カテゴリー: 賃金

  • 行事などの費用を会社が負担した場合は一定の要件を満たせば非課税です

    会社が社員旅行、運動会、忘年会、新年会などの行事を福利厚生目的で実施し、その費用を負担した場合でも、一定の条件を満たせば従業員に所得税は課税されません。経理上は「福利厚生費」として処理できます。

    非課税となるための主な条件

    1. 行事が全従業員(または部署単位であれば全員)を対象としていること
    2. 費用が社会通念上相当な金額であること

    これらの条件を満たさない場合、参加した従業員に対する現物給与として課税されます。

    社員旅行の場合

    次の条件を満たす場合は、社員旅行の費用は非課税となります。

    1. 旅行期間が4泊5日以内であること(海外旅行の場合は外国滞在日数が4泊5日以内であること)
    2. 参加人数が全体の半数以上であること(事業所・支店単位で実施する場合は、その単位で半数以上)

    ただし、上記を満たしていても、著しく豪華な旅行など社会通念上相当でない場合は課税されることがあります。

    また、会社が関与せず、従業員が独自に企画した旅行に会社が費用を援助した場合は、その援助額が給与として課税されます。

    (所得税基本通達36-30)

    趣味・同好会活動への援助

    従業員が自主的に行う同好会活動への援助は、その物品や用具を会社が他の資産と同様に管理していれば非課税とされます。
    一方、各人に支給され、実質的に個人所有となる場合は給与とみなされる可能性があります。

    不参加者への金銭支給

    自己都合で行事に参加しなかった従業員に、参加費相当額を現金で支給すると、参加者・不参加者ともに給与として課税されます。

    ただし、会社の都合で参加できなかった者にのみ費用相当額を支給する場合は、その者だけが給与として課税されます。


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  • 従業員への食事支給は非課税になることがあります

    社員食堂や仕出弁当の食事

    会社が従業員(役員を含む)に食事を提供する場合、次の両方の条件を満たせば所得税は課税されません(所得税基本通達36-38)。

    1. 従業員が「食事の価額」の半分以上を負担していること。
    2. 「食事の価額」から従業員負担額を差し引いた金額が、1か月あたり3,500円(税抜)以下であること。

    「食事の価額」とは、仕出弁当の場合は業者への支払額、社員食堂直営の場合は材料費や調味料など直接の原価合計をいいます。

    なお、上記の3,500円を現金で支給した場合は「食事の現金支給」となり、現物支給ではないため課税対象になります。


    1日あたりの食事の価額が500円で、会社が200円を負担する場合(出勤20日とする)

    1. 食事の価額:500円 × 20日 = 10,000円
    2. 従業員負担:300円 × 20日 = 6,000円
    3. 会社負担:10,000円 − 6,000円 = 4,000円

    この場合、①半分以上負担の条件は満たしていますが、②の会社負担額が月3,500円を超えているため非課税にはなりません。
    非課税とするには、会社負担額を3,500円以下に抑える必要があり、この例では1日あたり175円以下の負担にすれば条件を満たします。

    残業・宿直・日直時の食事提供は原則非課税

    残業、宿直、日直勤務を行った従業員に対し、通常勤務時間外の勤務として食事を現物支給する場合は所得税は課税されません。現物支給が条件であり、現金支給した場合は給与所得として課税されます。

    深夜勤務者の夜食手当の非課税基準

    午後10時から翌午前5時までの間に勤務する者に対し、次の全てを満たす場合は夜食手当が非課税となります。

    1. 正規の勤務時間の一部または全部が深夜に及ぶこと
    2. 弁当や食事の提供が困難なため、現金で支給すること
    3. 支給額が勤務1回につき300円以下であること

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  • 従業員に社宅を提供する場合の課税関係

    会社が従業員に社宅や寮を貸与する場合、本人から1か月当たり一定額以上の家賃を受け取っていれば、所得税は課税されません。

    一定額の家賃の算出

    所得税基本通達36-38による簡便計算式は次のとおりです。

    一定額の家賃 =

    1. (その年度の建物の固定資産税課税標準額) × 0.2%
    2. + 12円 ×(建物の総床面積(㎡) ÷ 3.3)
    3. +(その年度の敷地の固定資産税課税標準額) × 0.22%

    この合計額が1か月当たりの基準額となります。

    • 無料で貸す場合 → この基準額全額が給与として課税
    • 基準額より低い家賃を受け取る場合 → 基準額 − 受取額 が課税対象
    • ただし、受取額が基準額の50%以上であり、かつ労務提供上必要と認められる場合には、その差額を課税しない取扱いがあります(役員は対象外)。

    (国税庁タックスアンサー2597)

    特殊職種の場合の非課税取扱い

    看護師、守衛など、職務遂行上やむを得ない理由で社宅・寮を提供する場合は、無料であっても給与として課税されない場合があります。

    社会保険・労働保険での扱い

    • 社会保険
      厚生労働大臣が都道府県ごとに告示で定める標準価額に基づき、報酬に算入します。家賃徴収をしている場合は、徴収額を差し引いた金額が報酬となります。
    • 労働保険
      無償・一部負担の社宅提供は保険料の対象外。ただし、社宅を利用しない従業員への住宅手当は賃金として保険料の対象になります。

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  • 最低賃金法のあらまし

    最低賃金法とは

    最低賃金法(さいていちんぎんほう)とは、使用者が労働者に対して支払う給与の最低額を定めた法律のことです。労働者の安定した生活や、労働力の向上を目的としています。最低賃金は各都道府県ごとに定められています。

    気付かぬうちに最低賃金法に違反することがないように、毎年の最低賃金改定に注意を払い、常に最低賃金を上回る賃金を支払わなければなりません。

    ここでは、最低賃金法の概要について解説します。

    都道府県別に最低賃金が定められている

    賃金の額は、最低賃金制度で決められた最低賃金を下回ってはいけません。最低賃金として示されるのは時間給です。月給等の場合は、時間当たりの賃金を計算して、最低賃金額と比較します。

    最低賃金額は、都道府県ごとに最低賃金審議会の審査を経て都道府県労働局長が決定して官報で公示します。最低賃金は毎年1回、10月頃に変わります。

    最低賃金は時間給で示されるので、時給の場合は比較が容易ですが、日給や月給の場合は、時間換算して違反にならないかどうか確認する必要があります。
    日給の場合=日給÷1日の所定労働時間
    月給の場合=月給÷1か月平均所定労働時間
    ただし、支払った給料から、次の項で説明する「対象とならない賃金」を控除する必要があります。

    また、1か月平均所定労働時間もばくぜんと算出しがちですが、しっかり計算しましょう。
    まず、その年の暦日数を把握したうえで、事業場の休日数をカレンダー等をチェックして算出します。
    暦日数が365日で、休日数が105日、一日の所定労働時間が8時間の場合は次の式になります。
    (365日-105日)÷12ヶ月×8時間≒173.3h

    端数処理は、労働者に有利に、が基本ですから、切り捨てましょう。

    最低賃金の対象にならない賃金

    最低賃金の対象となる賃金は、通常の労働時間、労働日に対応する賃金に限られるので、実際に支払われる賃金から次の賃金を除外したものが対象となります。
    1.臨時に支払われる賃金(結婚手当など)
    2.1ヶ月を超える期間ごとに支払われる賃金(賞与など)
    3.所定時間外労働、所定休日労働及び深夜労働に対して支払われる賃金(割増賃金など)
    4.精皆勤手当(一定期間の所定労働日において、就業規則等の定めるところにより遅刻、早退、欠勤等が一定回数以下の労働者に対して支払われる賃金)
    5.通勤手当(通勤労働者に対して、使用者が通勤費を負担するために、実費弁償的な手当として支払われる賃金)
    6.家族手当(扶養家族のある労働者に対して、手当として支払われる賃金)

    一見して給料が多いように見えても、手当の含める割合が大きいときは最低賃金法に違反している場合があります。注意が必要です。

    関連記事:臨時の賃金、臨時に支払われる賃金とは

    最低賃金の種類

    業種によっては、地域別最低賃金をクリアしていても違反になることがあります。最低賃金額は2種類あります。地域別最低賃金と産業別最低賃金です。地域別最低賃金は都道府県ごとに定められます。産業別(特定)最低賃金は、一定の事業若しくは職業に対して適用される最低賃金です。両方の最低賃金額が適用されるときは、産業別最低賃金が優先します。

    他の都道府県に派遣された労働者には、派遣先の地域(産業)の最低賃金が適用されます。

    最低賃金の適用を除外される人

    最低賃金は、原則として常用臨時を問わず、パート・アルバイトの雇用形態を問わず、すべての労働者に適用されますが、

    ①障害等により作業能率が著しく劣る労働者
    ②試の使用期間中の者
    ③認定職業訓練を受ける者のうち一定の者
    ④軽易な作業に従事する者
    ⑤断続的労働に従事する者

    については、都道府県労働局長の許可を得ることで最低賃金を下回る額に減額できる制度があります。上記に該当するとしても許可が必要です。許可申請書の提出先は事業場の所在地を管轄する労働基準監督署です。

    出来高払い制の賃金

    労働基準法第27条で、「出来高払制その他の請負制で使用する労働者については、使用者は、労働時間に応じ一定額の賃金の保障をしなければならない」と規定しています。

    よって、ある月に、出来高に応じて計算した賃金が最低賃金法による最低賃金に満たない場合は、不足の分を支給しなければなりません。

    周知義務がある

    その事業場に適用される最低賃金の額は、就業規則等と同じく周知義務があります。使用者は、掲示等するなどして最低賃金額を労働者に周知させなければなりません。改定後の金額が記載されたリーフレット等を事務所に掲示するなどの方法で周知しましょう。


    会社事務入門賃金・給与・報酬の基礎知識賃金はどう決まる?― 労働法で定められている「賃金のルール」総まとめ>このページ

  • 資格手当について

    資格手当とは

    資格手当は、その資格がなければ会社の業務が成り立たない場合、その資格の保持者に支給する手当です。

    病院における医師、薬局における薬剤師などがあります。基本給を大きく上げた場合、基本給体系のバランスが崩れるため、手当で待遇を調整しています。

    資格手当の対象者と支給額

    どの資格を支給対象にするかは、それぞれの会社の規程によります。

    就業規則規定例

    資格手当の規定例→資格手当|就業規則

    社会保険等の扱い

    資格手当は、所得税では非課税ではありません。「給与所得」の一部として源泉徴収税の対象になります。

    資格手当は、社会保険料の計算における標準報酬月額の対象になる賃金等に含まれます。

    資格手当は、労働保険料の計算における賃金総額に含まれます。

    資格手当は、基本給とともに、割増賃金の基礎にしなければなりません。

    資格手当の検討事項

    複数の資格を取得している場合の扱いを、決めておく必要があります。例えば、介護福祉士の資格がある人がケアマネジャーの資格をとって、介護の現場からはずれてケアプランの仕事に移った場合、両方の資格に対して支給するのか、資格を利用しているケアマネジャーの資格に対して支給するのか。

    営業担当者が、衛生管理者の資格をとったが、すでに衛生管理者が在籍しているので、その資格は利用しない場合、資格手当の対象にするのか。

    一般的には、会社が活用させてもらう資格に対して資格手当を支給し、活用しないのであれば支給しない場合が多いようです。ただし、勉強した努力を認める意味合いから、受験費用の一部に相当する「合格お祝い金」などの一時金を支給する会社もあります。

    会社事務入門賃金・給与・報酬の基礎知識基本給に加えて支給される手当について>このページ

  • 特殊作業手当について

    特殊作業手当とは

    特殊作業手当は、危険作業、高熱作業、低温作業など、他の社員に比較して危険な仕事や困難な仕事に従事する従業員の給料に加算する手当です。

    所得税等の扱い

    非課税ではありません。「給与所得」の一部として源泉徴収税の対象になります。

    社会保険料の計算における標準報酬月額の対象になる賃金等に含まれます。

    労働保険料の計算における賃金総額に含まれます。

    基本給とともに、割増賃金の基礎にしなければなりません。

    就業規則規定例

    特殊作業手当の規定例→特殊作業手当|就業規則

    検討事項

    どんな仕事でも程度の差こそあれ困難は付きまとうものです。安易に、特定の職場や作業に手当を付与すると、不公平感を生んだり、特権意識を生じたりして職場の雰囲気を悪くする場合があるので注意が必要です。

    会社事務入門賃金・給与・報酬の基礎知識基本給に加えて支給される手当について>このページ