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  • 50人以上の事業場は衛生管理者が必要です

    衛生管理者とは

    労働安全衛生法の定めにより、職種にかかわらず「衛生管理者」を選任して衛生に係る技術的事項を管理させる義務があります。

    労働安全衛生法第十二条 事業者は、政令で定める規模の事業場ごとに、都道府県労働局長の免許を受けた者その他厚生労働省令で定める資格を有する者のうちから、厚生労働省令で定めるところにより、当該事業場の業務の区分に応じて、衛生管理者を選任し、その者に第十条第一項各号の業務(第二十五条の二第二項の規定により技術的事項を管理する者を選任した場合においては、同条第一項各号の措置に該当するものを除く。)のうち衛生に係る技術的事項を管理させなければならない。

    政令で定める規模は50人以上です。常時使用する労働者数が50人以上の場合に選任義務が生じます。

    選任すべき数

    常時50人以上の労働者を使用する事業者は、その事業場専属の衛生管理者を選任しなければなりません。また、人数によっては専任が必要になります。

    専属というのは、その事業所にしか勤務していないこと(他の仕事を兼任していてもかまいません)で、選任というのはその業務のみに従事することです。

    業種によっては、派遣契約や委任契約に基づき、自社の労働者以外の者に衛生管理者を担当させることも認められています。

    事業場の規模が大きい場合は複数の選任をしなければならず、次のとおりとなっています。

    衛生管理者の人数労働者数
    1人
    50人〜200人
    2人
    201人〜500人
    3人
    501人〜1,000人
    4人
    1,001人〜2,000人
    5人
    2,001人〜3,000人
    6人
    3,001人以上

    また、次に該当する事業場にあっては、衛生管理者のうち1人を専任(衛生管理者の業務だけを行う)にしなければなりません。

    1 業種にかかわらず常時1,000人を超える労働者を使用する事業場
    2 常時500人を超える労働者を使用する事業場で、坑内労働または一定の有害な業務に常時30人以上の労働者を従事させるもの

    常時500人を超える労働者を使用する事業場で、エックス線等の有害放射線にさらされる業務や鉛等の有害物を発散する場所における業務などに常時30人以上の労働者を従事させる場合は、衛生管理者のうち1人を衛生工学衛生管理者免許を受けた者のうちから選任することとなっています。

    衛生管理者の仕事

    衛生管理者は、労働安全衛生法第10条のうち衛生に関する事項を担当します。第10条は次の通りです。

    第十条 事業者は、政令で定める規模の事業場ごとに、厚生労働省令で定めるところにより、総括安全衛生管理者を選任し、その者に安全管理者、衛生管理者又は第二十五条の二第二項の規定により技術的事項を管理する者の指揮をさせるとともに、次の業務を統括管理させなければならない。
    一 労働者の危険又は健康障害を防止するための措置に関すること。
    二 労働者の安全又は衛生のための教育の実施に関すること。
    三 健康診断の実施その他健康の保持増進のための措置に関すること。
    四 労働災害の原因の調査及び再発防止対策に関すること。
    五 前各号に掲げるもののほか、労働災害を防止するため必要な業務で、厚生労働省令で定めるもの

    具体的には、次の業務です。

    1.健康に異常がある者の発見及び処置
    2.作業環境の衛生上の調査
    3.作業条件、施設等の衛生上の改善
    4.労働衛生保護具、救急用具等の点検及び整備
    5.衛生教育、健康相談その他の労働者の健康保持に関する必要な事項
    6.労働者の負傷及び疾病、それによる死亡、欠勤及び移動に関する統計の作成
    7.その事業の労働者が行う作業が他の事業の労働者が行う作業と同一の場所において行われる場合における衛生に関し、必要な措置
    8.その他衛生日誌の記載等職務上の記録の整備等

    また、衛生管理者は少なくとも毎週1回作業場等を巡視し、設備、作業方法又は衛生状態に有害のおそれがあるときは、直ちに、労働者の健康障害を防止するため必要な措置を講じなければなりません。

    衛生管理者を選任しなければならない事業場は、同時に衛生委員会の設置義務もあります。衛生管理者は衛生委員会のメンバーになります。

    選任の手続き

    事業場における常時使用する労働者数が50人以上になったときは、その選任事由が発生してから、14日以内に選任しなければなりません。

    選任したら、所轄の労働基準監督署長に遅延なく選任報告書を提出しなければなりません。

    免許の写し又は資格を証する書面を添付してください。

    衛生管理者の選任報告は、令和7年1月1日より電子申請による提出が義務づけられています。

    関連記事:労働者死傷病報告の電子申請について

    衛生管理者の資格

    衛生管理者になるには試験を受けて衛生管理者免許を取る必要があります。医師、歯科医師、労働衛生コンサルタントは、試験を受けなくても衛生管理者になることができます。

    衛生管理者免許は3種類あります。業務の範囲が広い順に、衛生工学衛生管理者、第一種衛生管理者、第二種衛生管理者となっています。難しい試験なので、50人近い事業場は早めの対策が必要です。

    第一種・第二種衛生管理者免許については、下の公益財団法人安全衛生技術試験協会のホームページを参考にして下さい。

    衛生管理者がいない場合

    衛生管理者が、病気その他の理由で短期間不在になるときは代理者を選任しなけれなりません。衛生管理者の巡視義務は1週間に1回なので、この義務を果たせない不在であれば短期的不在とは言えません。

    不在が長期的になるのであれば代理者ではなく資格を持った者を探さなければなりません。

    関連記事:衛生管理者が不在になったときはどうするか


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  • 監視または断続的労働とはどういうものか?

    労働基準法の規定

    労働基準法は、監視または断続的労働に従事する者で労働基準監督署長の許可を受けた者については、労働時間、休憩および休日に関する規定は適用しない旨定めています。

    労働基準法第41条 この章、第6章及び第6章の2で定める労働時間、休憩及び休日に関する規定は、次の各号の一に該当する労働者については適用しない。
    一 (略)
    二 (略)
    三 監視又は断続的労働に従事する者で、使用者が行政官庁の許可を受けたもの

    宿日直も断続的労働の一つです。ただし、宿日直はここで説明する「監視断続的労働」とは異なる所があるので次の記事を参照してください。

    関連記事:宿直日直の制度を導入する場合の注意点

    労働基準監督署長の許可が必要

    所轄労働基準監督署長に「監視・断続的労働に従事する者に対する適用除外許可」を申請し、許可を受けることにより、労働基準法の労働時間、休憩、休日について適用除外になります。

    監視・断続労働であれば1日8時間という法定労働時間のしばりはありませんが、適用する労働者についての所定労働時間を定める必要があります。その場合、約束していた時間を超えて勤務させた場合は超過時間分の追加賃金(割増しする義務はありません)を払う必要があります。その超過した時間帯が深夜にかかるときは深夜割増が必要です。

    「監視・断続的労働に従事する者に対する適用除外許可申請」の様式は厚生労働省ホームページの「主要様式ダウンロードコーナー」のページに掲載されています。

    具体的な例

    監視・断続的労働とは、通常の労働と比べて労働密度が希薄で、身体の疲労や精神の緊張も少ないとみなされる勤務のことです。

    この除外規定は、すごくヒマな仕事が想定されています。この規定を拡大解釈して、それなりに大変な仕事に適用すると問題になります。

    監視労働の具体例と非該当となる状態

    監視労働は、一定の部署で監視を主たる業務とし、身体的・精神的緊張が少ないと認められるものです。

    具体例

    • 守衛、門番:門や入り口で出入りを監視し、緊急時に対応する業務。
    • 宿直・日直:施設内での夜間や休日の見回り、電話応対など。
    • 住み込みのマンション・アパート管理人:日常の清掃や管理業務はあっても、大部分は待機時間である場合。

    該当しなくなる状態

    以下のような状況では、監視労働には該当しません。

    • 精神的緊張が高い業務:交通整理、駐車場の車両誘導、高価な物品を扱う場所の監視など、常に集中力を要する業務。
    • 危険または有害な場所での業務:危険物などを扱う場所での監視。
    • 通常の業務との混在:監視業務の合間に、頻繁に他の労働(例:清掃、事務作業)を行う場合。

    関連記事:夜間の守衛を採用する際の注意事項

    断続的労働の具体例と非該当となる状態

    断続的労働は、実作業が間欠的で、手待ち時間(待機時間)が実作業時間を上回るような業務です。

    具体例

    • 役員専属運転手:送迎業務がない待機時間が長い場合。
    • 寄宿舎の賄い人:食事の準備・片付けの時間が限られており、その間の待機時間が長い場合。
    • 設備等の修繕係:平常時は業務がほとんどなく、緊急の事故発生に備えて待機している場合。

    該当しなくなる状態

    以下のような状況では、断続的労働には該当しません。

    • 実作業時間が手待ち時間を上回る場合:常に清掃や管理作業を行っており、待機時間がほとんどない場合。
    • 実労働時間の合計が8時間を超える場合:たとえ実作業が断続的であっても、労働時間全体が長い場合は該当しません。
    • 人為的に断続的な労働形態を採用している場合:工場労働のように継続的な作業を、意図的に休憩時間を挟んで断続的にしているようなケース。

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  • 労働時間の適正な把握について

    労働時間の状況の把握

    長時間労働者に対する面接指導を実施する前提として、管理監督者を含むすべての労働者を対象として。労働時間の状況の把握をしなければなりません。

    安全衛生法第66条の8の3 事業者は、第六十六条の八第一項又は前条第一項の規定による面接指導を実施するため、厚生労働省令で定める方法により、労働者(次条第一項に規定する者を除く。)の労働時間の状況を把握しなければならない。

    面接指導を実施するため

    労働時間の把握は、長時間労働者に対する面接指導を実施するために行うものです。

    厚生労働省令で定める方法

    これは、労働安全衛生規則第五十二条の七の三に、タイムカードによる記録、パーソナルコンピュータ等の電子計算機の使用時間の記録等の客観的な方法その他の適切な方法とする。と定められています。 具体的な点は後述します。

    次条第一項に規定する者を除く

    これは、高度プロフェッショナル制度対象者のことです。高度プロフェッショナル制度対象者は、別な方法により管理することになります。管理監督者や裁量労働制の適用者は除かれません。

    労働時間の把握方法

    労働時間の状況は次の方法によって把握する必要があります。

    ア タイムカードによる記録

    イ パーソナルコンピュータ等の電子計算機の使用時間の記録等の客観的な方法

    ロ その他の適切な方法

    タイムカードによる記録

    多く採用されている方法は、タイムカードの打刻時刻を始業及び終業の時刻として記録する方法です。

    これらの方法は、必ずしも労働時間と一致していないという難点があります。

    朝、タイムカードを打刻してもすぐに仕事を始めるとは限りません。帰りのときも、仕事が終わってすぐにタイムカードを打刻しているとは限りません。

    なお、タイムカードを労働基準法に定めがある「出勤簿」としている事業場もありますが、タイムカードは出勤簿の代わりにはなりません。

    関連記事:出勤簿の記載事項と管理上の注意点

    パーソナルコンピュータ等の電子計算機の使用時間の記録等の客観的な方法

    業務用パソコンへのログイン、ログアウトにより就労時間を把握する方法です。

    ICタイムカードを使って就労時間を把握する方法もあります。ICタイムカードを利用した場合は、勤怠管理システムと連動させることで、出社・退社時間をPC操作履歴や入退室時間と照らし合わせた確認作業ができるため、労働時間の把握や管理がしやすくなります。

    この方法による場合は、パソコンやスマホで有給休暇、時間外労働の申請・承認もできるため、管理上の利点も増します。

    パソコン等の記録で勤怠を管理するときは、社内のパソコンでデータ管理するよりも、クラウド型勤怠管理システムが有効です。初期費用も抑えられます。

    その他の適切な方法

    具体例として、通達では「事業者の現認」を挙げられています。

    「現認」とは、従業員が出社した時間と退社した時間とを、上司などが実際にその目で見て確認した時間を記録することです。

    しかし、上司が部下の行動をすべて把握することは現実には困難なことから、この方法によるには相当無理があるでしょう。

    自己申告制については、やむを得ず客観的な方法により把握し難い場合には可能とされています。

    ただし、現実的には、客観的な方法を利用できないケースは考え難いでしょう。通達でも、タイムカードによる出退勤時刻や入退室時刻の記録やパーソナルコンピュータの使用時間の記録などのデータを有する場合や事業者の現認により当該労働者の労働時間を把握できる場合にもかかわらず、自己申告による把握のみにより労働時間の状況を把握することは、認められない」としています。

    みなし算定

    「みなし」というのは実際にかかった時間にかかわらず、そうなのではないかと仮定して労働時間を決めることです。労働時間のみなし算定は厳密には問題がないとは言えませんが、例えば制服への着替え時間について、実際にそれぞれ要した時間ではなく一律で着替え時間は何分とするという方法が実際に行われています。例としては1回3分または5分があります。一日の労働時間に自動的に6分または10分を加算するわけです。この時間は、かかっている時間の平均ではなく、実際にこのくらいあればよいだろうという納得感のある時間を設定しなければなりません。

    着替え時間にみなし時間を設定することがあるのは、何分かけて着替えするかは人によって異なるし、意図的に時間をかけることも可能だからです。そうした現実を無視してそれぞれの実際に要した時間を労働時間として加算すれば不公平感が生じることもあるからです。

    記録の保管義務

    把握した労働時間の状況は、その記録を5年間保存しなければなりません。


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  • 事業場外労働のみなし労働時間制

    事業場外労働のみなし労働時間制とは

    事業場の外に出て働いているときに、実際の労働時間を計算せず、その仕事をするのに通常必要とする時間を働いたとみなす制度が「事業場外みなし労働時間制」です。

    一日の大半を社外で過ごす営業担当者などのように、実際の労働時間を会社が正確に把握することが困難な職種への適用が想定されています。

    労働基準法第38条の2 労働者が労働時間の全部又は一部について事業場外で業務に従事した場合において、労働時間を算定し難いときは、所定労働時間労働したものとみなす。ただし、当該業務を遂行するためには通常所定労働時間を超えて労働することが必要となる場合においては、当該業務に関しては、厚生労働省令で定めるところにより、当該業務の遂行に通常必要とされる時間労働したものとみなす。

    実際の労働時間を把握できないときは、所定労働時間労働したとみなすという規定です。

    「みなす」というのは、そのような事実があったものとして扱うということです。

    たとえば、所定労働時間が8時間の場合に、ある日実際には4時間しか働いていなかったとしても、8時間働いたことにするということです。

    ただし書きの部分は、たとえば、所定労働時間が8時間であるとしても、通常、その8時間では足りず、10時間は必要な業務であれば、10時間労働したものとみなすという規定です。

    この場合だと、法定労働時間を超える2時間についての割増賃金を払わなければなりません。

    就業規則

    事業場外みなし労働時間制を行う場合は、就業規則に記載する必要があります。また、労働条件通知書や雇用契約書に明記しなければなりません。

    労使協定

    ② 前項ただし書の場合において、当該業務に関し、当該事業場に、労働者の過半数で組織する労働組合があるときはその労働組合、労働者の過半数で組織する労働組合がないときは労働者の過半数を代表する者との書面による協定があるときは、その協定で定める時間を同項ただし書の当該業務の遂行に通常必要とされる時間とする。

    通常の業務に必要とする時間については、労使協定で定めるという規定です。

    ③ 使用者は、厚生労働省令で定めるところにより、前項の協定を行政官庁に届け出なければならない。

    その労使協定を労働基準監督署に届け出る必要があります。

    「事業場外労働に関する協定届」の様式は厚生労働省ホームページの「主要様式ダウンロードコーナー」のページに掲載されています。

    なお、みなし労働時間が法定労働時間内であれば労使協定は必要ありません。就業規則の定めは必要です。

    この制度が適用されたときの労働時間

    所定労働時間をみなし労働時間とした場合は、実際の労働時間が所定労働時間より少ない場合でも、所定労働時間労働したとみなします。

    ただし、事業場外から会社に戻ってからの業務が定時を過ぎて続けば、残業として扱わなければなりません。

    例えば、営業担当者が夕方6時に会社に戻ってきて、9時に退社したときは、6時〜9時の3時間は時間外労働にしなければなりません。4時に戻ってきて、9時に退社したときは、終業時間(たとえば5時)から9時までの4時間が残業時間となります。

    この制度を適用できる場合

    みなし労働時間制の適用基準は2つあります。

    1つは、事業場外で業務が行われることです。

    労働の一部が事業場外で行われて、残りの一部の事務処理などが事業場内で行われる場合は、事業場外の労働の部分についてのみが「みなし労働時間」となります。

    2つめの条件は、使用者の具体的な指揮監督が及ばず、労働時間を算定し難い場合に適用できるとされていることです。

    通達(昭和63.1.1基発1号)
    事業場外で業務に従事し、かつ、使用者の具体的な指揮監督が及ばず、労働時間を算定することが困難な業務であること、したがって、次の場合のように、事業場外で業務に従事する場合にあっても、使用者の具体的な指揮監督が及んでいる場合については、労働時間の算定が可能であるので、みなし労働時間制の適用はないものであること。
    ①何人かのグループで事業場外労働に従事する場合で、そのメンバーの中に労働時間の適正な管理をする者がいる場合
    ②事業場外で業務に従事するが、無線やポケットベル等によって随時使用者の指示を受けながら労働している場合

    この通達によれば、

    携帯電話等で随時使用者の指示を受けながら労働する場合や、訪問先と帰社時刻、当日の具体的業務の指示を受けている場合などは、この見なし労働時間制は適用できないとされています。

    つまり、スマホ等でいつでも連絡がとれるようになった今では、スマホ等の所持が認められない現場や圏外にあるような現場でない限り、事業場外みなし労働時間制の適用は難しいと言われています。

    ただし、テレワークについては、通常はインターネットを通じて業務内容を把握でき、一定の指揮監督をすることができることから、事業場外みなし労働時間制の適用は難しいと言われてきましたが、コロナ禍を機に「テレワークにおける適切な労務管理のためのガイドライン」が発出され、これまでの解釈が若干緩和されたと考えられています。

    関連記事:テレワークにおける労務管理


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  • 割増賃金に代えて有休を選択する代替休暇制度

    代替休暇制度とは

    代替休暇制度とは、割増賃金のうち、時間外労働が60時間を超えた分の割増賃金を「お金」ではなく「休み」として与えることができる制度です。

    「60時間を超えた分」と書きましたが、正確には「60時間を超えた部分の割増賃金のうちの、割増率25%を超えた分」を休暇でとることができる制度です。

    1ヶ月60時間を超える時間外労働に対する割増賃金率は50%以上となっています。

    そこで、割増賃金のうち25%分は賃金で支給し、残りの25%分について、賃金か休暇を選ぶことができるようにしたのです。どちらにするかは、本人の意向が優先です。

    労働者の休息の機会を確保する観点から、まとまった単位である1日、半日、1日または半日のいずれかによって与えることとされています。

    代替休暇は、時間外労働が60時間を超えた月の末日から2ヶ月の間に与えなければなりません。

    関連記事:代替休暇|就業規則

    具体的な時間計算

    代替休暇の時間数を算定します。代替休暇の時間数を求めるには換算率が必要です。

    1か月の法定時間外労働時間数-60時間)×換算率=代替休暇の時間数

    換算率は次の式により求めます。

    「代替休暇を取得しなかった場合に支払うこととされている割増賃金率

    代替休暇を取得した場合に支払うこととされている割増賃金率」

    計算例

    法定外時間労働100時間とします。

    代替休暇を取得しなかった場合に支払うこととされている割増率は1.5
    代替休暇を取得した場合に支払うこととされている割増賃金率は1.25です。

    (100時間-60時間)×換算率(1.5−1.25)=10

    10時間が代替休暇の時間数です。

    代替休暇を与えることができる期間

    労使協定

    代替休暇制度を導入するには過半数組合、それがない場合は過半数代表者との間で労使協定を結ぶ必要があります。

    労使協定で定める事項は以下の事項です。

    ①代替休暇の時間数の具体的な算定方法

    ②代替休暇の単位(1日、半日、1日または半日)

    ③代替休暇を与えることができる期間(法定時間外労働が1か月60時間を超えた月の末日の翌日から2か月以内)

    ④代替休暇の取得日の決定方法、割増賃金の支払日

    この労使協定は、代替休暇の制度を設けることを可能にするものであって、個々の労働者に対して代替休暇の取得を義務づけるものではありません。制度があったうえで、代替休暇を取得するか否か、いつ取得するかは個々の労働者がその都度自由に決めることができます。

    関連記事:代替休暇に関する労使協定のサンプル


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  • メンタル不調者への職場復帰支援

    職場復帰支援プログラムの策定

    メンタルヘルス不調により休業した従業員が円滑に職場復帰し、就業を継続できるようにするため、事業者は、その従業員に対する適切な支援をする必要があります。

    職場復帰支援プログラムを事前に策定しておきましょう。

    職場復帰支援プログラムは、産業医等の助言を受けながら、衛生委員会等において調査審議して策定します。

    職場復帰支援プログラムの内容

    職場復帰支援プログラムにおいては、休職の開始から通常業務への復帰に至るまでの一連の標準的な流れを明らかにするとともに、それに対応する職場復帰支援の手順、内容及び関係者の役割等について定めます。

    職場復帰支援プログラムの実施に関する体制や規程の整備を行い、従業員に周知を図ります。

    職場復帰支援プログラムの実施は、従業員の個人情報の保護に十分留意しながら、事業場内産業保健スタッフ等(産業医等、衛生管理者等、保健師等、心の健康づくり専門スタッフ、人事労務管理スタッフ等)を中心に当該従業員と上司が、お互いに十分な理解と協力を行うとともに、主治医との連携を図りつつ取り組む必要があります。

    職場復帰までの流れ

    職場復帰までの流れは以下のようになります。職場復帰支援プログラムに沿って実施しましょう。

    本人が職場復帰したいと思うようになった

    ただし、「職場復帰したい」は意欲が出てきている表れなので良いのですが、「職場復帰しなければならない」であれば、焦燥感の表れかもしれません。回復の程度を注意深く判断する必要があります。


    リハビリ出勤の可否

    リハビリ出勤の制度を設けている場合は、この段階でリハビリ出勤を提案し、準備を進めます。リハビリ出勤とは言えいきなり出勤することが負担のようであれば、外部機関を利用した模擬出勤や自宅から会社までの移動だけにとどめる通勤訓練なども検討します。

    リハビリ出勤規程


    主治医の診断書

    メンタル不調者の職場復帰の可否を判断するためには主治医の意見が必須だとされています。直接面談して意見を聴くことが望ましいのですが最低限、職場復帰についての意見が記載された主治医の診断書を提出してもらいましょう。

    職場復帰可能という内容が記載された診断書が提出されて職場復帰に向けて具体的動き出します。

    本人は、この診断書が出た段階ですぐにでも出社できると思いがちですが、会社としては、この診断書は職場復帰のプロセスの第一段階で、これから会社としての職場復帰の可否を判断することになります。その旨、本人にも理解してもらう必要があります。もちろん、不必要に時間をかけると本人に不安を与えるので迅速な対応を心掛けなければなりません。


    追加情報の収集

    必要に応じて、会社としての判断を下すのに必要な情報を追加収集します。
    ① 本人の復帰の意思を再確認し、復帰時期、希望復帰先、リハビリ出勤の希望などを聞く
    ② 産業医が確認したい事項を主治医に問い合わせ
    ③ 休職中の推移について上司、労務スタッフ等からの聞き取り
    ④ 可能であれば家族からの聞き取り
    など


    職場の受け入れ態勢について点検

    職場の受け入れ態勢について点検します。この際、現場の様子は管理職1人に聞くだけでなく、複数の声を聞く必要があります。
    ① 受入れ予定職場の繁忙の程度
    ② 予定している職務の難度や危険度
    ③ 同僚等との人間関係
    ④ 取引先との接触の程度
    ⑤ 就業上の配慮がどの程度できるか
    など


    職場復帰の可否を判断

    収集した情報をもとに職場復帰の可否を判断します。産業医の判断をもって最終決定している会社が多いようですが、担当役員、サポートを担当してきたスタッフ、実際に受け入れる職場の管理職等を含めた合議によって決定し、その議事の要旨を記録保存しておくことが望まれます。


    職場復帰プランの作成

    職場復帰を許可する決定をしたときは、速やかに職場復帰プランを作成します。職場のメンタルヘルス担当者が起案しますが、受け入れ職場と綿密に打ち合わせしながら作成します。また、このプランは本人にも提示し、要望があれば可能な限り受け入れるようにします。

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