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棚卸し作業の進化〜手書きからデジタル〜

Last Updated on 2025年8月11日 by

近年、棚卸しの方法は大きく進化しています。昔ながらの手書き方式から、デジタル技術を活用した効率的な方式へと段階的に移行してきました。

棚卸し作業の進化

第1段階: 手作業での棚卸し

昔ながらの方法で、現物を見ながら在庫を数え、手書きの棚卸表に品名、数量などを記入する方式です。

この方式は、特別な機器が不要で誰でもすぐに始められるという利点がありますが、以下のような課題がありました。

人為的なミスが多い: 数え間違いや、書き間違い、記入漏れが発生しやすい。

時間がかかる: 在庫数が多い場合、作業に膨大な時間がかかる。

データ入力の手間: 手書きのデータを後でパソコンに手入力する必要があり、ここでもミスが発生しやすい。

リアルタイム性の欠如: 集計が完了するまで正確な在庫数が把握できない。

第2段階: バーコードリーダーの導入

棚卸し作業にバーコードリーダーが導入されるようになりました。

バーコードを読み取ることで、棚卸表への記入が不要になり、データ入力の手間やミスが大幅に削減されました。

作業の効率化: バーコードをスキャンするだけで商品情報が自動的に入力されるため、作業時間が短縮される。

ミスの削減: 手書きや手入力によるミスが減る。

データの一元管理: 読み取ったデータはPCに直接転送され、在庫管理システムと連携しやすくなる。

しかし、この段階ではまだ、バーコードを一つずつスキャンする手間や、リーダーを持ち運んで作業する必要がありました。

第3段階: RFID(ICタグ)の活用

近年、さらに進化した方法としてRFID(Radio Frequency Identification)が注目されています。RFIDタグ(ICタグ)を商品に貼り付けることで、複数の商品を一括で、非接触で読み取ることが可能になりました。

劇的な時間短縮: リーダーをかざすだけで、箱の中の商品や、離れた場所にある複数の商品を一度に読み取れるため、棚卸しにかかる時間が大幅に短縮されます。

作業の効率化: バーコードのように商品を一つずつスキャンする必要がないため、手間が大きく削減されます。

リアルタイム管理: RFIDリーダーが在庫数を常に更新することで、リアルタイムでの在庫管理が容易になります。

この技術は、特にアパレル業界や物流倉庫など、大量の在庫を扱う現場で導入が進んでいます。コストはバーコードよりも高くなりますが、それ以上の効率化効果が期待できます。

自社での棚卸しから第三者の棚卸しへ

棚卸し作業を専門業者に委託する企業が増えています。自社でやるよりも多くのメリットがあるからです。主な理由を以下にまとめます。

1. 本業への集中と生産性の向上

棚卸しは、多くの従業員を動員し、長時間を要する作業です。特に小売店などでは、棚卸しのために店舗を休業したり、深夜に作業を行ったりするため、通常業務に大きな負担がかかります。専門業者に委託することで、従業員は本来の業務(接客、販売、製造など)に集中でき、販売機会の損失を防ぎ、全体の生産性を高めることができます。

2. コスト削減

一見すると業者への委託費用がかかるように思えますが、実はコスト削減につながるケースが多々あります。

人件費の削減: 棚卸しのために残業代や休日手当を支払う必要がなくなります。また、他部署から応援を出すことによる非効率もなくなります。

ミスの削減: 専門業者は棚卸しのプロなので、数え間違いや入力ミスが少なく、やり直しの手間やそれに伴うコストも削減できます。

機会損失の回避: 閉店せずに棚卸しができるため、その間の売上を確保できます。

3. 棚卸し精度の向上

専門業者は、棚卸しに特化したノウハウや専用の機材(ハンディターミナル、RFIDリーダーなど)を持っています。これにより、正確かつスピーディーに棚卸しを行うことができ、在庫の差異を最小限に抑えることができます。正確な在庫データは、その後の発注計画や経営判断に不可欠です。

4. 経営の客観性・透明性の確保

棚卸しは、会社の利益を計算する上で非常に重要な作業です。自社の従業員が棚卸しを行う場合、意図的でなくても過少・過大計上といったミスが生じる可能性があります。専門業者という第三者が棚卸しを行うことで、より客観的で信頼性の高い在庫数を確保でき、監査などに対しても説明責任を果たしやすくなります。

5. 在庫管理の課題解決につながる

専門業者は棚卸し作業だけでなく、在庫管理に関するコンサルティングまで行うケースもあります。棚卸しを通じて得られたデータを分析し、過剰在庫や滞留在庫の課題を指摘してくれるなど、より効率的な在庫管理の提案を受けられることもあります。

これらの理由から、特に在庫数が多かったり、棚卸し作業が複雑だったりする企業では、専門業者への委託が有効な選択肢となっています。


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