Last Updated on 2025年8月14日 by 勝
レイオフの仕組み
アメリカのレイオフ(layoff)は、企業の経営上の理由により、従業員を一時的または恒久的に解雇することです。
レイオフは、景気の悪化、組織再編、事業所の閉鎖など、企業側の都合で実施されるものです。通常、個々の従業員の業績や能力とは無関係に行われます。
一時的レイオフの場合、景気が回復したり、状況が改善したりすれば、従業員は再雇用される可能性があります。多くの場合、一定期間は失業保険を受給でき、企業からの医療保険などの給付が継続されることもあります。
恒久的レイオフの場合、再雇用の見込みはなく、完全に雇用契約が終了します。
レイオフの要件
アメリカでは、雇用関係はアットウィル・エンプロイメント(At-will Employment)と呼ばれる原則が基本です。これは、特別な契約がない限り、雇用主はいつでも、いかなる理由でも(違法な理由を除く)、従業員を解雇できるというものです。これは従業員側にも同じで、いつでも退職できます。
レイオフの場合、企業は通常、以下のような点を考慮して対象者を決定します。
- 勤続年数: 勤続年数が短い従業員からレイオフの対象となることが多いです。
- 職種: 会社の戦略上、不要になった部門や職種の従業員が対象となります。
- 勤務地: 事業所を閉鎖する場合、その地域の従業員全員が対象となります。
また、大規模なレイオフを実施する場合、労働者調整・再訓練予告法(WARN Act)に基づき、企業は従業員に対して少なくとも60日前に事前通知を行う義務があります。
アメリカの雇用に与えるメリット・デメリット
メリット
- 企業の柔軟性: 景気の変動や市場の変化に素早く対応し、コストを削減できます。これにより、企業の存続や再建が可能になります。
- 労働市場の活性化: 企業が不採算事業から撤退し、成長分野にリソースを再配分することで、産業構造の転換を促します。
デメリット
- 雇用の不安定性: 従業員はいつ解雇されるかわからないため、常に雇用の不安定さを感じます。これが消費の停滞につながることもあります。
- 人材の流出: 景気が回復しても、レイオフで失った優秀な人材が戻ってくるとは限りません。
レイオフと日本の整理解雇の違い
レイオフと日本の整理解雇は、いずれも企業の経営上の理由による解雇ですが、その要件と仕組みには大きな違いがあります。
項目 | レイオフ(アメリカ) | 整理解雇(日本) |
原則 | アットウィル・エンプロイメント(いつでも解雇可能) | 労働契約法に基づき、解雇権濫用法理により厳格に制限される |
要件 | 企業が経営判断に基づいて自由に実施できる(一部の例外を除く) | 整理解雇の4要件を満たす必要がある |
手続き | 一定規模以上の場合は60日前通知義務あり | 解雇回避努力、人選の合理性など、厳格な手続きが必要 |
再雇用の可能性 | 一時的レイオフでは再雇用の可能性がある | 原則として再雇用の義務はない |
日本の整理解雇の4要件は以下の通りです。
- 人員削減の必要性: 企業が経営危機に陥っており、人員削減が避けられないこと。
- 解雇回避努力義務: 配置転換、希望退職者の募集など、解雇を回避するための努力を尽くしたこと。
- 人選の合理性: 解雇の対象者が客観的で合理的な基準で選ばれていること。
- 手続きの妥当性: 労働組合や従業員と十分に協議し、納得を得るための努力をしたこと。
この4要件を満たさなければ、整理解雇は解雇権の濫用とみなされ、無効となります。アメリカのレイオフは日本の整理解雇に比べて、企業の裁量が大きく、より簡単に実施できると言えます。
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