概要
アウトプレースメントとは従業員の転職を支援するサービスやそのビジネスのことです。日本語では再就職支援とも呼ばれます。
企業が雇用調整の必要があって人員削減を行う場合に、基本的にはその企業の人事部門等が退職することになった従業員の再就職などについて一定の支援を行いますが、その退職者支援サービスを外部の専門企業に委託することを一般的にアウトプレースメント(outplacement)といいます。
アウトプレースメントは人員整理の場合だけでなく、定年退職者に対する再就職支援事業としても実施されます。
委託を受けた支援サービスの専門企業は、退職予定者に対して教育研修を行ったり、求人を紹介するなどの再就職の支援を行います。この費用は人員整理を行う企業が負担します。
アウトプレースメントは、アメリカにおいて誕生したビジネスですが、日本でもバブル崩壊後リストラを行う企業が増加したことから人材ビジネスの一つとして定着しました。
導入する目的
アウトプレースメントを導入する主な目的は以下の通りです。
- 円満な退職の実現とトラブル防止:
- 会社都合で退職(解雇や希望退職の勧奨など)となる従業員に対し、企業が再就職のサポートを行うことで、従業員の心理的負担を軽減し、労使間の摩擦や紛争を未然に防ぎます。
- 企業の社会的責任(CSR)の遂行:
- 従業員の雇用を維持できなくなった場合でも、次のキャリアへの移行を支援することで、企業としての社会的責任を果たします。
- 残る従業員への配慮と企業イメージの維持:
- 退職者への誠実な対応を見せることで、会社に残る従業員の不安を和らげ、企業のイメージや士気の低下を防ぎます。
主なサービス内容
専門の再就職支援会社が提供する具体的なサービスは多岐にわたります。
- キャリアカウンセリング:
- 専門のカウンセラーが、個々のスキル、経験、ライフプランを考慮した上で、今後のキャリア設計や方向性を一緒に見つけます。
- 再就職活動の準備支援:
- 履歴書、職務経歴書などの応募書類の作成指導や添削。
- 模擬面接や選考対策のアドバイス。
- 求人情報提供とマッチング:
- 支援会社が保有する求人情報や提携エージェントの案件を紹介し、求職者の希望や能力に合った再就職先をマッチングします。
- 活動場所・設備の提供:
- 求職活動のためのオフィススペースや、パソコン、電話などの設備を提供します。
- 教育・研修:
- 再就職に必要なスキルアップのための研修やセミナーを提供します。
注意点
- 費用負担は企業側:サービスにかかる費用は、人員削減を行う企業が負担します。
- 再就職の保証ではない:アウトプレースメントはあくまで「再就職の支援」であり、必ずしも再就職を保証するものではありません。この点は退職対象者に対し、事前に正確に伝える必要があります。
アウトプレースメントは、人員削減という難しい局面に際して、企業と従業員双方にとって円満な解決を図るための重要な手段とされています。
利用方法
主な再就職支援会社
アウトプレースメントサービスは、主に大手の人材サービス企業や専門の再就職支援会社によって提供されています。日本における代表的な企業には以下のようなものがあります。
- リクルートキャリアコンサルティング(RCCC):
- リクルートグループの再就職支援専門会社です。業界最大手の一つであり、豊富な実績とノウハウを持っています。
- パソナキャリア(旧パソナキャリアコンサルティング):
- パソナグループの一員で、再就職支援においても長年の実績があります。
- マイナビ:
- 新卒・中途採用で知られるマイナビも、企業向けの再就職支援サービスを提供しています。
これらの企業は、全国的なネットワーク、多様な業界・職種への求人情報、経験豊富なカウンセラーを揃えており、企業のニーズや退職対象者の属性に合わせてサービスを提供しています。
費用相場
アウトプレースメント(再就職支援)にかかる費用は、主に対象者一人あたりの定額制で、相場は50万円から100万円程度が一般的です。
この費用は、企業の規模、支援対象者の人数、年齢層、および選択するサービス内容(コースの期間や手厚さ)によって変動します。
アウトプレースメントの費用は、主に以下のサービス提供にかかるコストをパッケージ化したものです。
- キャリアカウンセリング費用: 経験豊富なコンサルタントによる個別面談やアドバイス
- 活動場所・設備利用料: 再就職支援会社が提供するオフィススペース、パソコン、電話などの利用
- セミナー・研修費用: 応募書類作成、面接対策、ビジネススキルのブラッシュアップ等の各種セミナー
- 情報提供費用: 支援会社独自の求人情報や求職活動ツールの利用
費用は、サービスを提供する企業と契約を結ぶ送り出し側の企業が全額負担します。
契約形態と支援期間
アウトプレースメントの契約は、主に期間を定めた定額契約が中心です。
1. 契約形態
- 期間定額制(主流):
- あらかじめ契約期間(例:6ヶ月、9ヶ月、1年間など)を設定し、期間中のサービス利用料をまとめて支払う形態です。
- 期間内であれば、再就職が決定しても、途中で契約が終了しても料金は変わりません。
- 期間無制限/成功報酬型:
- 再就職が決定するまで支援を継続する期間無制限コースを設定している業者もありますが、その場合、料金は通常、定額コースよりも高額になります(例:100万円以上)。
- また、一部では、定額に加えて成果報酬(再就職決定時に追加で料金が発生)を設定しているケースもあります。
2. 標準的な支援期間
支援期間は企業が選択しますが、一般的には以下の期間で設定されることが多いです。
- 6ヶ月〜1年間(主流)
多くの支援サービスでは、1年間の契約を基本とし、対象者の状況や企業の予算に応じて期間を短縮または延長する形を取っています。
依頼する最適なタイミング
アウトプレースメントの依頼は、退職対象者に退職勧奨を行う前、または同時期が最適です。
- 準備期間の確保: 会社側は、支援会社の選定や契約に時間を要するため、早めに動くことが重要です。
- 早期開始のメリット: 退職対象者にとって、不安な時期にすぐに活動を開始できることが、心理的にも再就職の成功率を高める上でも効果的です。
契約までの流れ
アウトプレースメントの依頼は、主に人事部門が中心となって進めます。
- ニーズの明確化
- 支援対象となる人数、年齢層、職種、希望する支援期間などを明確にします。
- 企業が特に重視する目的(例:円満な退職、早期の再就職など)を整理します。
- 支援会社の選定と比較検討
- 上記の代表的な業者を含む複数の支援会社に問い合わせ、資料請求やオリエンテーションを受けます。
- 各社の実績(再就職決定率、平均活動期間)、サービス内容(カウンセラーの質、求人ネットワーク)、料金体系を比較検討します。
- 契約とサービス設計
- 最適な支援会社を選定し、契約を締結します。
- 企業と支援会社の間で、サービス提供の具体的な手順やスケジュール、料金(通常、対象者一人あたりの定額制または月額制)を確定します。
- 従業員への説明と紹介
- 退職対象となる従業員に対し、企業側からアウトプレースメントサービスの内容と利用方法を説明し、支援会社へ紹介します。
- 従業員がサービス利用に同意した後、支援会社と従業員の間で個別面談が開始され、本格的な支援がスタートします。
労働移動支援助成金の活用
企業がアウトプレースメントを導入し、一定の要件を満たす場合、国から労働移動支援助成金(再就職支援コース)を受け取れる可能性があります。
- この助成金は、費用の一部をカバーし、企業側のコスト負担軽減に役立ちます。
- 利用にはハローワーク等への計画の届け出など、厳密な要件と手続きが必要です。
費用を抑えるためにも、アウトプレースメントのサービスを検討する際には、助成金の活用についても併せて専門業者に相談することをおすすめします。


