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労働時間

労働時間等設定改善法とはどういう法律か?

Last Updated on 2025年8月12日 by

労働時間等設定改善法の概要

労働時間等設定改善法は、正式名称を「労働時間等の設定の改善に関する特別措置法」といい、労働者の健康と福祉を確保しながら、多様な働き方に対応した労働時間や休暇、深夜業といった労働条件の設定を改善することを目的とした法律です。この法律は、企業に労使で話し合う場を設け、自主的に労働時間等の見直しを行うよう促すためのものです。

この法律によって、企業は以下の取り組みを実施するよう努めることが奨励されています。

労働時間等設定改善委員会: 労使が労働時間等について話し合うための委員会を設ける努力義務。この委員会は、一定の要件を満たせば、一部の労使協定の締結に代わる決議を行うことができます。

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勤務間インターバル: 終業時刻から次の始業時刻までの間に、一定の休息時間を確保することです。これにより、従業員の睡眠時間や生活時間を確保し、疲労の回復を図ります。この制度は、2018年の働き方改革関連法によって、導入の努力義務が法律上明確に位置づけられました。

関連記事:勤務間インターバル制度の運用ポイントと注意点

年次有給休暇の取得促進: 年次有給休暇の計画的付与制度などを活用し、労働者が休暇を取得しやすい環境を整備すること。

深夜業の回数の減少: 労働者の健康に配慮し、深夜業を行う回数を減らすよう努めること。

労働時間等設定改善実施計画: 労働時間等の設定改善に関する計画を作成し、これを実施する努力義務。

国および地方公共団体の支援: 国や地方公共団体が、企業に対して必要な情報の提供や相談、助言を行うこと。

企業にとっての負担とメリット

負担

労働時間等設定改善法の規定を実施することは、企業にとって一定の負担を伴います。

時間とコスト: 労働時間等設定改善委員会の設置や運営には、労使双方の代表者が集まり、定期的に話し合いを行う時間が必要です。また、委員会の運営や議事録の作成など、事務的な作業も発生します。

運用の煩雑さ: 委員会を設置する場合、運営規程の策定や、委員の選出、議事録の作成・保管など、法令に定められた手続きを踏む必要があります。これにより、社内での手続きが増え、運用の負担となる可能性があります。

メリット

一方で、この法律に定められた内容を実施することで、企業は以下のような大きなメリットを得ることができます。

生産性の向上: 労働時間や休暇の柔軟な設定は、従業員の心身の健康を保ち、仕事へのモチベーションを高めます。その結果、業務の効率が上がり、生産性の向上につながります。

人材の確保と定着: 多様な働き方に対応できる柔軟な労働時間制度は、育児や介護などと仕事を両立させたい人材にとって大きな魅力となります。これにより、優秀な人材の獲得がしやすくなり、離職率の低下にも貢献します。

コンプライアンスの強化: 労働時間等設定改善委員会を通じて、労働時間に関するルールを労使で話し合うことで、長時間労働の是正や適切な労働時間管理が進みます。これにより、労働基準法などの関連法令違反のリスクを低減し、企業のコンプライアンスを強化できます。

企業イメージの向上: 働きやすい職場環境を整備している企業として認知されることで、社会的な信用や企業イメージが高まります。これは、採用活動や取引先との関係構築においても有利に働きます。

勤務間インターバル制度の導入や年次有給休暇の計画的付与は、企業にとって一時的なスケジュールの調整や業務配分の見直しといった負担を伴うことがあります。しかし、従業員の健康が守られ、十分な休息が取れることで、結果的に生産性の向上、離職率の低下、そして優秀な人材の確保につながります。 長期的な視点で見れば、これらの取り組みは企業の持続的な成長に不可欠な要素となります。


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