執行役と代表執行役

取締役と監査役

執行役とは

株式会社の「執行役(しっこうやく)」は、指名委員会等設置会社という特定の会社形態でのみ設置される、業務の執行に特化した役員です。

委員会設置会社では、経営の監督業務の執行の機能が法的に分離されており、その「業務の執行」を担うのが執行役です。

執行役の主な特徴

設置される会社

  • 執行役は、指名委員会等設置会社(かつての委員会設置会社)に必ず置かなければならない機関です(会社法第402条)。
  • それ以外の会社(監査役設置会社や監査等委員会設置会社など)には、執行役という機関は存在しません。

役割と権限

  • 業務執行の担当: 取締役会が定めた方針に基づき、会社の業務を執行します。
  • 意思決定権: 取締役会から委任された範囲内で、業務執行に関する意思決定を行う権限を持ちます(取締役会は経営の基本方針や重要な決定事項のみを担当します)。
  • 代表執行役: 執行役が複数いる場合、その中から代表執行役が選定されます。代表執行役は、一般的な会社の代表取締役に相当し、会社を対外的に代表する権限を持ちます。

法的位置づけ

  • 会社法上の役員: 執行役は、取締役と同様に会社法上の役員(正確には「機関」)と位置づけられ、会社に対する善管注意義務や忠実義務を負い、その責任は重いです。
  • 取締役との関係: 経営を「監督」する取締役と、業務を「執行」する執行役は、役割が明確に分かれています。ただし、取締役が執行役を兼任することも可能です。

執行役は指名委員会等設置会社にのみ置かれる機関なので、あまり一般的ではありません。似た名称に「執行役員」というものがありよく混同されますが、別のものです。

代表執行役とは

代表執行役は、指名委員会等設置会社に設置される執行役の中から選定される役員で、その会社の業務を執行し、会社を代表する権限を持つ最高経営責任者に相当する機関です。

代表執行役の主な役割と権限

代表執行役は、通常の株式会社における代表取締役とほぼ同様の役割を果たします。

  1. 対外的代表権(会社の顔)
    • 会社の業務に関する一切の裁判上または裁判外の行為をする権限を持ち、会社を代表します。契約締結や訴訟対応など、会社の顔として対外的な活動を行います。
  2. 業務執行の統括
    • 執行役の業務を統括します。取締役会の方針に基づき、会社全体の業務が適切かつ効率的に執行されるよう指揮命令を行います。
  3. 選定と解職
    • 取締役会の決議によって、執行役の中から選定・解職されます。

代表執行役の法的特徴

項目詳細
設置義務指名委員会等設置会社において、執行役が複数いる場合に選定されます(1人の場合は、その執行役が代表執行役となります)。
権限の源泉取締役会の委任と監督の下で権限を行使します。
取締役との関係取締役が会社の経営方針や監督を担うのに対し、代表執行役は決定された方針を基に業務を実行する役割を担います。取締役会と代表執行役は、会社法によって経営の監督と執行の分離が図られています。
役員の登記代表執行役は登記事項であり、その氏名や住所が商業登記簿に記載されます。