Last Updated on 2023年2月9日 by 勝
戒告処分とは
懲戒処分の中では最も軽い処分に位置づけられます。口頭または文書で公式に注意を与える処分です。始末書の提出をセットにする場合もあります。
軽い処分ではありますが懲戒解雇の一つなので処分決定の手続きは厳正に行わなければなりません。例えば、本人の弁明機会を省略すれば手続きの相当性を欠くとして無効になる場合もあります。懲戒処分をするときの注意点のページの「懲戒処分の条件」の項を参考にしてください。
厳重注意処分、譴責(けんせき)処分という名称を用いることもあります。戒告は注意をする処分で譴責は注意に加えて始末書の提出を伴うもの、と区別している会社もありますが、一般的には区別せずに用いられています。
また、他の懲戒処分と同様に、戒告処分をしたらそれで一件落着としなければなりません。以後の人事考課に影響する仕組みを作っている会社もありますが、何らかの不利益を継続させることになるので二重処分とみなされる可能性があります。また、就業規則に記載していない方法で処分を実施しているとみなされる可能性もあります。注意しましょう。
始末書について
通常、戒告処分について就業規則には「始末書を提出させて将来を戒める。」と記載してあるのが一般的です。
始末書が提出されない場合
処分を本人に通知したが、処分に納得しない従業員が始末書を提出しないというケースがあります。また、処分には同意するが始末書の提出は嫌だとして提出しないというケースがあります。こういう場合はどうすればよいでしょうか?
このような場合は、始末書ではなく、事実経緯のみを記載した報告書の提出を求め、それにも応じない場合は、始末書を提出しなかったことを記録して一件落着にしましょう。戒告処分を下したことで会社の意思表示は終わっているのですから、メンツを重んじて書類一枚のことで深追いするのは得策ではありません。
始末書の提出という業務命令に従わないのですから、業務命令違反でもう一つ処分することがでるという説があります。一方、その事件が戒告処分で決着したのであれば、追加の処分は二重処分にあたる可能性があるという説もあります。後者の方が有力のようです。説が分かれているときは安全策をとる方が無難です。提出しないことを理由とする処分はやらない方がよいでしょう。
始末書の記載内容
始末書に何をどう書くかということでもめることがあります。会社としては反省と謝罪を書かせたいが、本人は受け入れがたいという場合です。会社は、一定の指導はできますが、書かないという者に無理に書かせることはできませんし、書かないことを理由に処分するのは無理筋の面があります。
本人が書ける範囲で書いてもらえばよいでしょう。
説諭について
次に「将来を戒める」の部分です。これは、説諭(説教)するということです。しかし、すでに懲戒処分が決定したのですから、クドクドと言い聞かせるのではなく、戒告処分になったという事実を伝え、「このようなことを繰り返さないよう気をつけてください」という程度で終了しましょう。
戒告処分の基準
何をどれくらいすれば戒告の対象になるのかという基準を、就業規則で決めておく必要があります。
就業規則記載例
(戒告、減給又は出勤停止処分)
第〇条 会社は従業員に対し懲戒処分をすることがある。従業員が次のいずれかに該当するときは、情状に応じ、戒告、減給又は出勤停止とする。
(1)正当な理由なく無断欠勤〇日以上に及んだとき
(2)正当な理由なくしばしば欠勤、遅刻、早退するなど勤務を怠ったとき
(3)過失により会社に損害を与えたとき
(4)素行不良で会社内の秩序又は風紀を乱したとき
(5)第〇条から第〇条の規定に違反したとき
(6)その他、前各号に準ずる不都合な行為があったとき
処分にあたる行為を事前にすべて網羅するのは困難です。当初は簡単に決めておき、不足している事項や不必要な事項に気がついた都度修正を加え、それぞれの会社に適用する就業規則に育てていきましょう。
就業規則に詳細を決めても、実際の適用が難しい場合もあります。遅刻などのように月に何回などと数字で決めることができるものは良いのですが、例えば、仕事上のミスは、本人の不注意の程度、経験年数、損害や被害の程度等によって懲戒を加減する必要があり、なかなか明確に基準を示すことができません。不公平な処分をしてしまえば、当事者のみならず周りの従業員の士気に悪影響を及ぼすことになり、本末転倒という事態になりかねません。
戒告処分は軽い処分ではすが、処分を受けるものにとっては重大なことです。軽い処分であっても手続きを簡単にすることはできません。後述する処分手続きを厳守する必要があります。
重ねての戒告
就業規則に、「懲戒処分を再三にわたって受けたにもかかわらず、なお改善の見込みがないときは解雇」などという規定があるときは、戒告の繰り返しも解雇事由に該当することになります。
しかし、しかし、懲戒処分の原則からすれば、一度処分をした件を蒸し返すことはできません。なので、就業規則に解雇条件の一つとして記載してあっても、実際に解雇を審議するときは、過去の処分の回数だけで解雇を適用することはできません。
個々の非違行為に関連があり、度重なる指導等にも関わらず改善せず、改善の見込みが無いというところまで証明しなければなりません。過去の処分を一つ一つ検討する必要がでてくるので、懲戒処分の記録管理が重要です。
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