下との信頼関係を築くことも大切です。

  • 機会があれば雑談をする(長くなったり話題が説教臭くならないように注意)
  • 仕事の合間にコーヒーを誘って奢る(同上)

こうした日常的な交流を通じて、部下の個性や考え方を深く理解することで、お互いに気持ちの良い関係を築くことができます。

まとめとして言えば、「そういう時代だから仕方ない」と諦めてしまうのは、少しもったいないかもしれません。

部長さんが指摘されたのは「無理強い」の可能性があるという点だけで、「誘うこと自体」を否定されたわけではありません。

時代に合わせた新しい付き合い方を模索し、部下との信頼関係を築いていけば、より良いチームを作ることができるはずです。


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