定年とは?定年の意味、月末定年と年度末定年の違い

Last Updated on 2025年9月21日 by

定年制度の始まり

日本の定年制度の起源は、明治時代にまで遡ります。

制度の始まり

日本で最も古い定年制度の記録は、1887年(明治20年)に制定された東京砲兵工廠の「職工規定」に見られます。この規定では、職工の定年が55歳と定められていました。

その後の変遷

この制度は徐々に民間企業にも広まっていきましたが、多くの企業では終身雇用が一般的だったため、定年まで勤め上げる労働者は多くありませんでした。

  • 戦後:高度経済成長期に、年功序列と終身雇用のシステムが確立されると、組織の新陳代謝を促す目的で定年制が普及しました。この時期の定年は55歳が一般的でした。
  • 1980年代以降:少子高齢化が進み、労働力不足が懸念されるようになると、定年延長の動きが加速します。
    • 1986年の「高年齢者雇用安定法」改正により、定年を60歳とすることが企業の努力義務となりました。
    • 1994年の法改正で、60歳未満の定年が禁止され、60歳定年が定着しました。
    • 2013年には、希望すれば65歳までの雇用確保が義務化されました。
    • 2021年の法改正では、70歳までの就業機会確保が努力義務として加えられています。

定年制度は、日本の社会や経済の変化、特に平均寿命の伸長と少子高齢化に合わせて、その年齢や形態が変化してきた歴史を持っています。

定年という用語について

「定年」という言葉は、明治時代に日本の官公庁や企業が、職員や職工が一定の年齢に達した際に退職させる制度を導入した際につくられた和製漢語と考えられています。

「定年」の語源

「定年」という言葉は、「定められた年齢」を意味します。これは、個人の意思に関わらず、あらかじめ規則として定められた年齢に達すると、雇用契約が終了することから来ています。

職工規定との関連

「定年」という言葉が広まった背景には、日本の近代化に伴う官公庁や民間企業での組織運営の変化があります。特に、日本の定年制度の始まりとされる東京砲兵工廠の「職工規定」(1887年)では、職工が55歳に達すると退職させると定められており、このような具体的な規則が「定年」という言葉の概念を社会に定着させました。

この時期、西欧の制度を多く取り入れていた日本ですが、「定年」という言葉自体は、英語の”retirement age”を直訳したものではなく、日本の社会や組織の仕組みに合わせて独自に生み出された言葉と言えます。これは、終身雇用や年功序列といった日本の雇用慣行と深く結びついて発展してきた制度だからです。

定年の日は誕生日の月末か年度末か

定年の日を「誕生日の月末」または「年度末」に設定する場合、それぞれにメリット・デメリットがあります。これは、会社側と従業員側の双方に影響を与えるため、それぞれの視点から見ていきましょう。

1. 誕生日の月末に定年とする場合

メリット

  • 公平性・納得感が高い(従業員側): 従業員一人ひとりの誕生日を基準とするため、入社日や勤続年数に関わらず、全員が同じ年齢で定年を迎えるという公平性が保たれ、納得感を得やすいです。
  • 手続きが分散される(会社側): 定年退職者が毎月発生するため、人事・総務部門の退職手続き(社会保険、雇用保険など)が年間を通じて分散されます。これにより、特定の時期に業務が集中するのを避けることができます。

デメリット

  • 給与計算・手続きの煩雑化(会社側): 毎月退職者が出るため、給与計算や退職手続きが煩雑になる可能性があります。特に、従業員数が多い企業では管理が大変になります。
  • 人材計画の立てにくさ(会社側): 定年退職のタイミングが個々で異なるため、後任者の配置や技術・ノウハウの引き継ぎといった人材計画を立てにくくなることがあります。

2. 年度末に定年とする場合

メリット

  • 手続きの効率化・一括管理(会社側): 定年退職者が年度末に集中するため、人事・総務部門は一括して退職手続きを進めることができ、業務の効率化が図れます。
  • 組織の新陳代謝が明確になる(会社側): 多くの従業員が同時に退職することで、組織全体の世代交代や人員配置を計画的に進めることができます。
  • 引継ぎ・後任者計画が立てやすい(会社側): 退職のタイミングが明確なため、業務の引継ぎや後任者の育成計画が立てやすくなります。
  • 賃金制度・昇進機会との連動(会社側・従業員側): 多くの企業では、昇給や昇進が年度単位で行われるため、年度末退職の方が制度に馴染みやすく、従業員もキャリアパスの見通しを立てやすいことがあります。

デメリット

  • 手続き業務の集中(会社側): 特定の時期(年度末)に退職手続きが集中するため、人事・総務部門に大きな業務負担がかかります。
  • 従業員間の不公平感(従業員側): 同じ年齢であっても、誕生日が4月1日の人と3月31日では、定年までの期間がほぼ1年近く変わることになります。これにより、従業員間に不公平感が生じる可能性があります。

どちらの制度も一長一短であるため、自社の文化や経営方針、従業員のニーズなどを考慮して、就業規則に定めることが重要です。

就業規則での定め方(例)

定年の日を「誕生日の月末」または「年度末」に定める場合の、就業規則の具体的な文言例を以下に示します。


1. 誕生日の月末を定年とする場合の就業規則

記載例

第○条(定年)

  1. 従業員の定年は満60歳とし、60歳の誕生日の属する月の末日をもって退職とする。
  2. 前項の規定にかかわらず、希望する従業員については、本人の能力、勤務成績等を考慮のうえ、会社が認めた場合に限り、引き続き雇用する(再雇用制度)ことができる。
  3. 前項の再雇用については、別に定める「継続雇用制度規程」によるものとする。

ポイント

  • 「60歳の誕生日の属する月の末日をもって」 と明記することで、個々の従業員の誕生日が基準となることを明確にします。
  • 定年後の再雇用制度についても、就業規則内で触れるのが一般的です。

2. 年度末を定年とする場合の就業規則

記載例

第○条(定年)

  1. 従業員の定年は満60歳とし、60歳に達した日以降の最初の3月31日をもって退職とする。
  2. 前項の規定にかかわらず、希望する従業員については、本人の能力、勤務成績等を考慮のうえ、会社が認めた場合に限り、引き続き雇用する(再雇用制度)ことができる。
  3. 前項の再雇用については、別に定める「継続雇用制度規程」によるものとする。

ポイント

  • 「60歳に達した日以降の最初の3月31日をもって」 とすることで、年度末(3月31日)を退職日とすることが明確になります。
  • 3月31日を定年日とする場合、3月31日生まれの従業員は満60歳になったその日に定年を迎えることになります。一方、4月1日生まれの従業員は、満60歳になった翌年の3月31日まで働くことになり、同じ年齢でも退職日が約1年近くずれることになります。これは法律上問題ありませんが、従業員への説明は丁寧に行う必要があります。

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