育児短時間勤務を適用するのが困難な場合は、対象外にできる場合がある

育児介護

育児のための短時間勤務制度は、原則として3歳に満たない子を養育する労働者が利用できる制度です。しかし、「業務の性質又は業務の実施体制に照らして、短時間勤務制度を講ずることが困難と認められる業務に従事する労働者」については、労使協定で定めることにより、この制度の対象外とすることができます。

この規定について、分かりやすく解説します。

対象外となるケースの基本的な考え方

この規定は、育児中の労働者を支援しつつも、企業の円滑な運営が極度に妨げられることを避けるための例外規定です。

  • 「業務の性質」による困難業務そのものの性質から、労働時間を短縮することが難しい場合です。例:
    • 国際線に就航する航空機の客室乗務員などの業務(飛行時間が長く、短時間での交代が困難)。
    • 特定の時間帯(例:顧客対応のピーク時)に、必ずその労働者が必要となる専門性の高い業務で、代替者がいない場合。
  • 「業務の実施体制」による困難業務の進め方や職場の体制から、短時間勤務の労働者を組み込むことが難しい場合です。例:
    • 流れ作業方式の製造業務などで、短時間勤務の労働者を勤務体制に組み込むと、作業ライン全体を止めてしまうなど、業務の実施に大きな支障が出る場合。
    • 交代制勤務で、短時間勤務の労働者の穴を埋めるための人員配置が極めて困難な場合。

ポイント

「困難」とは、単に人手が足りないという理由だけでなく、その業務の本質や体制上、短時間勤務を導入することが他の労働者や業務全体に著しい支障をきたす場合に限られます。

対象外にするための手続き

会社がこの規定を適用するには、次の手続きが必要です。

  1. 労使協定の締結  会社と、労働者の過半数で組織する労働組合(ない場合は労働者の過半数を代表する者)との間で、「どのような業務に従事する労働者を対象外とするか」を具体的に定めた労使協定を結ぶ必要があります。
  2. 代替措置の実施義務  仮に労使協定で短時間勤務の対象外とした場合でも、会社はその労働者に対して必ず以下のいずれかの代替措置を講じなければなりません。
    • 育児休業に関する制度に準ずる措置
    • フレックスタイム制度
    • 始業・終業時刻の繰り上げまたは繰り下げ(時差出勤制度)
    • 事業所内保育施設の設置・運営など、これに準ずる便宜の供与(例:ベビーシッター費用の援助など)

この代替措置は、短時間勤務制度を利用できない労働者に対しても、育児と仕事の両立を支援するために会社が負う義務です。

その他の適用除外となる労働者

短時間勤務制度は、上記の「業務の性質・実施体制」の困難さ以外にも、労使協定で次の労働者を対象外にすることができます。

  • その事業主に継続して雇用された期間が1年に満たない労働者
  • 1週間の所定労働日数が2日以下の労働者

さらに、次の労働者は労使協定の有無にかかわらず制度の対象外です。

  • 日々雇用される労働者
  • 1日の所定労働時間が6時間以下の労働者 (既に短い働き方をしているため)