Last Updated on 2021年8月28日 by 勝
安全管理者の選任義務
一定の業種及び規模の事業場ごとに「安全管理者」を選任し、その者に安全衛生業務のうち、安全に係る技術的事項を管理させなければなりません。
労働安全衛生法第11条 事業者は、政令で定める業種及び規模の事業場ごとに、厚生労働省令で定める資格を有する者のうちから、厚生労働省令で定めるところにより、安全管理者を選任し、その者に前条第一項各号の業務(第二十五条の二第二項の規定により技術的事項を管理する者を選任した場合においては、同条第一項各号の措置に該当するものを除く。)のうち安全に係る技術的事項を管理させなければならない。
業種及び規模
政令で定める業種及び規模は、次のとおりです。
業 種 | 事業場の規模(常時使用する労働者数) |
林業、鉱業、建設業、運送業、清掃業、製造業(物の加工業を含む。)、電気業、ガス業、熱供給業、水道業、通信業、各種商品卸売業、家具・建具・じゅう器等卸売業、各種商品小売業、家具・建具・じゅう器等小売業、燃料小売業、旅館業、ゴルフ場業、自動車整備業及び機械修理業 | 50人以上 |
専任の安全管理者を選任すべき場合
次に該当する事業場は、安全管理者のうち1人を専任にしなければなりません。 「専任」とは、通常の勤務時間をもっぱら安全管理者として行うべき職務を遂行するために費やすことをいいます。
業 種 | 事業場の規模(常時使用する労働者数) |
建設業、有機化学鉱業製品製造業、石油製品製造業 | 300人 |
無機化学工業製品製造業、化学肥料製造業、道路貨物運送業、港湾運送業 | 500人 |
紙・パルプ製造業、鉄鋼業、造船業 | 1,000人 |
上記以外の業種(過去3年間の労働災害による休業1日以上の死傷者数の合計が100人を超える事業場に限る) | 2,000人 |
安全管理者の業務
安全管理者の業務は「前条第一項各号の業務のうち安全に係る技術的事項の管理」と定められています。
前条第一項各号の業務とは、総括安全衛生管理者が行う業務で、次のようになっています。
一 労働者の危険又は健康障害を防止するための措置に関すること。
二 労働者の安全又は衛生のための教育の実施に関すること。
三 健康診断の実施その他健康の保持増進のための措置に関すること。
四 労働災害の原因の調査及び再発防止対策に関すること。
五 前各号に掲げるもののほか、労働災害を防止するため必要な業務で、厚生労働省令で定めるもの
安全管理者は、上のうち、安全に係る技術的事項を管理します。
カッコ書きの意味
安衛法第25条の2第2項により技術的事項を管理する者を選任した場合は、安全管理者の業務はその範囲が除かれます。
労働安全衛生法第11条には、カッコ書きで、第二十五条の二第二項の規定により技術的事項を管理する者を選任した場合においては、同条第一項各号の措置に該当するものを除く。とあります。
第25条の2は、建設業その他政令で定める業種に属する事業の仕事で、政令で定めるものを行う事業者の「救護」についての規定です。
その第2項では、「前項に規定する事業者は、厚生労働省令で定める資格を有する者のうちから、厚生労働省令で定めるところにより、同項各号の措置のうち技術的事項を管理する者を選任し、その者に当該技術的事項を管理させなければならない。」と定めています。救護に関する技術的事項を管理する者の資格は、労働安全衛生規則第24条の8に定められています。
日常の業務
安全管理者は、作業場等を巡視し、設備、作業方法等に危険のおそれがあるときは、直ちにその危険を防止するため必要な措置を講じなければなりません。
安全管理者が行うべき安全に関する措置とは、具体的には次のような事項をいいます。
1. 建設物、設備、作業場所または作業方法に危険がある場合における応急措置または適当な防止の措置
2. 安全装置、保護具その他危険防止のための設備・器具の定期的点検および整備
3. 作業の安全についての教育および訓練
4. 発生した災害原因の調査および対策の検討
5. 消防および避難の訓練
6. 作業主任者その他安全に関する補助者の監督
7. 安全に関する資料の作成、収集および重要事項の記録
8. その事業の労働者が行う作業が他の事業の労働者が行う作業と同一の場所において行われる場合における安全に関し、必要な措置
権限
労働安全衛生規則第6条2に「事業者は、安全管理者に対し、安全に関する措置をなし得る権限を与えなければならない」という定めがあります。
権限を与えられない名ばかり管理者では職場の安全を保つことができないからです。
安全管理者の資格
安全管理者は、次の一つに該当する者、または労働安全コンサルタントから選任しなければなりません。
厚生労働大臣の定める研修(危険性・有害性等の調査に関する事項を含み計9時間)を修了した者で、次のいずれかに該当する者。
1.大学の理科系の課程を卒業し、その後2年以上産業安全の実務を経験した者
2.高等学校等の理科系の課程を卒業し、その後4年以上産業安全の実務を経験した者
3.その他厚生労働大臣が定める者(理科系統以外の大学を卒業後4年以上、同高等学校を卒業後6年以上産業安全の実務を経験した者、7年以上産業安全の実務を経験した者等)
研修は、各地の労働基準協会等が随時開催しています。
選任解任と報告
安全管理者を選任すべき事由が発生した日から14日以内に選任しなければなりません。選任後は、遅滞なく所轄の労働基準監督署に報告しなければなりません。
厚生労働省のウェブサイト「労働安全衛生法関係の届出・申請等帳票印刷に係る入力支援サービス」で作成することができます。統括安全衛生管理者・安全管理者・衛生管理者・産業医の選任報告は同じ様式を用います。解任も同じ様式を用います。
労働基準監督署長の命令
労働安全衛生法第11条2 労働基準監督署長は、労働災害を防止するため必要があると認めるときは、事業者に対し、安全管理者の増員又は解任を命ずることができる。
適格でないと認められた場合は、労働基準監督署長の解任命令もあります。