Last Updated on 2023年10月9日 by 勝
医師による面接指導
長時間労働者への医師による面接指導制度は、健康障害発症のリスクが高まった労働者の心身状況を把握し、問診その他の方法による面接指導を実施し、面接結果を踏まえた措置を行うものです。
労働安全衛生法第66条の7~9、労働安全衛生規則第52条の2~第52条の8に定められています。
対象者
医師による面接指導は、1人でも該当する労働者がいる場合は、実施しなければなりません。
ただし、1か月以内に面接指導を受けた労働者等で、面接指導を受ける必要がないと医師が認めた者を除きます。
下記の時間に該当するか否かの算定は、毎月1回以上、基準日を定めて行います。
労働者(裁量労働制、管理監督者含む)
① 義務:労働者の週40時間を超える労働が1月当たり80時間を超え、疲労の蓄積が認められる労働者(申出を受けたとき実施)
② 努力義務:事業主が自主的に定めた基準に該当する者
研究開発業務従事者
① 義務:月100時間超の時間外・休日労働を行った者
② 義務:月80時間超の時間外・休日労働を行い、疲労蓄積があり面接を申し出た者
③ 努力義務:事業主が自主的に定めた基準に該当する者
高度プロフェッショナル制度適用者
① 義務:1週間当たりの健康管理時間が40時間を超えた時間について月100時間超行った者
② 努力義務:①の対象者以外で面接を申し出た者
健康管理時間:労働時間等設定改善委員会において労働者が事業場内にいた時間と事業場外において労働した時間との合計の時間
実施者
面接指導の実施者は医師となっていますが、産業医がいる場合は産業医に依頼します。
産業医を選任する必要がない50人未満の事業所では、地域産業保健センターに依頼し、センターの医師が面接指導を実施することができます。
面接指導の流れ
労働者からの申し出
↓
面接指導の実施
↓
医師の意見
↓
事後措置の実施
↓
記録を作成
労働者からの申し出
労働者から申し出があることが前提です。事業者は労働者の労働時間を把握して、面接指導を受けるべき基準に達している労働者に対して、その旨の情報を通知しなければなりません。
事業者は産業医に対しても同じ情報を提供します。産業医は要件に該当する労働者に対して申し出を行うように勧奨することができます。
医師による面接指導の実施
申し出からおおむね1か月以内に実施します。
医師は、労働者の勤務の状況、疲労の蓄積の状況その他心身の状況(メンタルヘルス面も含みます。)について確認します。
医師の意見を聴く
面接指導からおおむね1か月以内に実施します。
事業者は、面接指導を実施した労働者の健康を保持するために必要な措置について、医師の意見を聴かなければなりません。
事後措置の実施
事業者は、医師の意見を勘案して、必要があると認めるときは、当該労働者の実情を考慮して、就業場所の変更、作業の転換、労働時間の短縮、深夜業の回数の減少等の措置を講じます。
事業者は、実施した措置の内容に関する情報を医師に提供し、医師は労働者の健康確保の必要がある場合は勧告します。勧告内容は衛生委員会に報告しなければなりません。
記録を作成する
面接指導の結果の記録を作成します。労働者の疲労の蓄積の状況その他の心身の状況、聴取した医師の意見等を記載します。書類の様式に特に定めがないので、医師の報告書をそのまま保存してかまいません。この書類は5年間保存義務があります。
注意点
周知する
事業者は、面接指導等を実施するに当たっては、その実施方法及び実施体制の周知はもちろん、労働者が自分の労働時間数を確認できる仕組みの整備、申出を行う際の様式の作成、申出を行う窓口の設定などの措置を講じて、労働者が申出を行いやすくする観点に立ってその周知を徹底しなければなりません。
衛生委員会が関与する
面接指導について、衛生委員会又は安全衛生委員会は、調査審議を行い、事業者はその結果に基づいて必要な措置を講じなければなりません。
就業規則に規定する
面接指導に準ずる措置
上記の基準に満たない場合でも、時間外・休日労働時間が月45時間超であれば、健康への配慮が必要な者が面接指導等の措置の対象となるよう基準を設定し、面接指導等(医師による面接指導又は面接指導に準ずる措置)を実施することが望まれます。
必要と認める場合は、適切な事後措置を実施することが望まれます。
面接指導に準ずる措置の例
保健師による保健指導を実施する。
疲労蓄積度チェックリストを用いて疲労の度合いを把握する。
事業者が、健康管理について産業医等から助言指導を受ける。
などがあります。
オンラインによる実施
長時間労働やストレスチェックに関連する医師の面接指導は、対面での面接が原則ですが、実施者が表情やしぐさなどを確認できるといった一定の条件を満たせば、テレビ電話など通信機器を用いた面接指導を行うこともできます。
オンラインで行う場合の留意事項が厚生労働省から示されています。
「情報通信機器を用いた労働安全衛生法第66条の8第1項及び第66条の10第3項の規定に基づく医師による面接指導の実施について(令和2年11月19日付け基発1119第2号)」において考え方と留意事項が示されています。(pdfファイル)
以下は抜粋です。
面接指導に用いる情報通信機器
以下の全ての要件を満たすこと。
① 面接指導を行う医師と労働者とが相互に表情、顔色、声、しぐさ等を確認できるものであって、映像と音声の送受信が常時安定しかつ円滑であること。
② 情報セキュリティ(外部への情報漏洩の防止や外部からの不正アクセスの防止)が確保されること。
③ 労働者が面接指導を受ける際の情報通信機器の操作が、複雑、難解なものでなく、容易に利用できること。
情報通信機器を用いた面接指導の実施方法等
以下のいずれの要件も満たすこと。
① 情報通信機器を用いた面接指導の実施方法について、衛生委員会等で調査審議を行った上で、事前に労働者に周知していること。
② 情報通信機器を用いて実施する場合は、面接指導の内容が第三者に知られることがないような環境を整備するなど、労働者のプライバシーに配慮していること。
高ストレス者の面接指導
労働安全衛生法に定められた医師による面接指導は、ここに説明する長時間労働に関するものの他に、ストレスチェックの結果により高ストレス者と判断された労働者に対する面接指導があります。
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