ハラスメントや懲戒事案の調査の進め方

ハラスメント

ハラスメントや懲戒事案の調査をするときは、手順を重視することが極めて重要です。調査の進め方について示します。ここではハラスメントの調査手順について記載します。

調査開始通知のサンプル

原則として調査を始めることを関係者に明示します。調査の担当部門が、次のサンプルは、関係者に調査への協力を依頼する際のメール・文書です。「懲戒が決まったわけではない」という中立性を保つことが重要です。

① 行為者(加害者と指摘された人)への通知

【重要】事実関係の確認に関する面談のお願い

〇〇部 〇〇殿

当社では、就業規則に基づき、職場環境の維持・向上のために各種相談を受け付けております。この度、あなたが行ったとされる特定の言動について、事実関係を確認する必要が生じました。つきましては、以下の通り面談を実施いたしますので、出席をお願いいたします。

  1. 日時:〇月〇日 〇時〜
  2. 場所:第〇会議室
  3. 内容:業務上のやり取りに関する事実関係の確認

【注意事項】

  • 本件は現時点で事実を認定したものではありません。あなたの言い分を公平に伺うための場です。
  • 本件について、相談者や周囲の従業員に直接接触したり、口止めをしたりすることは固く禁じます。
  • 調査に関わる情報の機密保持を厳守してください。

② 関係者(目撃者など)への通知

【依頼】ヒアリングへの協力のお願い

〇〇部 〇〇殿

職場環境の適正化に関する調査のため、当時その場にいたとされる方に事実関係の確認を行っております。公平な判断を行うため、あなたの知っている範囲で状況を伺いたく、面談への協力をお願いいたします。

  1. 日時:〇月〇日 〇時〜
  2. 目的:〇月〇日頃の〇〇における状況の確認

【プライバシーについて】

  • お話しいただいた内容によって、あなたが不利益な取り扱いを受けることは一切ありません。
  • 調査内容については他言無用でお願いいたします。

ヒアリング質問リストのサンプル

事実確認を行うための「ヒアリング質問リスト」のサンプルです。このサンプルをもとに、事案によって質問項目を事前に吟味し、質問漏れが無いように注意しましょう。

ハラスメントや待遇差の調査は非常にデリケートであるため、「予断を持たない(決めつけない)」ことと、「プライバシーへの配慮」が成功の鍵となります。

相談者(被害を訴えている人)への質問

  • 事実関係: 「いつ、どこで、誰に、どのようなことをされましたか(または言われましたか)?」
  • 頻度・継続性: 「それは一度きりですか? それとも以前から続いていますか?」
  • 周囲の状況: 「その場に誰か他の人はいましたか? 目撃者はいますか?」
  • 証拠の有無: 「録音、メール、日記、チャットの履歴などはありますか?」
  • 自身の対応: 「その場で拒否したり、嫌だと言ったりしましたか?」
  • 心身への影響: 「体調を崩したり、仕事に支障が出たりしていますか?」
  • 今後の希望: 「会社にどうしてほしいですか?(加害者の処罰、謝罪、異動、再発防止など)」

行為者(加害者と指摘された人)への質問

  • 事実の確認: 「〇月〇日、〇〇さんに対して、〇〇といった言動をした覚えはありますか?」
  • 経緯・目的: 「そのような言動に至った理由や背景はありますか?(業務上の指導だった等)」
  • 本人の認識: 「その言動によって、相手がどのように感じたと思いますか?」
  • これまでの関係: 「普段、〇〇さんとはどのようなコミュニケーションをとっていましたか?」

運用の注意点

  • 場所の選定: 相談者と行為者が鉢合わせしないよう、時間や場所をずらして設定してください。
  • 記録の作成: ヒアリング後は必ず「議事録」を作成し、最後に本人に読み上げ、相違がないことを確認して署名(または確認済みメール)を貰うようにしましょう。これが後の法的紛争を防ぐ強力な証拠になります。