福利厚生費 勘定科目

経理の事務

Last Updated on 2025年9月27日 by

勘定科目としての「福利厚生費」は、企業が従業員の生活の安定や向上、労働意欲の向上を目的として、給与や賞与とは別に支出する費用を計上するための科目です。

福利厚生費の分類:法定と法定外

福利厚生費として認められる費用は、法人税法上、原則として全額が損金(経費)として算入可能であり、さらに従業員側でも非課税となるケースが多いのが特徴です。この非課税の恩恵を受けるためには、税法上の厳格な要件を満たす必要があります。

福利厚生費は、大きく分けて2種類あります。

1. 法定福利費

法律で企業に負担が義務付けられている費用です。

具体例概要
社会保険料の会社負担分健康保険料、厚生年金保険料、介護保険料
労働保険料の会社負担分雇用保険料、労災保険料(全額会社負担)
その他子ども・子育て拠出金など

2. 法定外福利費(一般的に「福利厚生費」と呼ばれるもの)

企業が独自で任意に実施する福利厚生にかかる費用です。経費精算などで一般的に「福利厚生費」として処理されるのは、主にこちらです。

具体例
健康・医療
慶弔・見舞金
親睦・レクリエーション
食事補助
通勤
その他

仕訳例

従業員の健康診断費用を病院へ直接振り込んだ

(※従業員全員が対象で、会社が医療機関に直接支払うことが非課税の要件)

日付勘定科目借方勘定科目貸方摘要
X/X福利厚生費450,000普通預金450,000従業員 50名分定期健康診断費用

従業員に結婚祝金として50,000円を現金で支給した

(※慶弔見舞金は、社内規定に基づき、常識的な金額であれば例外的に現金支給でも福利厚生費として認められます。)

日付勘定科目借方勘定科目貸方摘要
X/X福利厚生費50,000現金50,000A社員への結婚祝金

給与支払時に社会保険料の会社負担分を計上した

日付勘定科目借方勘定科目貸方摘要
X/X法定福利費120,000預り金120,0005月分社会保険料会社負担分計上

経費として認められるための要件(給与との線引き)

法定外福利費を税務上「福利厚生費」として損金算入し、かつ従業員にとって非課税とするためには、次の3つの原則をすべて満たす必要があります。これらの要件を満たさない場合、その支出は「給与」とみなされ、従業員の所得税・住民税・社会保険料の課税対象となってしまいます。

要件詳細
1. 機会の平等性すべての従業員を対象とし、公平に利用できる機会があること。特定の役員や部署、特定の功績者だけを対象とした支出は原則として認められません。
2. 金額の妥当性支出額が社会通念上、常識的な範囲内であること。極端に豪華・高額なものは、給与や交際費とみなされます。
3. 現金や換金性の排除原則として現金や商品券など、換金性の高いものを支給しないこと。現物で提供することが求められます。(慶弔見舞金や一定額内の通勤手当は例外的に現金支給が認められます。)

主要な福利厚生費の個別要件

特に給与と間違われやすい項目については、細かな非課税の要件が定められています。

項目非課税となる主な要件
社員旅行1. 旅行期間が4泊5日以内であること(海外旅行は現地滞在日数)。 2. 全従業員の50%以上が参加すること。 3. 不参加者へ現金を支給しないこと。
食事補助1. 従業員が食事代の50%以上を負担していること。
2. 会社負担額が一人あたり月額 3,500円(税抜)以下であること。
健康診断1. 全従業員が対象であること
2. 会社が医療機関へ直接支払うこと。(従業員に現金を渡すと給与課税)
3. 内容が一般的な健康診断であること。(高額な人間ドックなども常識的な範囲で認められる場合がある)
社宅会社が賃貸物件を借り上げ、従業員から賃貸料相当額の50%以上を徴収していること。(家賃全額を補助すると全額が給与課税されるリスクあり)

福利厚生費と他の勘定科目との違い

勘定科目対象者主な目的税務上の特徴
福利厚生費全従業員生活の安定、労働意欲の向上原則、全額損金算入(要件を満たせば従業員は非課税
給与従業員個人労働の対価損金算入されるが、従業員は課税対象
交際費取引先など社外の者親睦、接待、供応損金算入に制限がある(一定額超は損金不算入)