Last Updated on 2025年6月21日 by 勝
有期雇用契約書の不更新条項とは
有期雇用契約における「不更新条項」とは、契約期間の満了をもって、その契約は更新しない(または更新しない場合がある)ことを明記した条項のことです。
具体的には、以下のような文言が契約書に記載されることがあります。
「本契約は、期間満了をもって終了し、更新しないものとする。」
「本契約は、原則として更新しない。ただし、業務上の必要性、勤務成績、態度等を考慮し、会社が認めた場合に限り、更新することがある。」(この場合は「更新する場合がある」ことを明記しているに過ぎず、明確な不更新条項とまでは言えないこともあります。)
この条項を契約書に含める目的は、使用者側が将来の雇い止めの際のトラブルを避けるために、更新を期待させないことを明確にすることにあります。
不更新条項の法的効力
不更新条項が契約書に明記されている場合でも、それだけで雇い止めが常に有効になるわけではありません。日本の労働契約法第19条(いわゆる「雇い止め法理」)が適用される可能性があります。
たとえ契約書に不更新条項があっても、長期にわたる更新実績があったり、使用者側が更新を期待させるような言動をしていたりする場合には、不更新条項の存在だけをもって雇い止めが正当化されるとは限りません。裁判所は、個別の事情を総合的に考慮して判断します。不更新条項は、あくまで雇い止めの有効性を判断する際の要素の一つに過ぎません。
関連記事:雇い止めのルールや雇い止めが無効になるケースについて解説
急に不更新条項を追加することの有効性
これまで不更新条項がなかった有期雇用契約に、急に不更新条項を追加することについては、その有効性が問われる可能性があります。
労働者の合意がある場合
原則として、労働契約の内容を変更するには、労働者と使用者双方の合意が必要です。
労働者が不更新条項の追加に同意し、新たな契約書に署名・押印すれば、その条項は有効となります。ただし、同意が真意に基づかない、例えば会社の圧力を受けてやむなく同意したような場合は、後々問題となる可能性はあります。
労働者の合意がない場合
労働者が不更新条項の追加を拒否した場合、使用者が一方的にその条項を有効とすることはできません。契約期間中の労働条件は、原則として労働者の同意なく不利益に変更することはできないためです。
このような場合、使用者が一方的に不更新条項を追加した新しい契約書への署名を求めても、労働者が署名を拒否すれば、その不更新条項は労働契約の内容とはなりません。
ただし、次回の契約更新時に、使用者側が不更新条項を追加した新しい契約内容を提示し、労働者がそれに同意して契約を更新した場合は、その不更新条項は有効になります。しかし、この場合でも、雇い止め法理の適用が排除されるわけではないため、注意が必要です。
特に問題となるのは、すでに長期にわたる更新が繰り返され、労働者が更新を当然視していたようなケースで、急に不更新条項を追加する場合です。
このような状況で不更新条項が追加されたとしても、労働者が「更新されるだろう」と合理的に期待する理由がある場合には、雇い止め法理が適用され、雇い止めが無効と判断される可能性は十分にあります。
まとめ
不更新条項は、契約の更新をしない(またはしない場合がある)ことを明記した条項です。
不更新条項がある場合でも、労働契約法第19条の「雇い止め法理」が適用され、雇い止めが無効となる可能性があります。不更新条項はあくまで判断要素の一つです。
これまで不更新条項がなかった契約に、急に不更新条項を追加するには、原則として労働者の合意が必要です。労働者の同意なく一方的に追加された不更新条項は有効とはなりません。
たとえ不更新条項が追加されたとしても、それまでの契約更新の実績や使用者側の言動によって労働者に更新の合理的な期待が生じている場合、雇い止め法理の適用により、雇い止めが無効と判断されることがあります。