オフィスでも労働災害がある!?定期的な職場点検で労働災害を未然防止

労働災害

オフィスでも労災が発生する

オフィスでは労働災害は無い、と思い込んでいませんか。通常のオフィスでも「まさか」と思うような労働災害は発生しています。特に「転倒・つまずき」「物の落下・接触」「不適切な作業環境」はオフィスの3大リスクと言えます。通常のオフィスに潜む3大リスクについて、それぞれ具体的な事故例や危険な状況をいくつかご紹介します。

1. 転倒・つまずき

これはオフィス事故の中で最も多く発生するケースです。

リスク要因具体的な事故例・危険な状況
床面の段差・めくれカーペットの端が浮いており、急いでいた社員が足を引っかけて転倒し、手首を骨折した。
OA機器の配線PCや充電器のコードが通路を横切るように伸びており、電話対応中に席を立った社員がコードに絡まり転倒した。
通路の私物・障害物休憩後のフロアで、コーヒーを運んでいた社員が、一時的に通路に置かれていた私物のバッグにつまずき、飲み物をこぼして火傷を負った。
濡れ・滑りやすい床給湯室から出てすぐの床に水滴が落ちていたことに気づかず、滑って転倒し、頭を打った。
椅子のキャスター席を立った際に椅子を机の下に戻さず、後から通った人が椅子のキャスターに引っかかってバランスを崩した。

2. 物の落下・接触(衝突・激突)

高い場所からの落下や、不用意な動きによる接触・激突が原因となります。

リスク要因具体的な事故例・危険な状況
高い場所の収納物キャビネットの最上段に重いファイルボックスを置いており、それを取り出そうとした際にバランスを崩し、ファイルが顔面に落下した。
不安定な什器地震が発生した際、壁に固定されていなかった背の高い書架が転倒し、通路を歩いていた社員を直撃した。
開いた引き出し・扉デスクで作業中に、横の同僚が書類を取り出すために引き出しを開けたままにしており、立ち上がった際に開いた引き出しの角に脇腹を強打した。
不適切な運搬モニターなどの大型機器を一人で運搬しようとして、足元が見えなくなり、別の什器の角にぶつかって機器を破損し、同時に足を負傷した。
作業中の接触シュレッダーをかけている最中に、誤って指が投入口の近くまで入り込み、指を負傷した。

3. 不適切な作業環境(健康障害を含む)

直接的な外傷だけでなく、慢性的な不調や、急性の健康被害につながる環境要因です。

リスク要因具体的な事故例・危険な状況
VDT(PC)作業環境長時間のPC作業において、机や椅子の高さが合わず、ディスプレイの位置も不適切だったため、慢性的な肩こりや眼精疲労、腱鞘炎などを発症した。
換気不足インフルエンザなどの感染症が流行している時期に、換気が不十分な密閉された会議室で長時間作業し、集団感染が発生した。
照度・温度管理窓際で直射日光が当たる席で作業を続けた結果、熱中症に近い症状を発症した。
たこ足配線・発熱一つのコンセントに複数の電気ヒーターや充電器を接続し、許容電流を超えて発熱・発火し、火災につながりかけた。
整理整頓の不徹底キャビネットの周りに書類や備品が散乱しており、必要な物を探している最中に、その散乱した物につまずいて怪我をしたり、時間を大幅にロスしたりした。

これらの具体的な事例を共有することで、オフィス内の危険箇所に対する従業員の意識を高めることができます。

オフィスの労災防止リスクチェックリスト(案)

普段見慣れている場所だからこそ見落としがちな危険を洗い出すため、「通路・床面」「設備・什器」「電気・火災」「作業環境・衛生」「緊急時対策」の5つの角度からチェックリスト案を作成しました。

ぜひ、思い込みを排除し、「誰かがミスをする」「物が故障する」という前提で、一つひとつ、定期的に確認してみてください。

1. 通路・床面 (転倒・つまずき防止)

No.チェック項目確認ポイント
1-1通路に障害物はないか通路や階段に、段ボール、私物、台車、予備の椅子などを放置していないか。
1-2OA機器の配線は適切か床面を這う配線にカバー(モール)を設置し、つまずきのリスクを排除しているか。
1-3床面・階段は安全か濡れ、油汚れ、破損、段差、カーペットのめくれなど、滑り・つまずきの原因はないか。
1-4階段・傾斜路に手すりがあるか階段の端や傾斜路に、しっかり掴める手すりが設置され、ぐらつきがないか。
1-5荷物は適切に運搬されているか重い荷物や大きな荷物を人力で無理に運搬していないか。台車が活用されているか。

2. 設備・什器 (落下・衝突・挟まれ防止)

No.チェック項目確認ポイント
2-1キャビネット・書架は固定されているか地震対策として、転倒防止金具や突っ張り棒で壁や床に固定されているか。
2-2収納物は安定しているか高い棚やキャビネットの上段に、重い物や頻繁に出し入れする物を置いていないか。
2-3飛び出し・突き出しがないか引き出しやキャビネットの扉が勝手に開かないようになっているか。通路側に突き出ている部分がないか。
2-4椅子や机は安全か椅子や机に破損、ぐらつき、キャスターの不具合がないか。
2-5脚立・踏み台は安全か高所作業用の踏み台や脚立に、破損や「開き止め」「すべり止め」の故障はないか。使用後は元の場所に戻されているか。
2-6事務用品は安全に管理されているかカッター、ハサミなどの刃物や、釘・画鋲などの危険物がむき出しで放置されていないか。

3. 電気・火災 (感電・火災防止)

No.チェック項目確認ポイント
3-1コンセント・配線は適切かたこ足配線や、断線・被覆の破れがあるコードを使用していないか。
3-2燃えやすい物がないかゴミや書類の山など、燃えやすい物が電気機器の近くや通路に放置されていないか。
3-3消防設備は万全か消火器、消火栓、火災報知器の前に物が置かれていないか。使用期限切れはないか。
3-4喫煙ルールは守られているか禁煙場所での喫煙や、指定場所以外での火気の不適切な使用はないか。

4. 作業環境・衛生 (健康障害防止)

No.チェック項目確認ポイント
4-1室内温度・湿度は適切か室内温度は18℃~28℃、湿度は40%~70%を目安に適切に調整されているか。
4-2照度(明るさ)は十分か事務作業を行う場所で必要な明るさ(概ね300ルクス以上)が確保されているか。ちらつきや過度のまぶしさはないか。
4-3換気は十分か換気口や窓が塞がれておらず、適切な換気が行われているか。異臭やほこりの充満はないか。
4-4整理整頓(5S)が徹底されているか事務所内、倉庫、給湯室、トイレなどが「整理・整頓・清掃・清潔・しつけ」の原則に従って維持されているか。
4-5情報機器作業(VDT)環境は適切かディスプレイの位置、キーボードの高さ、椅子の調整など、無理のない姿勢で作業できる環境か。

5. 緊急時・その他対策

No.チェック項目確認ポイント
5-1避難経路は確保されているか非常口や避難経路を示す表示が明確か。経路を妨げる物が置かれていないか。
5-2非常口は正常か非常口の扉は容易に開けられるか。施錠されていたり、開閉を妨げる物はないか。
5-3防災備品は整備されているか救急箱、AED、ヘルメットなどの防災備品の設置場所が周知され、使用期限や点検が行われているか。
5-4安全衛生教育は実施されているか労働者に対し、避難訓練や緊急時の対応方法、ヒヤリ・ハット事例の共有などの教育が定期的に行われているか。
5-5健康管理対策は実施されているか長時間労働者への面接指導や、メンタルヘルス対策など、従業員の健康を確保するための措置が講じられているか。

チェックリストの活用ポイント

  • チェックは複数名で: 普段その場所を利用しない人や、安全衛生の専門家(衛生管理者など)も交えてチェックすると、思い込みによる見落としを防げます。
  • 「ヒヤリ・ハット」の収集: 「怪我には至らなかったが、危なかった」という事例(ヒヤリ・ハット)を日常的に集め、チェックリストに反映させることで、より実態に合ったリストになります。

このリストを基に、より詳細な自社の特性に合わせたチェック項目を追加・修正し、活用されることをお勧めします。