カテゴリー: 評価制度

  • 評価者面談のやり方

    評価者面談とは

    評価は、直接の上司が日常の仕事振りを観察して、所定の評価用紙に記載して、さらに上の上司に提出します。直接の上司の評価が基準になり、最終的には一人一人に「A」「B」「C」などの評語が決まって、評価作業が終了します。

    この「A」「B」「C」などの評語は、昇給や、賞与、昇格に活用されます。

    さて、一人一人の評語がどう決まったかは、上司が本人と面談をして伝えるのが原則です。

    中小企業では、評価の結果を上層部が活用するにとどめてブラックボックスにしていることもあります。しかし、せっかくの評価制度を、本人の改善や成長に役立てるには、評価結果を、本人にフィードバックする必要があります。

    本人に評価結果を伝えるときは、単に通知するだけではなく、面談というかたちで、上司と本人の話し合いの場を持つのが一般的です。この面談において、納得してもらい、改善点などを話し合うのです。これを、「評価面談」「育成面談」などといいます。

    面談の進め方

    面談では、まず本人に自己評価の説明を行ってもらいます。ということは、事前に自己評価を実施していることが前提になります。

    次に、決定された標語を伝え、自己評価と上司の評価の違いとその理由を説明します。部下の自己評価と食い違いがある場合は、しっかりと話し合うことが大事です。特に、本人の点数が高く、上司の点数が低い項目は、本人が「自分はできている」と誤認している項目であり、そのままにしておくといつまでも改善されません。本人が点数を付けた根拠を聞きながら、上司としての見解を述べましょう。

    そして、今後の目標や、将来のキャリアの希望などについて話し合いましょう。このとき、上司からは組織全体として重視していることについての説明をし、組織全体の目標を共有してもらえるようにしましょう。

    面談する際の注意点

    全体として、「褒める」「励ます」が基本です。

    面談の最初には、心をほぐす努力をしましょう。天気や趣味の話しから入るとよいでしょう。

    まずは、褒めましょう。本人がこれまでにした良いことを取り上げましょう。少し大げさでも構いません。

    評価結果と自己評価との間にギャップがある場合には、上司はその理由を説明する必要があります。説明が適当にならないように、事前に何をどう話すか準備しておきましょう。

    面談全体を通しては、指摘や意見は最小限にして、なるべく本人から話してもらいましょう。終わってみたら上司の方が多く話していたということのないように注意しましょう。指導に熱心なあまり、熱く語りすぎて失敗することが多いのです。

    部下が話しているときは、相づちを打つなどして、しっかり聞いていることを積極的にアピールしましょう。

    一緒に考える姿勢も大事です。なかなか答えをだせないことがあるのが普通です。上司がリードしすぎるとどうしても押しつけになります。注意しましょう。

    評価が良くなかった部下に対しては、特に指摘だけで終わらないようにしましょう。成長や努力を認めることが大切です。日頃からちょっとしたよい変化を観察し記憶し、面談で話しましょう。部下は「自分をきちんと見てくれている」と感じ、協力的になることが期待できます。

    「私は評価しているのだけれど、部長がね」という責任転嫁は禁句です。かえって信頼関係を損ないます。

    押しつけは良くないのですが、迎合もだめです。あまり迎合していると指導力を損ないます。

    話すときや聞くときの態度や姿勢が重要です。横柄な態度を取ってはならないのはもちろんですが、いつもの癖で、椅子に踏ん反り返ったり、腕組みをしたりしないようにしましょう。

    感情をコントロールすることが極めて重要です。なお、部下が感情的になってきたと感じたときには、休憩をはさみましょう。別の日に改めて行うことにするのもよいでしょう。

    面談終了後のフォロー

    面談が無事終わるとホッとしますが、それで終わるわけではありません。評価は、一年を通しての作業です。面談で設定した目標などについては、日常的に声掛けをしたり、話し合う機会を設けることが大切です。日頃のコミュニケーションを良くすることで、目標の達成やスキルアップの支援になり、また、次の面談に向けての信頼関係を築くことができます。

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  • 評価エラーについて

    評価制度がどんなに優れていても、評価者が公正に評価を実施しなければ意味がありません。「評価エラー」におちいらないように、評価実施者に対する継続的な注意喚起が必要です。

    評価エラーとは

    評価(人事考課)は、機械で測るようにはいきません。評価するのは人間ですから、間違いや思い込みがある程度発生することは避けられません。

    自分では正しい評価を行っているつもりでも、無意識のうちに誤った評価を実施してしまうことがあります。こうした人間の心理的特性にかかわる評価の誤りを「評価エラー」といいます。

    ここでは、代表的な評価エラーを紹介します。自分の陥りやすい判断の傾向を認識して評価に取り組みましょう。

    評価エラーの種類

    評価エラーには次のようなものがあります。

    ハロー効果

    印象が強いことに評価が影響を受けることです。

    「有名大学をでている」「国家資格を持っている」など、一部の出来事や特徴に引きずられて実際よりも高い評価をつけてしまうことです。逆に「女性だから」「歳だから」など、一部の出来事や特徴に引きずられて実際よりも低い評価をつけてしまうこともハロー効果です。

    「ハロー効果」に要注意!元気=営業、は思い込みかもしれません

    中央化傾向

    評価結果が「標準」や「普通」といった真ん中の評価に偏ることを、中央化傾向または中心化傾向といいます。

    「厳しい評価をつけたらどう思われるかな」「あまり高い評価にすると部長はどう思うだろうか」などと考えたときに中央化傾向があらわれます。

    上司としての自信のなさなどが影響することが多いです。

    中央化傾向は、SABCDの5段階評価で実施した場合、Bが極端に多くなるので、評価結果を見ればすぐに分かります。標準的な配分よりBが多くなったときは見直しが必要です。

    親近感効果

    仕事上のことではなく、出身学校が同じであるとか、同郷であるとか、趣味が同じなどであることに親近感を持ち、それによって甘い評価をしてしまうことです。

    感情的傾向

    嫌いな部下や、反抗的な部下に対して、わざと厳しい評価を下すことがあります。評価者として間違ったやり方であることを承知の上で確信的にやることが多いので、指導してもあれこれ理屈をつけて自分の評価を正当化する傾向があります。2次評価者の役割が重要になるところです。

    外部要因効果

    本人の力よりも、景気の動向や上司の支援などの外部要因を過大、または過小にとらえ、実際よりも厳しい、または甘い評価をしてしまうこと。

    近時点誤差

    評価の直前のことが大きく印象に残り、それによって期間全体を評価してしまうことです。時間がたったことは忘れがちで、直前のことが記憶に残りやすいのでこのようなことが起こります。日頃から部下の行動などをメモに取るなどして、評価期間全体で評価をすることが求められます。

    厳格化傾向

    他人に厳しい性格で、どの人にも必要以上に厳しい評価をしてしまうこと。自分が甘いのか辛いのかというのは、自分ではなかなか認識できないものなので、上司の指摘を素直に聞き、評価者研修で、正しい評価の考え方を理解するように努めましょう。

    寛大化傾向

    他人に配慮する性格で、どの人にも甘い評価をしてしまうことです。自分の部下を優遇して自分に対する評価を上げようとする管理職もこの傾向に陥りがちです。厳格化傾向と同様に、自分が甘いのか辛いのかというのは、自分ではなかなか認識できないものなので、上司の指摘を素直に聞き、評価者研修で、正しい評価の考え方を理解するように努めましょう。

    対比誤差

    定められた「評価基準」を用いないで、「おれの若い頃はもっとできた」などと評価者本人と比べて評価することです。また、自分がパソコンが苦手だと普通の操作でもことさら感心してしまい、高い評価を与えることも、自分と比べているという意味で対比誤差の一つです。自分の能力と対比するのではなく、会社が示した等級や職種に求められる役割、能力、成果に基づいて評価しなければいけません。

    論理誤差

    「よく発言するから積極的に行動するだろう」「明るい性格だから得意先にも好かれるだろう」とか「理工系だから数字に強いだろう」というような、一見すると論理的に関係がありそうな項目で推定的に評価してしまうことを「論理誤差」といいます。関係がありそうで実はないのですから、評価を間違えてしまいます。評価項目ごとにひとつひとつ見ていく必要があります。

    メーキング

    人事考課における「メイキング」とは、評価者が事前に決めた評価結果に合うように、後から理由や事実をでっち上げる評価エラーのことです。先に結論があり、後付けで理由を探します。

    あらかじめ決めている順番になるように点数を操作している評価者がいます


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  • シンプルな評価制度でスタートする

    評価制度に絶対はありません

    人数の少ない会社では、社長がその都度、年齢や入社順、実績などを考慮して給料を決めてもさほど問題なくやっていけますが、組織が大きくなっていろいろな管理職を置くような段階になると、社長一人で隅々まで目配りができなくなるので、納得性を高めるためには、給料の決め方について一定のルールが必要になってきます。

    給料のうち、年齢・勤続年数・学歴・保有資格などによって定める部分は、あまり問題なく決めることができます。しかし、能力・成果・態度などの部分は、目に見える尺度で測れるものは少ないので、「上司が部下の能力等の程度について判定する」ことになります。これを「評価」あるいは「人事考課」といいます。

    評価の制度は、公平さや正確さを追い求めるとどんどん複雑なものになり、実施する従業員が疲れてしまうことがあります。

    ですから、初めて人事考課を導入するときは、背伸びせずに、ごく簡単な制度から始めることをおすすめしています。これでは不十分だという声が上がってきたら、少しずつ改善していけばよいのです。

    そもそも、評価制度は、これが絶対正しいというものは存在しません。評価制度に置いては、努力と結果は比例しないのです。

    どの点を評価するか決める

    評価を実施するには、評価項目と点数配分を決めなければなりません。

    どういう点がよければ優れているといえるのか、どういう点がよければ、当社にとって優れた人材と言えるのかというところをピックアップしたものが評価項目です。

    売上をあげることが大事だと考えれば、どのくらい売上をあげたかが評価項目になります。

    努力することが大事だと考えれば、努力しているかどうかが評価項目になります。 商品知識が大事だと考えれば、商品知識を熟知しているかどうかが評価項目になります。

    評価項目は一つということはありません。上記のように、大事だと思うところをピップアップして評価項目を決めます。

    評価項目の決め方

    誰が誰を評価するかを決める

    次に、誰が誰を評価するを決めます。すぐ上の上司が評価するのが一般的です。誰が誰を評価するかは、何らかのかたちで社員に分かるように示す必要があります。

    評価項目ごとに点数をつける

    各項目ごとに点数を割り当てます。例えば、次のようになります。

    判断目安配点
    他の模範となっている10点
    優れているほうである8点
    標準に達している6点
    努力が必要である4点
    大きな努力が必要である2点

    例えば3人の社員がいるとして、項目ごとに点数を配分してみます。

     甲君乙君丙君
    売上高10点4点6点
    努力4点10点8点
    商品知識4点6点10点
    合計18点20点24点

    この例だと、一番の上位は丙君だということになります。

    これは納得できないと思う人もいると思います。会社に現実に貢献しているのは売上高の評価が高いA君ではないかと。

    それであれば、売上高だけは10点満点でなく20点満点にするという決め方もできます。すべての評価項目が同格であるということはあり得ませんから、会社として何を重視するかで点数配分を決めればよいのです。

    点数をもとに評語を決定する

    各人の点数を上から順番に並べて、評語を割り当てます

    例えば、上位10%が「A」、次の20%が「B」、次の40%が「C」、次の20%が「D」、次の10%が「E」など、会社の任意で設定します。 このA~Eを「評語」といい、この評語を昇給、賞与、昇級などの作業に反映させます。

    人事考課規程

    上記の内容を文書化して人事考課規程を作りましょう。

    人事考課規程の例

    人事考課規程ができたら、必ず説明会を実施しましょう。また、評価者教育も必要です。

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