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  • 総括安全衛生管理者は一定規模以上の職場で安全衛生に関するトップを担います

    総括安全衛生管理者とは

    総括安全衛生管理者は、労働安全衛生法の規定により、一定の事業場に置かなければならない管理者です。労働安全衛生法に定める安全衛生管理体制の最上位に位置付けられています。

    労働安全衛生法第10条 事業者は、政令で定める規模の事業場ごとに、厚生労働省令で定めるところにより、総括安全衛生管理者を選任し、(続く)

    選任義務がある事業場

    労働安全衛生法施行令第2条に、総括安全衛生管理者を選任すべき事業場が定められています。

    林業、鉱業、建設業、運送業、清掃業は100人以上、製造業、電気業、ガス業、熱供給業その他は300人以上、これ以外の業種でも1000人以上になると総括安全衛生管理者を置かなければなりません。

    危険な作業が含まれる職種ほど要件が厳しくなっています。

    業種常時使用する労働者数
    林業、鉱業、建設業、運送業、清掃業100人以上
    製造業(物の加工業を含む。)、電気業、ガス業、熱供給業、水道業、通信業、各種商品卸売業、家具・建具・じゅう器等卸売業、各種商品小売業、家具・建具・じゅう器等小売業、燃料小売業、旅館業、ゴルフ場業、自動車整備業及び機械修理業300人以上
    その他の業種1000人以上

    総括安全衛生管理者の任務

    (続き)労働安全衛生法第10条 その者に安全管理者、衛生管理者又は第二十五条の二第二項の規定により技術的事項を管理する者の指揮をさせるとともに、次の業務を統括管理させなければならない。
    一 労働者の危険又は健康障害を防止するための措置に関すること。
    二 労働者の安全又は衛生のための教育の実施に関すること。
    三 健康診断の実施その他健康の保持増進のための措置に関すること。
    四 労働災害の原因の調査及び再発防止対策に関すること。
    五 前各号に掲げるもののほか、労働災害を防止するため必要な業務で、厚生労働省令で定めるもの

    厚生労働省令で定めるものは、

    1.安全衛生に関する方針の表明に関すること
    2.安衛法第28条の2の危険性又は有害性等の調査及びその結果に基づき講ずる措置に関すること
    3.安全衛生に関する計画の作成、実施、評価及び改善に関すること

    総括安全衛生管理者の資格

    労働安全衛生法第10条2 総括安全衛生管理者は、当該事業場においてその事業の実施を統括管理する者をもつて充てなければならない。

    つまり。工場長、支店長などその事業場の実質的な責任者を選任する必要があります。

    実質的な責任者であれば、免許や講習などは求められていません。

    選任手続き

    労働安全衛生規則第2条 法第十条第一項の規定による総括安全衛生管理者の選任は、総括安全衛生管理者を選任すべき事由が発生した日から十四日以内に行なわなければならない。
    2 事業者は、総括安全衛生管理者を選任したときは、遅滞なく、様式第三号による報告書を、当該事業場の所在地を管轄する労働基準監督署長(以下「所轄労働基準監督署長」という。)に提出しなければならない。

    14日以内に選任して、選任後遅滞なく(事情が許す限りすぐに)、所定の様式により労働基準監督署長に報告しなければなりません。

    総括安全衛生管理者の選任報告は、令和7年1月1日より電子申請による提出が義務づけられています。

    関連記事:労働者死傷病報告の電子申請について

    労働安全衛生規則第3条 事業者は、総括安全衛生管理者が旅行、疾病、事故その他やむを得ない事由によつて職務を行なうことができないときは、代理者を選任しなければならない。

    総括安全衛生管理者は原則として不在が許されません。出張や病気などに備えて、スムーズに代行できるように、代理者はあらかじめ選任しておきましょう。

    総括安全衛生管理者の代理者を選任しても労働基準監督署へ報告する必要はありません。ただし、総括安全衛生管理者が職務を行えない状態が一時的でない場合は、速やかに新しい総括安全衛生管理者を選任して報告しなければなりません。

    労働局長の勧告

    都道府県労働局長は、総括安全衛生管理者の業務執行について事業者に勧告することができます。

    労働安全衛生法第10条3 都道府県労働局長は、労働災害を防止するため必要があると認めるときは、総括安全衛生管理者の業務の執行について事業者に勧告することができる。

    なお、総括安全衛生管理者には、安全管理者のような労働基準監督署長による増員又は解任を命ずる規定はありません。衛生管理者や産業医のような作業場等の巡回義務も課せられていません。


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  • 業種と人数によっては安全管理者を置かなければならない

    安全管理者は労働安全衛生法に定められています

    一定の業種及び規模の事業場ごとに「安全管理者」を選任し、その者に安全衛生業務のうち、安全に係る技術的事項を管理させなければなりません。

    労働安全衛生法第11条 事業者は、政令で定める業種及び規模の事業場ごとに、厚生労働省令で定める資格を有する者のうちから、厚生労働省令で定めるところにより、安全管理者を選任し、その者に前条第一項各号の業務(第二十五条の二第二項の規定により技術的事項を管理する者を選任した場合においては、同条第一項各号の措置に該当するものを除く。)のうち安全に係る技術的事項を管理させなければならない。

    「政令で定める業種及び規模の事業場ごとに」とあります。次の通りです。

    業    種事業場の規模(常時使用する労働者数)
    林業、鉱業、建設業、運送業、清掃業、製造業(物の加工業を含む。)、電気業、ガス業、熱供給業、水道業、通信業、各種商品卸売業、家具・建具・じゅう器等卸売業、各種商品小売業、家具・建具・じゅう器等小売業、燃料小売業、旅館業、ゴルフ場業、自動車整備業及び機械修理業50人以上

    該当する業種

    安全管理者を選任すべき業種は、主に工業系の業種と、工業系ではなくても人が多く出入りする業種です。上記の表をみて、自身の事業場がどの業種に該当するかご不明なときは、所轄の労働基準監督署に問い合わせた方がよいでしょう。

    該当する規模

    安全管理者を選任すべき労働者数は50人以上です。選任すべき業種に該当し、かつ、常時使用する労働者数が50人以上の場合に安全管理者を選任しなければなりません。

    事業場とは

    事業場」とは、同一の住所で、独立して業務を行っている場所を指します。つまり、「会社」という単位ではなく「支店、営業所、工場などの一つ一つが事業場です。

    製造業で、工場が何か所かに設置されていれば、本社に一人ということではなく、50人以上の工場ごとに安全管理者が必要になります。

    なお、安全管理者は、原則として「専属」であることが求められています。専属というのは、その事業場に属している(勤務している)人という意味です。同じ会社であっても、本社にいる人が別の工場の安全管理者になったり、一つの工場に勤務している人が別の工場の安全管理者になることはできません。

    カッコ書きの意味

    労働安全衛生法第11条に、カッコ書きの部分があります。「第二十五条の二第二項の規定により技術的事項を管理する者を選任した場合においては、同条第一項各号の措置に該当するものを除く。」

    つまり、第25条の2により技術的事項を管理する者を選任した場合は、安全管理者の業務はその範囲が除かれます。

    第25条の2は、建設業その他政令で定める業種に属する事業の仕事で、政令で定めるものを行う事業者の「救護」についての規定です。

    その第2項では、「前項に規定する事業者は、厚生労働省令で定める資格を有する者のうちから、厚生労働省令で定めるところにより、同項各号の措置のうち技術的事項を管理する者を選任し、その者に当該技術的事項を管理させなければならない。」と定めています。救護に関する技術的事項を管理する者の資格は、労働安全衛生規則第24条の8に定められています。 

    専任の安全管理者を選任すべき場合

    安全管理者は通常他の仕事を兼任することができます。ただし、300人以上の大人数の事業場になれば安全管理者は「専任」であることが求められます。業種別に次の規模が該当します。

    業    種 事業場の規模(常時使用する労働者数)
    建設業、有機化学鉱業製品製造業、石油製品製造業300人
    無機化学工業製品製造業、化学肥料製造業、道路貨物運送業、港湾運送業500人
    紙・パルプ製造業、鉄鋼業、造船業1,000人
    上記以外の業種(過去3年間の労働災害による休業1日以上の死傷者数の合計が100人を超える事業場に限る)2,000人

    安全管理者については、一定の規模になれば「専任」を求める規定がありますが、事業場の規模が何人になったら安全管理者を増やしなさいという規定がありません。衛生管理者と違うところです。ただし、事業規模や作業内容等の実態において必要に応じて複数の安全管理者を選任するが一般的です。

    ここで用語の意味を確認しておきます。
    選任というのは「ある人を選んでその役割を任せる」という用語です。つまり従業員の中から安全管理者を選ぶという意味です。
    専属というのは、「その場所に専(もっぱ)ら属している」という用語です。つまり、該当する事業場にのみ勤務しているという意味です。
    専任というのは、「専ら任(まか)せられている」という用語ですが、この用語には一つの仕事のみを受け持つという意味があります。勤務時間の全部を安全管理者として働く場合に専任となります。

    安全管理者の業務

    安全管理者の業務は「前条第一項各号の業務のうち安全に係る技術的事項の管理」と定められています。

    前条第一項各号の業務とは、総括安全衛生管理者が行う業務で、次のようになっています。

    (総括安全衛生管理者)
    第十条 事業者は、政令で定める規模の事業場ごとに、厚生労働省令で定めるところにより、総括安全衛生管理者を選任し、その者に安全管理者、衛生管理者又は第二十五条の二第二項の規定により技術的事項を管理する者の指揮をさせるとともに、次の業務を統括管理させなければならない。
    一 労働者の危険又は健康障害を防止するための措置に関すること。
    二 労働者の安全又は衛生のための教育の実施に関すること。
    三 健康診断の実施その他健康の保持増進のための措置に関すること。
    四 労働災害の原因の調査及び再発防止対策に関すること。
    五 前各号に掲げるもののほか、労働災害を防止するため必要な業務で、厚生労働省令で定めるもの

    安全管理者は、上のうち、安全に係る技術的事項を管理します。

    安全に関する技術的事項

    安全管理者が行うべき安全に関する措置とは、具体的には次のような事項をいいます。
    1. 建設物、設備、作業場所または作業方法に危険がある場合における応急措置または適当な防止の措置
    2. 安全装置、保護具その他危険防止のための設備・器具の定期的点検および整備
    3. 作業の安全についての教育および訓練
    4. 発生した災害原因の調査および対策の検討
    5. 消防および避難の訓練
    6. 作業主任者その他安全に関する補助者の監督
    7. 安全に関する資料の作成、収集および重要事項の記録
    8. その事業の労働者が行う作業が他の事業の労働者が行う作業と同一の場所において行われる場合における安全に関し、必要な措置

    作業場の巡視

    安全管理者は、作業場等を巡視し、設備、作業方法等に危険のおそれがあるときは、直ちに、その危険を防止するため必要な措置を講じなければなりません。

    安全管理者の巡視頻度は法律上に示されていませんが、一般的には衛生管理者の週1回に準じて行うべきだとされています。

    安全管理者の権限

    労働安全衛生規則第6条2に「事業者は、安全管理者に対し、安全に関する措置をなし得る権限を与えなければならない」という定めがあります。

    権限を与えられない名ばかり管理者では職場の安全を保つことができないからです。

    安全管理者の資格

    安全管理者は、安全管理者になる資格を持つもののなかから任命しなければなりません。資格は実務経験と研修で取得します。

    厚生労働大臣の定める研修(危険性・有害性等の調査に関する事項を含み計9時間)を修了した者で、次のいずれかに該当する者。

    1.大学の理科系の課程を卒業し、その後2年以上産業安全の実務を経験した者
    2.高等学校等の理科系の課程を卒業し、その後4年以上産業安全の実務を経験した者
    3.その他厚生労働大臣が定める者(理科系統以外の大学を卒業後4年以上、同高等学校を卒業後6年以上産業安全の実務を経験した者、7年以上産業安全の実務を経験した者等)

    研修は、各地の労働基準協会等が随時開催しています。

    労働安全コンサルタントの資格を持つものは上記の要件は不要です。

    (労働安全衛生規則第5条)

    選任の手続き

    安全管理者を選任すべき事由が発生した日から14日以内に選任しなければなりません。選任後は、遅滞なく所轄の労働基準監督署に報告しなければなりません。

    選任してから14日以内ではありません。選任すべき事由、例えば、常時使用する労働者数が50人になったときから14日以内に選任が必要です。労働基準監督署への届け出は選任後に「遅滞なく」です。

    「遅滞なく」というのは、文字通り「遅れないで」という意味ですが、法律で用いられるときは、一番スピードが求められるのが「直ちに」、次が「速やかに」、その次が「遅滞なく」です。「遅滞なく」は、合理的な理由があれば遅れてもいいけれどなるべく早く、と解されていますが、当然ながら制限なく遅れてよいものではありません。可能であれば「直ちに」提出するのが無難です。

    安全管理者の選任報告は、令和7年1月1日より電子申請による提出が義務づけられています。

    関連記事:労働者死傷病報告の電子申請について

    なお、増員や解任について労働基準監督署長から命じられることもあります。

    労働安全衛生法第11条2 労働基準監督署長は、労働災害を防止するため必要があると認めるときは、事業者に対し、安全管理者の増員又は解任を命ずることができる。


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  • メンタル不調への気づきと対応

    相談等の体制を整備する

    メンタルヘルスケアは、発生しないように対策するのが基本です。

    もし発生してしまったら早期発見が重要です。

    このため、事業者は、従業員、上司、家族等からの相談に対して適切に対応できる体制を整備しなければなりません。

    相談窓口を設置する

    相談窓口を設置して社内に周知しましょう。一度知らせればよいというものではありません。繰り返し相談窓口があることをアナウンスし、掲示等で分かりやすくしておく必要があります。

    相談窓口の力量は大事です。相談担当者は人当たりの柔らかい、信頼感のある人が向いているといわれています。ただし、相談担当者は、本人との面談だけでなく、本人の上司や、その他の職場の責任者と接触、交渉しなければならない場面もあります。温和であることが求められますが、弱気の人ではつとまりません。適材適所で力のある人を任命する必要があります。

    また、相談担当者は社内で一番、メンタルヘルスケアに関する最新の知見を吸収していることが求められます。外部研修への参加など、能力向上への支援を惜しまないようにしたいものです。

    従業員のセルフチェックを促す

    ストレスへの気づきのために、随時、セルフチェックを行うことができる機会を提供することも効果があります。

    家族の気付きを促す

    従業員がメンタルヘルス不調に陥った際に最初に気づくのは家族であることが少なくありません。また、治療勧奨、休業中、職場復帰時及び職場復帰後のサポートなど、メンタルヘルスケアに家族の役割は重要です。

    このため、事業者は、従業員の家族に対して、ストレスやメンタルヘルスケアに関する基礎知識、事業場のメンタルヘルス相談窓口等の情報を社内報等の広報を通じて提供することが望ましいでしょう。

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  • 健康情報管理規程のサンプル

    健康情報等取扱規程

    (目的)
    第1条  ◯◯株式会社ににおける業務上知り得た健康情報等は、本規程に則り適切に取り扱う。

    (健康情報等)
    第2条 健康情報等は 別表1の内容を指す。

    (健康情報等の取扱い)
    第3条 「健康情報等の取扱い」とは、健康情報等に係る収集から保管、使用(第三者提供を含む。)、消去までの一連の措置を指す。

    (責任者と取扱者)
    第4条 健康情報等を取り扱う者を次の通り区分する。

    (1)健康情報等を取り扱う責任者(以下「責任者」という。)は本社◯◯部長とする。
    (2)健康情報等を取り扱う者(以下「取扱者」という)は、責任者が指名した者と産業医とする。取扱者は原則として全ての健康情報にアクセスできる。

    2 責任者と取扱者以外のものは、健康情報を取扱ってはならない。ただし、特に必要を認められて責任者の許可を得た者を除く。

    3 責任者と取扱者、許可を得て取り扱った者は、職務を通じて知りえた従業員の健康情報等を他人に漏らしてはならない。

    第5条 本規程における健康情報とは次のものをいう

    1.産業保健スタッフが労働者の健康管理を通じて得た情報
    2.健康診断の結果
    3.長時間労働者や高ストレス者に対する面接指導の結果
    4.健康診断や面接指導の結果に基づく医師から聴取した意見や就業上の措置の内容
    5.保健指導の内容
    6.健康測定の結果
    7.欠勤や休職の際に労働者から提出された診断書
    8.上記のほか、従業員などから提供された本人の病歴、健康に関する情報 など

    (本人同意)
    第6条 健康情報等を取り扱う場合には、あらかじめその利用目的・取扱方法を労働者本人に通知又は公表する。ただし、法令に基づき収集する場合を除く。

    (管理の方法)
    第7条 健康情報等の漏えい・滅失・改ざん等を防止するため、組織的、人的、物理的、技術的に適切な措置を講ずる。

    2 健康情報等を含む文書(磁気媒体を含む。)は施錠できる場所に保管する。健康情報はその内容が容易に部外者の目にふれない場所で取り扱わなければならない。産業医以外の者は責任者の許可を得た場合を除き健康情報を社外に持ち出してはならない

    3 健康情報等を情報システムで保管活用する場合は、責任者と取扱者、許可を得て取り扱った者のみがアクセスできるものとし、厳格にパスワードを管理しなければならない。また、情報システムに外部らの不正アクセス等により情報が漏えい等することがないように措置を講じなければならない。

    4 健康情報等は、法令又は社内規程に定める保存期間に従い保管し、保管期間を満了した健康情報等は廃棄又は消去するよう努める。

    5 健康情報等の取扱いを委託する場合は、委託先において当該健康情報等の安全管理措置が適切に講じられるよう、委託先に対して必要かつ適切な監督を行う。

    (開示等)
    第8条 従業員本人より当該本人の健康情報等の開示請求を受けた場合、本人に対し遅滞なく開示する。ただし、開示することにより、従業員本人又は第三者の生命、身体、財産その他の権利利益を害するおそれがある場合や、業務の適正な実施に著しい支障を及ぼすおそれがある場合等には、開示請求を受けた情報の全部又は一部を開示しないことができる。

    2 従業員本人より当該本人の健康情報等について訂正、追加、削除、使用停止(第三者への提供の停止を含む。以下「訂正等」といの請求を受けた場合で、その請求が適正であると認められる場合には、訂正等を行う。

    (第三者からの提供)
    第9条 第三者から健康情報等の提供を受ける場合には、個人情報保護法に則り、必要な事項について確認するとともに、記録を作成・保存する。

    (組織変更等に伴う引継ぎ)
    第10条 合併、分社化、事業譲渡等により他の事業者から事業を承継することに伴って健康情報等を取得する場合、安全管理措置を講じた上で、適正な管理の下、情報を引き継ぐ。

    (苦情の処理)
    第11条 健康情報等の取扱いに関する苦情は◯◯課が担当する。

    (周知)
    第12条 本取扱規程は当社のWEB掲示板に掲載することにより周知する。

    (附則)
    本規程は、令和◯年◯月◯日より実施する。

    厚生労働省のサンプル

    このページに掲載しているサンプルは厚生労働省「事業場における労働者の健康情報等の取扱規程を策定するための手引き」を参考に簡素化した規定例です。原文は次の資料をごらんください。


    関連記事:会社における健康情報の取り扱いについて

    会社事務入門社内規程のサンプル>このページ

  • メンタルヘルスケアのあらまし

    メンタルヘルスケアとは

    メンタルヘルスケアとは、メンタルヘルス不調に対して会社が行うべきケアです。メンタルヘルス不調とは、厚生労働省が定めた「労働者の心の健康の保持増進のための指針」において、精神および行動の障害に分類される精神障害や自殺のみならず、ストレスや強い悩み、不安など、労働者の心身の健康、社会生活および生活の質に影響を与える可能性のある精神的および行動上の問題を幅広く含むものをいう、と定義されています。

    メンタルヘルスケアは、会社の規模や、取り組みの経験値によって異なります。なにもしていないというのが一番まずいです。下にいくつか項目を取り上げましたが、ネット上で公開されている他社の事例を参考に、自社の体制作りに取り組みましょう。

    メンタルヘルスケアの実施手順

    現状分析を行う

    現状の把握をしないと地に足のついた対策を立てることができません。

    職場環境等の把握と改善

    研修会を実施する

    メンタルヘルスケアについて、一般従業員、ならびに管理職に対する研修会を実施する。

    教育研修と情報提供

    それぞれの役割を知る

    メンタルヘルスケアには、セルフケア、ラインによるケア、職場内産業保健スタッフ等によるケア、外部専門家によるケア、の4つやり方があります。

    4つのメンタルヘルスケア

    プライバシー尊重を意識する

    プライバシーは丁寧に扱わなければならないことを意識させましょう。

    会社における健康情報の取り扱いについて

    対応手順を知る

    従業員、上司、家族等からの相談に対して適切に対応できる体制を整備し、相談等により把握した情報を基に、従業員に対して必要な配慮を行い、必要に応じて産業医との相談、そして社外の医療機関につないでいきます。

    メンタルヘルス不調への気づきと対応

    対応には、病気についての正しい知識が必要です。厚生労働省のページを紹介します。

    休職制度と職場復帰支援

    休職制度のあらまし

    職場復帰の支援

    関連規程の整備

    メンタルヘルスケア対策規程のサンプル

    ストレスチェック実施規程のサンプル

    リハビリ出勤規程のサンプル


    会社事務入門>このページ

  • フレックスタイム制のあらまし

    フレックスタイム制とは

    フレックスタイム制とは、労働者があらかじめ定めた総労働時間の範囲内で、日々の始業時刻と終業時刻、労働時間を自ら決めることができる制度です。(根拠規定:労働基準法第32条の3等)

    一般的にプログラマー、デザイナー、企画職、事務職などのように、外部との接触時間等を調整しやすく、同僚との連携事務が少ないなど、自分のペースで業務を進めやすい仕事はフレックスタイム制を適用しやすいと言われています。

    逆に、接客業、サービス業、工場のライン、営業職などのように顧客と対面で行う仕事や、連携する同僚や外部が多い仕事はフレックスタイム制を適用しにくいと言われています。

    フレックスタイム制を導入するためには、就業規則の改定と労使協定の締結が必要です。

    就業規則を改定する

    まず、就業規則で、始業及び終業の時刻を労働者の決定に委ねる旨を定めます。始業及び終業時刻の両方を労働者の決定に委ねることが必要です。

    関連記事:フレックスタイムの就業規則規定例

    清算期間、清算期間における総労働時間についても、就業規則に定めます。

    労使協定を結ぶ

    フレックスタイム制の基本的枠組みについて労使協定を結びます。

    定めるべき事項

    □ 対象となる労働者の範囲
    □ 清算期間
    □ 清算期間における所定労働時間(総労働時間)
    □ 標準となる1日の労働時間
    □ コアタイム(定める場合)
    □ フレキシブルタイム(定める場合)

    関連記事:フレックスタイム制に関する労使協定のサンプル

    対象となる労働者の範囲

    フレックスタイム制を適用する労働者の範囲を決めます。対象となる労働者の範囲は全労働者とすることもできるし、個人ごと、課ごと、グループごと等様々な範囲を決めることができます。

    清算期間

    計算単位となる期間、清算期間を定めます。

    清算期間が1ヶ月以内であれば労使協定を労働基準監督署に届出る必要はありませんが、清算期間の上限を1ヶ月を超え3ヶ月以内にした場合は、労使協定を労働基準監督署に届出る必要があります。

    清算期間の長さと起算日も定めなければなりません。単に「1ヶ月」とせず、毎月1日から月末までなどと具体的に定めることが必要です。

    清算期間における所定労働時間(総労働時間)

    つぎに、清算期間中の総労働時間を定めます。労働者が労働すべき総所定労働時間のことです。

    この時間は、平均したときに、1週間の労働時間が法定労働時間の範囲内となるように定める必要があります。

    清算期間が1ヶ月を超え3ヶ月以内の場合は、清算期間内の1ヶ月ごとに区分した期間に1週平均50時間を超えた場合、清算期間の途中であっても、各期間に対応した賃金支払い日に割増賃金を払わなければなりません。

    標準となる1日の労働時間

    標準となる 1 日の労働時間とは、年次有給休暇を取得した際にこれを何時間労働したものとして賃金を計算するのか、明確にしておくためのものです。通常はフレックスタイム制導入前の所定労働時間にしています。適切と思われる労働時間にしても構いません。

    コアタイム・フレキシブルタイム

    必ず勤務すべき時間帯(コアタイム)を定めることもできます。会議の時間を取りたいなど、完全に自由にすると支障が出る心配がある会社はコアタイムを設定するところが多いです

    コアタイムの開始及び終了時刻を定めます。コアタイムは、法令上必ず設けなければならないものではありませんが、設定する場合は、労使協定において、その開始及び終了の時刻を定めなければなりません。

    コアタイムを決めるときは次の通達に留意する必要があります。

    昭和63.1.1基発1号、婦発1号、平成113.31基発168号
    フレキシブルタイムが極端に短い場合、コアタイムの開始から終了までの時間と標準となる1日の労働時間がほぼ一致している場合等については、基本的には始業及び終業の時刻を労働者の決定にゆだねたこととはならず、フレックスタイム制の趣旨には合致しないものであること。

    労使協定が異なる事業場に異動した場合は、労働時間は通算できません。賃金を清算する必要があり、それぞれの期間の労働時間が週40時間を超えていれば、割増賃金の対象になります。

    コアタイムが決まればそれ以外の時間がフレキシブルタイムですが、労使協定にそれぞれ記載することもできます。

    時間外労働の扱い

    使用者は労働時間を把握する義務がある

    フレックスタイム制では、始業及び終業の時刻を労働者の決定に委ねるのですが、いつ来たか、帰ったかを知らなくてよいというものではなく、使用者はタイムカードなどで、各労働者の各日の労働時間を把握する義務があります。

    これをしないと、事前に定めた総労働時間を超えて労働したのか、不足だったのか把握できず、正しい賃金計算ができなくなります。また、長時間労働の把握ができないので安全配慮義務を果たすことができません。

    残業がないわけではないので36協定も必要

    36協定も締結する必要があります。清算期間の総労働時間が、法定労働時間の総枠を超えない限りは、時間外労働は発生しませんが、時間外労働が無いということではありません。

    36協定は、通常、1日について延長することができる労働時間を記載しますが、フレックスタイム制の場合は、1日単位で時間外労働を計算しないので、「清算期間を通算して〇時間」という記載になります。

    関連記事:時間外労働の手続き

    労働時間の過不足処理の注意点

    清算期間が終わってみると、必要な総労働時間まで働いていないとか、逆に働きすぎがあったということも考えられます。

    フレックスタイム制では、時間外労働であるかどうかは、1日単位で判断しないで、清算期間を単位として判断します。清算期間で過不足をみて、法定労働時間を超えていれば時間外労働となります。例えば、清算期間が暦日30日の1ヶ月であれば、171.4時間(40時間×(30÷7日))を超えた時間が時間外労働になります。

    清算期間の暦日数週の法定労働時間(40時間)
    31日177.1時間
    30日171.4時間
    29日165.7時間
    28日160.0時間

    多く働いていた場合は、その労働時間を次期の清算期間に繰り越すことはできず、超過分に相当する賃金を支払って清算しなければなりません。時間外割増賃金の対象になります。

    逆に労働時間が不足した場合は、翌月の総労働時間が法定労働時間の総枠の範囲内で、不足分を翌月に繰り越すこともできます。または、不足分に相当する賃金をカット(遅刻や欠勤と同様の扱い)します。

    割増賃金は賃金支払日の賃金を基礎にして計算する

    割増賃金は、賃金支払い日における賃金額を基礎として算定するのが基本です。ですから、例えば、清算期間の3ヶ月目に昇給があった場合は、昇給前の2ヶ月間を含めた清算期間を平均して、1週間当たり40時間を超えて労働した時間について、昇給後の賃金額を基礎として割増賃金を計算する必要があります。

    清算期間についての補足

    フレックスタイム制における清算期間の上限は3ヶ月です。

    1か月単位のフレックスタイム制は、月またぎの調整ができないため、ある月の労働時間が週当たり40時間を超えていた場合は、その超過時間は、時間外労働となり割増賃金の支払いが必要となります。

    逆にある月の労働時間が月の総労働時間に達していないと、その達していない時間は欠勤控除の対象になります。

    3ヶ月の間で調整できるようになると、3か月平均の週当たりの労働時間が法定労働時間の枠内に収まれば、時間外労働が発生せず、欠勤控除も発生しません。

    ただし、単月において特定の月に過重労働が生じないように、労働時間が清算期間の各月で週平均50時間に収めるように規定されています。

    3ヶ月の枠で平均して法定労働時間に収めれば、3ヶ月内の各月では、週平均50時間までは時間外労働にならないというわけです。

    この制度について、厚生労働省は子育て中の親が8月の労働時間を短くすることで、夏休み中の子どもと過ごす時間を確保しやすくなる、と説明しています。

    なお、清算期間が1ヶ月を超える場合は、特例業種の法定労働時間44時間は適用されません。特例業種であっても40時間×週数で計算した総枠に収まるように、総労働時間を設定しなければなりません。

    子の看護休暇や介護休暇との関係

    厚生労働省のQ&Aには、看護・介護休暇は、労働者の労務提供義務を消滅させる効果を有するものであり、一定期間内においてあらかじめ定めた総労働時間数の範囲内で労働者自身が柔軟に労働時間を設定することができるフレックスタイム制度とは趣旨が異なるものである。したがって、フレックスタイム制度のような柔軟な労働時間制度が適用される労働者であっても、申出があった場合には、時間単位で看護・介護休暇を取得できるようにしなければならない。と記載されています。

    このような運用は違法です

    フレックスタイム制を導入しても次のようになっていると違法です。

    □ 日によって上司が出社時刻や退勤時刻を指定する
    □ コアタイムでない時間帯に出社を強制する
    □ 時間外割増賃金を支払わない
    □ 時間外労働時間を翌月に繰り越させる
    □ 年次有給休暇を取得させない
    □ 18歳未満の労働者にフレックスタイム制を適用する


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