Last Updated on 2025年9月7日 by 勝
メリット制って何?
労災保険料は、基本的に「業種ごとに決められた保険料率」をベースに計算します。
ところが実際には、同じ業種でも「事故が多い会社」と「ほとんど事故がない会社」がありますよね。
その差を反映させるのが メリット制 です。つまり「過去の労災の実績」を見て、保険料率を上げたり下げたりする仕組みなんです。
すべての事業場に適用される?
答えは いいえ。
メリット制は、原則として「常時使用する労働者が100人以上」の事業場に適用されます。ただし、100人未満でも一部のケースで対象になることもあります。
つまり、小規模の会社ではメリット制の適用は多くありません。
メリット率の計算方法
ポイントは「過去3年間の労災保険給付の実績」を基に算出することです。
具体的には、
- 保険料の基準となる「業種ごとの料率」
- 過去3年間に発生した労災事故による給付額
- 会社の賃金総額
を組み合わせて、割増・割引率(=メリット率)を計算します。
たとえば、事故が少なければ「90%」に割引、事故が多ければ「110%」に割増、といった形です。保険料の変動幅は最大で増減ともに40%です。
事故が無いと翌年から適用される?
ここは注意が必要です。
メリット制は「前年」だけを見るのではなく、過去3年間の実績平均で判断します。具体的には、連続する3保険年度の最後の年度の翌々年度から適用となります。
したがって、1年間事故がゼロになったからといってすぐに翌年に割引されるわけではありません。
なお、メリット制は申請が必要ありません。
メリット制の対象となった企業には、毎年の労働保険(雇用保険+労災保険)の年度更新時期に「労災保険率決定通知書」が送付されます。
つまり、会社が「メリット制を使いたい」と申請して適用されるものではなく、一定の要件(労働者100人以上、など)を満たしていれば 自動的に適用される制度 なんです。
労災隠しの心配は?
メリット制は「安全に取り組んだ会社の保険料を軽くする」仕組みですが、裏を返すと「事故が多いと負担が重くなる」制度でもあります。そのため、一部では「割引を受けたいから労災を隠すのでは?」という懸念が指摘されてきました。
国もこの問題を理解しており、以下のような仕組みを設けています。
- 重大災害の発生状況は別途監督署で把握しており、隠蔽は監督指導の対象になる
- 労災隠しが発覚すれば、刑事罰や企業名の公表につながる
- メリット制の判定は「過去3年の給付実績」を基にするため、1件や2件を隠したところで大きく変わらない場合も多い
つまり「隠すメリット」よりも「発覚したときのリスク」の方が圧倒的に大きい仕組みになっています。
まとめ
- メリット制は労災保険料を「事故実績」に応じて調整する仕組み
- 原則100人以上の事業場が対象
- 過去3年間の給付実績からメリット率を算出
- 事故ゼロが1年でも翌年すぐに反映されるわけではなく、3年の平均で判定
- 企業から申請して審査を受けるのではなく、要件を満たすと自動的に適用される仕組み
- 労災隠しは会社にとって致命的なリスク(法違反+信用失墜)
会社事務入門>労働保険の手続き>労働保険料の申告と納付>このページ