外部委託型相談窓口を利用する場合の運用フロー

人事制度

社内相談窓口を外部に委託する際、最も重要なのが「窓口が受けた相談をどう解決に繋げるか」という社内連携の設計です。一般的な外部委託型窓口の運用フローを解説します。

外部窓口との連携(一般的なフロー)

1. 相談の受付と受理(外部窓口)

外部窓口が相談者からヒアリングを行います。

  • ヒアリング項目: 事実関係(いつ、どこで、誰が、何を)、相談者の要望(謝罪、異動、処罰など)、会社への報告可否。
  • 匿名性の確認: 氏名を伏せて会社に報告するか、実名で報告するかを相談者と合意します。

2. 会社へのフィードバック(外部窓口 → 会社窓口)

外部窓口から、あらかじめ指定された会社の「窓口担当部署(人事部やコンプライアンス委員会など)」へ報告が入ります。

  • 報告書の内容: 相談の要旨、緊急性の有無、外部窓口による初期判断などが記されます。

3. 事実関係の調査(会社)

報告を受けた会社側が、具体的な調査を開始します。

  • ヒアリング: 関係者や目撃者への聞き取りを行います。
  • 証拠確認: メールの履歴、入退室記録、業務日報などの客観的証拠を精査します。
  • 匿名希望: 相談者が匿名を希望している場合、調査によって相談者が特定されないよう、慎重な調査設計が求められます。

4. 措置の決定と実施(会社)

調査結果に基づき、会社が最終的な判断を下します。

  • ハラスメント等が認定された場合: 加害者への指導・懲戒処分、相談者の環境改善(配置転換など)、再発防止策の策定。
  • 認定されなかった場合: その旨を説明し、職場のコミュニケーション改善などのフォローを行う。

5. フィードバックと事後確認(会社 or 外部窓口)

相談者に対し、調査結果と会社が取った措置についてフィードバックを行います。

  • 外部窓口を経由して伝えることで、相談者が納得感を得やすくなるケースもあります。
  • 措置後、状況が改善されたか定期的にモニタリングを行います。

6. 運用をスムーズにするためのポイント

  1. 「窓口担当者」の限定: 外部からの報告を受ける社内の担当者をあらかじめ決めておき、情報の漏洩を徹底的に防ぎます。
  2. フィードバック様式の統一: 外部窓口から「どのような項目で報告をもらうか」をフォーマット化しておくと、その後の社内調査がスムーズになります。
  3. 「放置」の禁止: 外部窓口から報告があった際、何日以内に初期対応(調査開始など)を行うかという「期限」を社内規定で定めておくことが実効性を高めるコツです。

相談受付報告書について

外部窓口から会社(人事・コンプライアンス担当)へ送られてくる報告書は、「会社側がそのまま事実確認の調査に移行できる」内容で作成してもらうことが重要です。あらかじめ記載項目を共有しておくことで、情報の聞き漏れを防ぎ、迅速な初動対応が可能になります。

フィードバック様式のサンプル

【極秘】相談受付報告書

報告日: 202X年〇月〇日
受付番号: No. 202X-001
報告者: 〇〇外部相談窓口(担当:〇〇)

1. 相談者情報

  • 氏名: (※匿名希望の場合は「匿名」と記載)
  • 所属部署・役職: 〇〇部 〇〇課(正社員 / パート / 派遣)
  • 連絡先: (※会社からの直接連絡が可能な場合のみ記載)

2. 相談の種別(該当するものにチェック)

  • [ ] パワーハラスメント
  • [ ] セクシュアルハラスメント
  • [ ] 育児・介護休業等に関するハラスメント
  • [ ] 労働条件・待遇(同一労働同一賃金等)
  • [ ] 公益通報(法令違反等)
  • [ ] その他(     )

3. 相談内容の要旨(いつ、どこで、誰が、何を)

  • 対象者(加害者とされる人物): 〇〇部 〇〇氏
  • 発生時期・場所: 202X年〇月〇日頃から継続的、〇〇会議室内 等
  • 具体的事実:(例:〇〇氏より、〇〇の業務に関して全従業員の前で大声で叱責された。また、メールでも「やる気がないなら辞めろ」といった内容が送られてきている。)

4. 相談者の要望

  • [ ] 事実関係を調査してほしい
  • [ ] 加害者に謝罪や改善を求めてほしい
  • [ ] 配置転換(部署異動)を希望する
  • [ ] 会社に対して意見を聞きたい(制度の確認等)
  • [ ] 相談の記録のみ残し、現時点では静観してほしい

5. 会社による調査・対応への同意状況

  • 氏名の開示: [ 同意する / 同意しない(匿名希望) ]
  • 関係者へのヒアリング: [ 同意する / 同意しない / 範囲を限定する(〇〇さんには聞かないでほしい等) ]

6. 受付担当者の所見(初期判断)

(例:相談者は非常に動揺しており、メンタルヘルスの不調も懸念される。早期の事実確認および面談が必要と思われる。メールの写し等の証拠は相談者が保有しているとのこと。)

運用上のポイント

1. 匿名希望時の「取扱注意」: 相談者が匿名を希望している場合、報告書を回覧する範囲を「窓口責任者(部長など)」に限定するなどの運用ルールを徹底してください。

2. 緊急性のフラグ: 「自殺をほのめかしている」「重大な不正が行われている」など、即時の対応が必要なケースについては、メール報告を待たずに電話で先行連絡するよう委託先と定めておくと安全です。

3. 「相談者の同意」の明確化: 会社が調査を開始した後に「そんなつもりで相談したのではない」というトラブルを防ぐため、上記フォーマットの「4. 相談者の要望」と「5. 同意状況」は、外部窓口に必ず正確にヒアリングしてもらうようにしてください。