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雇入れ時の安全衛生教育は義務です!教育内容や実施方法などをまとめて解説

Last Updated on 2025年7月14日 by

労働安全衛生法に基づいて義務付けられている「雇入れ時の安全衛生教育」について解説します。

雇入れ時の安全衛生教育とは

労働者を新たに雇い入れるとき、事業者(会社)はその業務に従事させる前に、安全や衛生に関する必要な教育を行わなければなりません。
これは労働災害の防止を目的としており、労働安全衛生法第59条第1項および労働安全衛生規則第35条により義務づけられています。

法的根拠

労働安全衛生法 第59条第1項

労働安全衛生法第59条
事業者は、労働者を雇い入れたときは、当該労働者に対し、厚生労働省令で定めるところにより、その従事する業務に関する安全又は衛生のための教育を行なわなければならない。

教育の内容

事業者は、次の事項について教育を行う必要があります。(安全衛生規則 第35条)

一 機械等、原材料等の危険性又は有害性及びこれらの取扱い方法に関すること。
二 安全装置、有害物抑制装置又は保護具の性能及びこれらの取扱い方法に関すること。
三 作業手順に関すること。
四 作業開始時の点検に関すること。
五 当該業務に関して発生するおそれのある疾病の原因及び予防に関すること。
六 整理、整頓とん及び清潔の保持に関すること。
七 事故時等における応急措置及び退避に関すること。
八 前各号に掲げるもののほか、当該業務に関する安全又は衛生のために必要な事項

労働安全衛生規則第35条のただし書きでは「令第二条第三号に掲げる業種の事業場の労働者については、第一号から第四号までの事項についての教育を省略することができる。」と定めています。

施行令第二条第三号は「その他の業種」となっています。これは、林業、鉱業、建設業、運送業及び清掃業、製造業(物の加工業を含む。)、電気業、ガス業、熱供給業、水道業、通信業、各種商品卸売業、家具・建具・じゆう器等卸売業、各種商品小売業、家具・建具・じゆう器小売業、燃料小売業、旅館業、ゴルフ場業、自動車整備業及び機械修理業の業種以外の業種ということです。

つまり、危険性の少ない業種に従事するものには、一~四を省略することができるということです。

教育の対象者

健康診断は「常時使用する労働者」が対象ですが、安全教育はすべての労働者に実施しなければなりません。正社員、パート、アルバイトなど雇用形態を問わず対象になります。

一日だけ働く短期労働者、実習生、派遣社員も含まれます(派遣の場合、教育義務は派遣元が負う)。

ただし、全部または一部を免除される労働者もいます。

労働安全衛生規則第35条2

事業者は、前項各号に掲げる事項の全部又は一部に関し十分な知識及び技能を有していると認められる労働者については、当該事項についての教育を省略することができる。

全部または一部を省略する扱いをするときは、その省略の基準を明確に定めておきましょう。

一般的には労働安全衛生法による免許の保持、技能講習の受講歴等で判断します。

教育の実施方法

座学、実技指導、OJTなどがあり、理解度に応じた丁寧な指導が必要です。

小規模な企業が社内で研修を準備するのは大変なので、労働基準協会などの外部機関が行う講習を利用しましょう。

社内研修として実施するときは、中央労働災害防止協会編「新入者安全衛生テキスト」などの市販のテキストを利用するとよいでしょう。

講習時間について法的な決まりはありませんが、講習実施機関では、6時間(非工業的業的業種では3時間)実施するところが多いようです。

安全衛生教育は、労働者がその業務に従事する場合の労働災害を防止するためのものなので、事業者の責任と負担において実施しなければなりません。

従って、安全衛生教育の時間は労働時間としてカウントする必要があります。法定時間外に行われた場合には割増賃金を支払わなければなりません。外部研修への派遣費用、受講料なども事業主が負担しなければなりません。

社内で実施する場合の所要時間の目安

法的には「内容を適切に教育すること」が求められており、時間は明示されていません。ただし、あまり短時間で済ませることは原則として不適切です。教育時間を「形だけ」で済ませ、万一事故が起こった場合、「教育の実施内容が不十分」として会社の責任が問われる可能性があるからです。

厚生労働省は、雇入れ時等の教育についての具体的な指針として、「安全衛生教育の推進について(労働安全衛生規則第35条等関係)」、「雇入れ時等教育実施マニュアル」(都道府県労働局・労働基準監督署向け)などを公表しています:

これらにおいて、教育内容ごとに「時間数」が示されている場合があります。それによると、

業務の内容 30分
危険性・有害性と防止措置 30分
保護具の使い方 20分
作業場所の整理・衛生 20分
災害防止・緊急時対応 20分
その他必要事項 10分
合計 約2時間

という例があります。これは一例であり、実際の業務内容やリスクの程度に応じて調整する必要がありますが参考になる時間配分です。

教育の記録

一般的な記録

また、安全衛生教育を実施した場合は、実施した日時、実施した者の氏名、教育を受けたものの氏名、教育した内容について文書による記録を残しましょう。その際、使用したレジメや教材を添付することを忘れないようにしましょう。教育している場面のスナップ写真も何枚か撮って添付しておきましょう。

労働基準監督署の調査に対しては、「実施しています」と口頭で述べても説得力がありません。こうした記録を提示することで実施していることを証明できます。

OJTの記録

OJTの場合は、上述した記録のうち、レジメ、教材、スナップ写真等の記録を残すのは難しい場合があると思われます。したがって、特に実施者による記録が重要になります。「誰が」「何を」「どのように教えたか」について、次のような記録を文書で残しましょう。

実施日:2025年7月14日(初日から複数日にわたる場合は期間で)
対象者:新入社員 氏名(例:◯◯◯◯、多数でも省略しない)
実施者:教育担当者の氏名(例:製造部係長◯◯◯◯)
実施方法:OJT(現場作業を通じた指導)
教育内容:業務手順、使用機械の取り扱い、安全装置の説明、保護具の使い方、緊急時の対応などを具体的に教育した
教育時間:各項目にかかった大まかな時間(合計時間と内訳記載)
備考:受講者の理解度や補足説明の要否などがあれば記録

違反した場合

雇入れ時教育を怠った場合、労働安全衛生法第120条により「50万円以下の罰金」が科される可能性があります。

実務上のポイント

雇入れた日=初出勤日であることが多いため、業務開始前に教育を実施する体制を整えておく必要があります。

特定の危険有害作業に就かせる場合は、特別教育や技能講習が別途必要となるケースもあります。

就業規則規定例

安全衛生教育|就業規則


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