出勤簿の記載事項と管理上の注意点

労働基準法

出勤簿の作成義務

出勤簿は、賃金台帳や労働者名簿とともに法定三帳簿の一つといわれています。ただし、賃金台帳は労働基準法108条、労働者名簿は107条に明記されていますが、労働基準法に出勤簿の文言はありません。

出勤簿は、第109条の「賃金その他労働関係に関する重要な書類」に該当します。

(記録の保存)
第109条 使用者は、労働者名簿、賃金台帳及び雇入れ、解雇、災害補償、賃金その他労働関係に関する重要な書類を五年間保存しなければならない。

そして、「労働時間の適正な把握のために使用者が講ずべき措置に関するガイドライン」に、「使用者は、労働時間を適正に管理するため、労働者の労働日ごとの始業・終業時刻を確認し、これを記録すること」とあります。この「記録」が「出勤簿」です。

出勤簿とは、出勤日ごとに実際に仕事を始めた時刻と実際に仕事を終えた時刻が明示されていて、1か月の労働時間が集計されたものです。

出勤簿の記載項目

この「労働時間を記録した書類」(一般的に出勤簿または勤怠記録と呼ばれるもの)に記載すべき事項は、厚生労働省のガイドラインなどによって示されています。

特に重要なのは、正確な賃金計算と労働時間の上限規制をチェックできることです。

法定帳簿としての出勤簿には、主に以下の項目を労働者ごと、日ごとに記載する必要があります。

必須記載事項詳細
労働者の氏名誰の記録であるかを特定するため。
出勤日と労働日数実際に労働した日付と、賃金計算期間内の合計労働日数。
始業・終業の時刻労働者が実際に労働を開始・終了した時刻。タイムカード、PCログ、勤怠管理システムなどの客観的な記録に基づいていることが必要です。
休憩時間実際に取得した休憩時間。特に、休憩を「中抜け」として取っている場合は、その開始・終了時刻も明確に記録する必要があります。
日ごとの労働時間数休憩時間を除いた実労働時間数。
時間外労働の時間数所定労働時間を超えて労働した時間外労働(残業)の時間数。
休日労働の時間数法定休日(週1回など)に労働した休日労働の時間数。
深夜労働の時間数午後10時から午前5時までの間に労働した深夜労働の時間数。

補足:

  • 労働時間の種類ごとの時間数: 賃金台帳の作成や36協定のチェックのために、時間外労働、休日労働、深夜労働の種類ごとの時間数を明確に記録することが極めて重要です。
  • 様式の自由: 出勤簿の書式は自由であり、紙の台帳、タイムカード、Excel、勤怠管理システムなど、法令で定める必要事項が網羅されていれば、どのような形式でも構いません。
  • システム内に保存:給与計算などに電子的に保存しているときは、必要なときにプリントアウトできるのが条件です。

タイムカードで代用できるか

従業員の労働時間管理をタイムカードだけでやっている会社もありますが。タイムカードの打刻時間をそのまま労働時間としている場合を除き、タイムカードが出勤簿だと言ってしまうのはリスキーです。

出勤簿に求められている「始業・終業時刻」は、単にタイムカードに打刻された時刻ではなく、賃金の支払対象になる実際に働いた労働時間の「始業・終業時刻」だからです。

タイムカードの打刻時間が賃金を払う労働時間と一致しているなら問題ありません。しかし、たとえば、タイムカードを打刻してから始業のチャイムがなるまでの間、机でぼんやりと始業時間を待っていたり、同僚と雑談していることもあると思います。「タイムカードが出勤簿だ」ということにするのであれば、そうした時間も労働時間にカウントしなければならなくなります。

正確な労働時間をもとに給与計算をするには、タイムカードと作業日報・残業申請書などの実際の労働時間を証明する資料を照合して、実際の労働時間を記録した出勤簿を作成するのが原則的なやり方です。

もし、タイムカードを出勤簿として使いたいのであれば、タイムカードに実際の始業・終業時刻を追加記入する必要があります。

電子的保存

労働時間の記録に関する書類(出勤簿など)は、必ずしもすべてをプリントアウトして紙で保存する必要はありません。

適切な要件を満たしていれば、人事管理システム(勤怠管理システム)などの電子データとして保存することが認められています。

電子保存(システム保存)の要件

労働基準法第109条に基づく労働関係書類を電子データで保存する場合、以下の4つの要件をすべて満たす必要があります。

法定要件の具備と表示・印字能力
  • 法令で定められた記載事項(始業・終業時刻、労働日数、時間外労働時間数など)をすべて具備していること。
  • その記録を画面上に速やかに表示でき、かつ紙に印字(プリントアウト)できること。
迅速な提出能力
  • 労働基準監督官の臨検時(立ち入り調査)など、提出が必要な場合に、直ちに必要事項を明らかにでき、提出(紙またはデータ)し得るシステムとなっていること。
誤消去・改ざん防止
  • 記録が誤って消去されないようになっていること。
  • データの入力・修正履歴が残り、不正な改ざんができないよう、十分なセキュリティ措置が講じられていること。
長期保存性
  • 労働基準法で定められた期間(当分の間は3年間、将来的には5年間)にわたって、記録を損なわれることなく確実に保存できること。

人事管理システムを利用した電子保存は、紙の書類を保管する手間やコスト、紛失リスクを削減できるだけでなく、法令遵守の観点からもメリットが大きいです。現在、多くの企業が上記要件を満たす勤怠管理システムを導入し、電子データでの保存を行っています。

保存期間

出勤簿の保存期間は5年です(2020年4月以降)。ただし、経過措置として3年保存です。タイムカード等、時間外勤務の申請書、その他の労働時間を証明できる書類も同様に原則として5年保存です。

なお、賃金台帳を源泉徴収簿と兼ねている会社では、出勤簿やタイムカードなど勤務時間を証明する書類も含めて、確定申告書を提出する期限の翌日から7年間の保存が必要となるとされています。具体的には税理士等の専門家にご確認ください。

罰則

出勤簿を調製していなかったり、虚偽の記載をしたような場合には30万円以下の罰金を科せられる可能性があります。