転職歴が多い応募者をどう判断するか?面接担当者の心構え

採用

Last Updated on 2025年10月3日 by

転職歴が多い人の面接で注意すること

採用担当者です。履歴書を見て、転職回数が大変多く、一つ一つの会社での勤務期間も短い人が応募してきたとき、我慢ができない人なのかとマイナスにとらえがちですが、単に運が悪かった人かもしれません。どのように考えて面接すればよいかアドバイスをお願いします。

これは採用担当者として非常に難しいところです。転職回数が多く、勤務期間が短い応募者については、一方的に決めつけるのではなく、「なぜそうなったのか」という背景を深掘りすることが重要です。

マイナス面の懸念

  • 定着性への懸念: 「すぐに辞めてしまうのではないか」という不安です。採用や教育にはコストがかかるため、短期離職は大きな損失となります。短期離職を繰り返してきた人は我慢強さや忍耐力に欠ける可能性があります。
  • 人間関係の構築: 職場での協調性や、新しい環境への適応力に問題があるために短期離職を繰り返した可能性が考えられます。
  • キャリアの軸の不安定さ: 一貫したキャリア目標が見えず、「とりあえず」で転職を繰り返している印象を与え、計画性や目的意識の希薄である可能性があります。
  • スキル・知識の定着: 期間が短いと、深い専門知識やスキルを習得し、成果に結びつけるまでには至っていない可能性があります。

プラス面として考えられること

  • 幅広い経験と適応力: 複数の異なる企業文化、業界、業務プロセスを経験しているため、多様な状況への対応力や順応性が高い可能性があります。これは、スタートアップや変化の激しい環境で特に役立ちます。
  • 豊富なネットワークと視点: 異なる組織で培った人脈や、物事を多角的に見る視点を持っているかもしれません。
  • 自己成長への意欲: 自分の理想や求める環境を追い求め、積極的に行動している結果かもしれません。成長意欲が強く、環境を選ぶ基準が明確であると捉えることもできます。
  • 即戦力性: 会社を渡り歩く中で、入社後すぐに成果を出すための「立ち上がり方」を熟知している可能性があります。

採用面接で確認すべき「なぜ」

重要なのは、これらのマイナス面・プラス面を安易に決めつけるのではなく、面接で深掘りし、その行動の裏にある理由と、自社への適性を見極めることです。

  1. 「なぜ転職したのか」の理由を深掘りする
    • 一貫した理由があるか: 各社で「新しいスキルを身につけたかった」「より責任のあるポジションを求めた」など、明確なキャリアプランに基づいた前向きな理由があるか。
    • 「逃げ」の転職ではないか: 給与、人間関係、仕事内容など、不変的な不満から「逃げる」ように辞めていないか。この場合、「我慢ができない」と判断される可能性が高まります。
  2. 短期離職期間に何を学んだかを確認する
    • たとえ1年未満の勤務でも、「この期間で○○という具体的なスキルや経験を得て、次の会社でこう活かした」といった説明ができれば、それは短い期間を最大限に活用できる能力がある証拠になります。
  3. 自社で長期的に働くビジョンがあるか
    • 今回の応募が、これまでの経験を活かし、腰を据えて働きたいと思える明確な目標に基づいているかを確認します。「この会社でなら、これまでの経験が完全に活かせる」という具体的な説明と熱意があるかを見極めましょう。

どのくらい質問してよいか、NG質問は?

転職回数が多い応募者に対して、職歴を深く掘り下げることは、その応募者の採用後の定着性や活躍度を見極めるために、全く問題ありません。むしろ、採用担当者として必須のプロセスです。

ただし、聞き方には注意が必要です。応募者に不快な思いをさせず、本音を引き出し、かつ公正な採用選考の原則を守ることが大切です。

職歴(特に退職理由や在籍期間)は、応募者の「仕事への価値観」「問題解決能力」「自社への適性」を判断するための最も重要な情報源です。

採用面接は、職務遂行能力や適性を中心に評価することが目的であり、転職回数が多いこと自体を責めるのではなくその行動の裏にある動機や学びに焦点を当てて質問することが求められます。

聞き方のポイント

深掘りする際は、応募者を責めるような表現を避け、「興味関心」や「前向きな意図」に焦点を当てて質問することがポイントです。

懸念点質問の目的聞き方の具体例
定着性・忍耐力短期離職の背景にある「目的」や「困難への対処法」を確認する。「次は長く働きたい、という明確な理由は何でしょうか?」
「もし、入社後に前職と同じような困難に直面した場合、どのように乗り越えようと考えますか?」
退職理由ネガティブな理由(不満)を、ポジティブな動機(希望)に昇華できているかを確認する。「前職を退職されたきっかけとなった出来事はなんでしょうか?また、その経験から何を学ばれましたか?」
「A社では△△の経験を積んだとありますが、なぜわずか○年で次のステップへ進もうと決断されたのですか?」
一貫性・目的意識複数の職歴を通して、一貫したキャリアの軸があるかを見極める。「これまでの複数のご経験を通じて、一貫して大切にされてきた仕事の軸や価値観は何でしょうか?」
「様々な業種を経験されていますが、今回の当社の仕事は、これまでのキャリアのどの点につながるとお考えですか?」
即戦力性・適応力短期間で成果を出せる能力や、環境に順応できるスキルを確認する。「短期間の在籍でも、必ず達成できた、あるいは学べたと思う具体的な成果やスキルは何でしょうか?」

聞き方の心得

  • 断定的な表現を避ける: 「飽きっぽいから辞めたのでしょう?」「我慢ができない人ですか?」といった批判的な言葉は厳禁です。
  • 「なぜ」だけでなく「何を」や「どのように」で聞く: 「なぜ辞めたか」だけでなく、「その結果、何を得たか」「次はどうしたいか」という未来志向の質問にすることで、前向きな姿勢を評価しやすくなります。

面接で聞いてはいけないこと(NG質問)

採用選考においては、「応募者の適性や能力と関係のない事項」を質問することは、公正な採用選考の観点から禁止されています(職業安定法、男女雇用機会均等法、厚生労働省の指針等に基づく)。

つまり、通常の面接でも禁止されている、家族構成・家族の職業・収入・学歴、住居・生活環境、本籍・出生地、思想・信条、尊敬する人物、愛読書、宗教・支持政党、労働組合への加入歴、結婚・出産に関する予定、などについての質問は、転職歴を深堀りするためであっても絶対にしてはいけません。

また、以下の点にも注意しましょう。

  • 退職理由の背景にある家庭の事情: 応募者が自発的に「親の介護で」などと話した場合は差し支えありませんが、企業側から「家族の病気が理由ですか?」などと深掘りするのは、家族の状況や病歴を聞くことにつながり、不適切です。
  • 過去の会社への悪口: 応募者が前職の不満や悪口を延々と話す場合、それを遮る必要はありませんが、採用担当者側が「前職の社長についてどう思いますか?」などと特定の個人や組織に関する思想や信条を問うような質問は避けましょう。

まとめ

判断は、単に転職の回数や期間で判断するのではなく、その行動の「一貫した理由と目的」があるか、そして「この会社で働き続けたいという強い動機」で決めるべきです。

もし、これまでの転職について明確に納得できる理由があり、その人物が企業の求める人材像と職務内容に合致しているなら、その豊富な経験をプラスと捉えるべきです。逆に、一貫性がなく、曖昧な理由で転職を繰り返している場合は、定着性というマイナス面を重視せざるを得ません。