Last Updated on 2025年6月20日 by 勝
会社設立をするときに多くの人は株式会社の設立を思い浮かべると思いますが、会社形態として合同会社というものもあります。合同会社の設立手続きを解説します。
合同会社とは?
まず、合同会社について簡単に説明します。合同会社とは、株式会社などと同様に、会社の組織形態の一つです。
合同会社は、株式会社に比べて設立費用や運営費用を抑えられ、経営の自由度が高いという特徴があります。出資者(社員と呼ばれます)がそのまま経営者となるため、意思決定が迅速に行えます。
合同会社は出資者が社員となり(株式会社の株主に相当します)、業務執行社員を選出し(株式会社の取締役に相当します)、さらに代表社員(株式会社の代表取締役社長に相当します)が選出されます。
そして合同会社では、業務の執行については業務執行社員の過半数の合意で決めます(定款で出資数に応じるように決めることもできます)。
メリット
株式会社に比べて登録免許税などが安く、定款の認証も不要なため、初期費用を抑えられます。
出資者(社員)が経営者でもあるため、意思決定が迅速に行え、定款で自由に会社のルールを定められます。
出資額に関わらず、貢献度などに応じて利益配分を自由に設定できます。
株式会社のように役員の任期がないため、役員改選の手続きや費用がかかりません。
出資した金額以上の責任を負う必要がないため、万が一会社が倒産しても個人の財産まで影響が及ぶリスクが少ないです。
デメリット
株式会社に比べると、まだ知名度が低く、社会的信用度が劣ると感じられることがあります。
株式の発行による資金調達ができないため、金融機関からの融資や自己資金が主な資金源となります。
社員の持分譲渡に他の社員全員の同意が必要となるため、事業承継が難しい場合があります。
これらのメリット・デメリットを踏まえた上で、合同会社設立の手続きを見ていきましょう。
合同会社設立の手続きの流れ
合同会社の設立は、大きく以下のステップで進めます。
STEP1. 会社の基本情報を決める
まず、会社の骨子となる重要な事項を決めていきます。
商号(会社名): 会社の名前を決めます。同一所在地に同一商号の会社は登録できません。
事業目的: どのような事業を行うのか具体的に定めます。将来的に行う可能性のある事業も記載しておくと、後々の変更手続きの手間が省けます。
本店所在地: 会社の住所を決めます。
資本金の額: 資本金の額を決めます。法律上は1円から設立可能ですが、対外的な信用度や事業の運転資金を考慮し、ある程度の金額(例えば50万円〜100万円程度)を設定することが一般的です。
社員構成: 誰が代表社員(会社の代表者)となるのか、業務執行社員は誰にするのかなどを決めます。
事業年度: 会社の決算期を決めます。
STEP2. 法人用の実印を作成する
登記申請時に必要となる会社の代表者印(会社実印)を作成します。その他、銀行印や角印なども作成しておくと便利です。
STEP3. 定款を作成する
定款は「会社の憲法」とも呼ばれる、会社の基本的なルールを定めた重要な書類です。以下の内容を必ず記載します。
商号
事業目的
本店所在地
社員の氏名または名称および住所
社員の出資の目的およびその価額
代表社員の氏名および住所
代表社員の就任承諾書
定款作成日
合同会社の場合、株式会社と異なり公証役場での定款の認証は不要です。
紙の定款の場合、収入印紙代として4万円が必要です。
電子定款の場合、収入印紙代は不要ですが、電子署名に必要な機材やソフトウェアが必要になります。費用を抑えたい場合は、司法書士などの専門家に電子定款の作成を依頼することも検討しましょう。
STEP4. 出資金(資本金)を払い込む
定款作成後、定款で定めた出資金を社員の個人口座(代表社員の口座が一般的)に払い込みます。個人の口座を使うのは、まだ会社が存在しないため会社名義の口座を作れないからです。
払い込みが完了したら、その口座の通帳の表紙、表紙裏(支店名、口座番号、口座名義人が記載されているページ)、振込記録のあるページのコピーを取り、「払込証明書」を作成します。
STEP5. 登記申請書類を作成し、法務局で申請する
いよいよ会社設立の最終段階です。以下の書類を作成し、会社の本店所在地を管轄する法務局へ提出します。
登記申請書の書式や記載例は、法務局のホームページで確認できます。
設立登記はオンラインでもできます。
また、一人株式会社又は一人合同会社の設立は、公的個人認証サービス電子証明書を取得することにより、添付書面を管轄の法務局に別途持参等することなく、設立登記を完全オンラインで申請することができます。
主な必要書類
合同会社設立登記申請書: 会社の基本情報や登記内容を記載します。
定款: 作成した定款の原本を提出します。
代表社員、本店所在地及び資本金の決定書(定款に記載されていれば不要): 定款に記載されていない場合に必要です。
代表社員の就任承諾書: 代表社員が就任を承諾したことを示す書類です。
払込みがあったことを証する書面(払込証明書): 通帳のコピーと合わせて提出します。
印鑑(改印)届書: 法人実印を法務局に届け出るための書類です。
代表社員の印鑑登録証明書: 代表社員個人の印鑑登録証明書(3ヶ月以内に発行されたもの)が必要です。代表社員が複数いる場合は全員分。
登記すべき事項を記録したCD-Rまたは書面: 会社の登記事項を記載したものです。
収入印紙貼付台紙: 登録免許税分の収入印紙を貼ります。
書類は、ホチキスなどでまとめて提出します。正しい順番で綴じる必要がありますので、法務局のウェブサイトや手引きを確認しましょう。
登記申請は、直接法務局へ持参する以外に、郵送やオンライン申請も可能です。
登記申請後、不備がなければ1週間~10日程度で登記が完了し、会社が正式に設立されます。設立日は、登記申請書が法務局に到達した日となります。
会社設立後の手続き
登記が完了したら、会社としての活動を開始できます。しかし、まだいくつか必要な手続きがあります。
口座開設:登記がされたら、登記簿謄本を取得し銀行に行って合同会社の預金口座を開設し、出資金を振り替えます。
税務署への届出:会社の所在地を管轄する税務署に「法人設立届出書」などを提出します。その他、青色申告の承認申請書、給与支払事務所等の開設届出書なども必要に応じて提出します。
都道府県税事務所・市町村役場への届出:各自治体にも法人設立の届出を行います。
年金事務所への届出:社会保険(健康保険、厚生年金保険)の加入手続きを行います。
労働基準監督署・ハローワークへの届出:従業員を雇用する場合に必要となります。
設立にかかる費用
合同会社の設立にかかる主な費用は以下の通りです。
登録免許税: 資本金の額の0.7%ですが、最低6万円です。
定款の収入印紙代: 紙の定款の場合4万円(電子定款の場合は0円)。
印鑑作成費用: 数千円~数万円。
印鑑証明書取得費用: 数百円。
もし、ご自身で手続きを進めるのが難しいと感じるようでしたら、司法書士や税理士などの専門家への依頼も検討してみてください。専門家に依頼することで、手続きの手間や時間を大幅に削減でき、書類の不備なども防ぐことができます。
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