Last Updated on 2025年8月6日 by 勝
被保険者資格取得届や算定基礎届などの社会保険関係の書類提出をインターネットでできるということですが、長年、紙ベースで作業してきたので電子申請と言われてもイメージがわきません。どういう手続きでどういう操作をするのか具体的に教えてください。
インターネットで手続きする
おっしゃる通り、長年紙ベースで作業されてきた方にとって、電子申請は最初はイメージがわきにくいかもしれませんね。書類提出を電子申請で行う具体的な手続きと操作、そして業務ソフトの活用について、わかりやすく解説します。
社会保険・労働保険の手続きを電子化するメリット
電子申請は、これまで紙ベースで行っていた公的手続きを、インターネット経由で行う方法です。算定基礎届や月額変更届(社会保険)、雇用保険の資格取得届や離職票(労働保険)など、多くの手続きに対応しています。
電子申請のメリット
- 時間とコストの削減: 役所の窓口に行く、書類を郵送する、手作業で書類を作成するといった手間がなくなります。郵送代や交通費も削減できます。
- ヒューマンエラーの防止: 業務ソフトと連携すれば、従業員データから自動で書類を作成できるため、手作業による入力ミスや計算ミスを防げます。
- 手続きの効率化: 24時間365日いつでも申請できます。また、書類の控えを電子データで管理できるため、ペーパーレス化にもつながります。
電子申請の流れと必要な準備
電子申請を始めるには、以下の手順で準備を進めます。
1. 電子証明書の取得
電子申請には、手続きを行う人が本人であることを公的に証明する「電子証明書」が必要です。これは、インターネット上の実印のようなものです。
マイナンバーカードを申請する際に、通常は「電子証明書を付与する」という項目にチェックを入れるだけで、カードの交付時に電子証明書も一緒に搭載されます。
注意が必要なのは、法人の手続きの場合です。
個人事業主の場合は、ご自身のマイナンバーカードの電子証明書で手続きが可能です。しかし、会社としての手続き(法人)を行う場合は、法人代表者のマイナンバーカードの電子証明書では対応できない手続きがあります。その場合は、法務省が発行する「商業登記電子証明書」を別途取得する必要があります。
2. e-Govの利用準備
政府(デジタル庁)が運営する「e-Gov(イーガブ)」という電子申請専用のシステムを利用します。e-Govのホームページから専用のアプリケーションをPCにインストールし、電子証明書を使ってログインすることで、手続きが可能になります。
書類の作成から提出までの具体的な操作イメージ
e-Govを利用する場合の、具体的な操作イメージは以下のようになります。
- 手続きの選択: e-Govの画面で、「算定基礎届(社会保険)」や「雇用保険資格取得届(労働保険)」など、提出したい手続きを選択します。
- データの入力: 従業員の氏名や賃金などの必要情報を画面上で入力します。業務ソフトと連携していれば、これらのデータを自動で取り込むことができます。
- 電子署名の付与: 入力したデータに、電子証明書で「電子署名」を付与します。これは、紙の書類でいう押印にあたります。
- 送信と受付確認: データを送信すると、e-Govから受付通知が発行されます。これが紙の書類の受付印に相当します。
電子署名を付与するとは
「電子証明書を付与」という言葉は少し難しく聞こえますが、実際の操作は「電子署名」ボタンを押し、表示された画面で自分の証明書を選択し、パスワードを入力するだけです。
e-Govでの「電子署名」の操作イメージ
e-Govのシステムで書類を作成し、いざ提出する段階になると、以下のように表示されます。
- 「電子署名」ボタンの表示:入力が完了した画面のどこかに、通常は「電子署名」や「署名」といったボタンが表示されます。このボタンをクリックすることで、電子署名を行うためのプロセスが開始されます。
- 電子証明書の選択画面:「電子署名」ボタンをクリックすると、パソコンに接続しているICカードリーダー(そこにマイナンバーカードが差し込まれている状態)や、パソコン内に保存されている電子証明書の一覧が表示されるウィンドウが現れます。
- パスワード入力と署名の実行:表示された電子証明書の中から、今回使用したい証明書を選択します。その後、証明書を利用するために設定したパスワードの入力が求められます。パスワードを入力して「OK」を押すと、電子署名が付与されます。
この一連の流れが、書類に印鑑を押す作業に相当します。物理的な書類に印鑑を押すのと同じように、電子データに「この書類は間違いなく私が作成したものです」という証明を付与する作業なのです。
業務ソフトの活用でさらに効率化
e-Govだけでも電子申請は可能ですが、給与計算や人事労務管理ソフトを導入することで、手続きはさらに楽になります。
- 自動連携: 「MFクラウド人事労務」「freee人事労務」などの業務ソフトは、e-Govと直接連携する機能を備えています。これにより、e-Govの専用ソフトを介さずに、業務ソフトから直接申請データを提出できます。
- データ自動作成: 業務ソフトに登録されている給与や勤怠データをもとに、社会保険や労働保険の書類を自動で作成できます。これにより、手作業での転記ミスや計算ミスが大幅に減少します。
社会保険、労働保険の手続きは、電子申請と業務ソフトの活用によって、大幅な効率化と正確性の向上が期待できます。
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