公開会社とは?上場会社との違いを解説

会社の運営

公開会社とは

会社法における「公開会社」とは、発行する株式の全てまたは一部について、譲渡による取得に際して会社の承認を要する旨の定款の定めを設けていない会社を指します(会社法第2条第5号)。

簡単に言えば、「いつでも、誰でも、自由に株式を売買できる」会社が公開会社です。

  • 非公開会社(株式譲渡制限会社): 発行する全ての株式について、譲渡(売買)する際に会社の承認(取締役会など)が必要である旨が定款に定められています。
  • 公開会社: 発行する株式のどれか一つでも、譲渡に会社の承認が不要な(譲渡自由な)株式が存在する会社です。

公開会社に適用される主な会社法の規制

会社法は、株式の譲渡が自由である公開会社に対して、株主構成が不安定になることを防ぎ、会社の重要事項が少数の経営者によって独断で決められないように規制を設けています。

規制事項公開会社に課される制限・義務
取締役会の設置必須です(監査役会設置会社、指名委員会等設置会社、監査等委員会設置会社の場合)(会社法第327条第1項)。
募集事項の決定取締役会の決議で株式の発行(募集)に関する事項を決定できます(会社法第201条第1項)。
監査役の任期原則として4年です(非公開会社は最長10年)(会社法第332条第2項)。
株主総会の特別決議要件の加重株式の譲渡自由により株主が流動的であるため、株主総会の特別決議の要件を定款で加重することはできません(会社法第309条第2項第9号)。
合併・組織再編譲渡制限会社よりも厳格な手続きや株主保護の手続きが求められる場合があります。

これらの規制は、株主が不特定多数となりやすい公開会社のコーポレート・ガバナンス(企業統治)を強化するために定められています。

補足:特別決議の要件

特別決議要件の加重とは

「株主総会の特別決議要件の加重」とは、公開会社ではない会社(非公開会社または株式譲渡制限会社)に限り、株主総会の特別決議を成立させるための要件を、会社法が定める基準よりも厳しくする旨を定款で定めることです。

会社法では、重要な事項(定款変更、事業譲渡、合併・解散など)を決定するために「特別決議」が必要とされています。

特別決議の要件は以下の通りです(会社法第309条第2項):

  1. 議決権の過半数を有する株主が株主総会に出席し(定足数)。
  2. 出席した当該株主の議決権の3分の2以上に当たる多数をもって行う(賛成要件)。

非公開会社の場合

非公開会社の場合、上記の賛成要件を定款で以下のように「加重」することができます。

項目法定要件(最低限)加重の例(定款で定める)
定足数議決権の過半数議決権の4分の3を有する株主の出席
賛成要件出席した株主の議決権の3分の2以上出席した株主の議決権の4分の3以上(またはそれ以上)

加重の目的

加重が認められているのは、主に非公開会社(譲渡制限会社)です。その目的は、特定の株主の利益を強く保護し、会社の支配権を安定させることにあります。

  • 特定の株主の拒否権確保: 大株主などが「議決権の3分の2」よりも高い賛成要件を設定することで、その株主の持ち株比率が3分の1超であっても4分の1未満であれば、重要な決定を単独で阻止(拒否権を行使)することが難しくなります。加重することで、特定の少数株主でも、重要な決定をブロックできる力を与えることができます。
  • 経営の安定: 会社にとって極めて重要な事項(合併、解散など)については、より幅広い株主の合意を得て慎重に決定できるようにするためです。

公開会社と上場会社

公開会社という用語は、「上場している会社」という意味ではありません。

  • 公開会社 = 株式の譲渡制限を設けていない会社
  • 上場会社は、証券取引所に株式を上場している会社であり、上場するためには必然的に株式の譲渡制限を設けていない(公開会社である)必要があります。
    • しかし、株式の譲渡制限を設けていなくても、証券取引所に上場していない非上場公開会社も存在します。

公開会社を「上場している会社」と誤解する背景には、主に以下の要因があります。

用語の一般的なイメージと法律用語との乖離

会社法における「公開」は、株式の譲渡が自由であることを意味します。つまり、株主が株式を売却する際に会社の承認を必要としない(株主が不特定多数になる可能性がある)という状態を指します。これは、会社の規模や上場の有無とは関係ありません。

一方で、日常会話やビジネス報道で「公開」という言葉を使う場合、一般的には以下のイメージを連想します。

  • 情報公開: 会社情報(財務情報など)が広く外部に開示されている状態。
  • 市場公開: 株式が証券取引所で一般に売買されている状態(上場)。

この「市場公開=上場」という一般的なイメージが、会社法の「株式譲渡の自由=公開会社」という限定された技術的な定義と混同され、誤解されることがあります。

歴史的経緯

旧商法時代には、「公開会社」に相当する会社形態はなく、会社法制定(2006年)に伴ってこの用語が導入されました。この新旧の法律用語の切り替わりの中で、新しい「公開会社」の定義(譲渡制限の有無)が十分に浸透せず、上場という分かりやすい概念と結びつけられやすかった側面もあります。