カテゴリー: 社会保険

  • 社会保険料の納付について

    社会保険料の負担者は

    会社は、毎月、社会保険料(健康保険料・介護保険料・厚生年金保険料)を納付しなければなりません。

    厚生年金保険料、健康保険料、介護保険料は従業員と事業主が折半して負担します。つまり、負担すべき社会保険料の半額を従業員の給与から差し引きして、事業主が負担すべき金額と併せて納付します。

    社会保険料を計算する

    標準報酬月額(または標準賞与額)に、厚生年金、健康保険、介護保険の保険料率を掛けて保険料を計算します。この計算は給与ソフトを用いていれば自動的に計算されます。

    給与支払い時の会計処理

    従業員に支払う給与から社会保険料の従業員負担分を控除します。

    社会保険料の従業員負担分は、給与支払時に「預り金」勘定で処理します。

    納入告知書で納付する

    社会保険料の納付先は日本年金機構です。

    健康保険組合や年金事務所から送付される納入告知書を用いて、対象月の翌月末日までに納付します。つまり、3月分社会保険料は4月末までに納付しなければなりません。

    納入告知書は20日頃に郵送されてきます。

    納入告知書の情報はネットで取得することもできます。

    納付方法は金融機関窓口、口座振替、電子納付があります。

    社会保険料納付時の会計処理

    社会保険料の会社の負担分は、「法定福利費」勘定で処理します。預かってある従業員負担分の納付は、「預り金」勘定の支出となります。

    注意点

    控除する月

    毎月の保険料は、被保険者の資格を取得した月から、その資格を喪失した月の前月までの分について月単位で控除(日割り計算はありません)して納付します。

    つまり、採用の日が月の途中であってもその月分から保険料が徴収されます。

    月の途中で退職する場合は、最終の月分の保険料の納付は必要ありません。月末に退職する場合は、資格喪失日が翌月1日になるため、退職月の保険料が徴収されます。

    同一の月に被保険者資格を取得・喪失した場合は、その月は1か月分の保険料が徴収されます。

    育児休暇と産休中は免除

    育休と産休中は、「産前産後休業取得者申出書」日本年金機構に提出することで社会保険料の負担が免除になります。従業員負担・事業主負担ともに免除です。その間の資格が失われるわけではないので、従業員は引き続き健康保険を使うことができ、将来支払われる厚生年金の額が減ることもありません。

    休職中は免除されない

    病気やケガで休職をしている従業員については、社会保険料が発生します。従業員負担分の徴収方法は会社ごとに決めて対象従業員に説明しなければなりません。

    納付期限を過ぎた場合

    納入告知書には、納付期限が記載されています。この納付期限までに納付しないと督促状が送付されます。督促状の指定期限までに納付すればペナルティはありません。

    督促状による指定期限までに社会保険料が納付されないと、延滞金がかかります。延滞金は、納入告知書の納付期限を過ぎた日から納付の前日までのあいだにかかります。さらに未納が続けば財産差し押さえなどが行われる可能性があります。

    会社事務入門社会保険の手続>このページ

  • 従業員の住所が変わったときの手続き

    住所変更届のサンプル

    住所変更届

    申請日令和 年 月 日

    総務部長殿

    氏名     印

    実際の移転日:令和 年 月 日

    新住所

    注意事項
    1.通勤経路の変更など通勤手当の変動があるときは別途届が必要です。
    2.家賃の変更など住宅手当の変動がある場合は別途届が必要です。

    以下会社記載欄
    □ 労働者名簿
    □ 社会保険
    □ 労働保険
    □ 通勤手当
    □ 住宅手当
    □ 社員名簿

    必要な事務手続き

    労働者名簿の記載追加

    住所は労働者名簿の記載事項の一つなので、新しい住所を書き加えなければなりません。

    関連記事:労働者名簿の記載事項と管理上の注意点

    社会保険等の手続き

    年金機構へは「健康保険・厚生年金保険 被保険者住所変更届」を提出します。マイナンバーと基礎年金番号が結びついている被保険者であれば、原則、氏名変更および住所変更に関する届出は不要です。

    関連記事:従業員の住所・氏名変更の社会保険手続き

    雇用保険については住所変更を届け出る必要はありません。

    税金の手続き

    年の途中で転居した場合は、その年の給与支払報告書を旧住所の自治体に提出します。

    年末調整のときに「給与所得者の扶養控除等(異動)申告書」には新住所を記載してもらう必要があります。

    給与計算への影響

    給与計算に影響するのは、通勤手当と住宅手当です。会社によってはその他に関係する手当があれば同様にチェックする必要があります。

    届け出に基づいて、賃金規程等のルールと照らし合わせて適切に変更する必要があります。

    市区町村への届出

    引越しをしたときは市区町村に届け出なければならないのですが、届出をしていないケースもあります。

    住民税の関係では住民票の住所を使うので、現住所と住民票の住所が一致していないと不都合です。住所を変更したら必ず住民票を移すように指導しましょう。


    会社事務入門給与計算のやり方>このページ

  • 傷病手当金の手続き

    傷病手当金とは

    傷病手当金とは、健康保険の被保険者が病気やケガのために会社を休んで、給与の一部または全部が支給されないときに支給される手当金です。

    傷病手当金の支給期間は、支給開始日から通算して1年6か月に達する日までが対象です。支給期間中に途中で就労するなど、傷病手当金が支給されない期間があった場合は、支給開始日から起算して1年6か月を超えても、繰り越して支給可能です。

    支給額

    標準報酬月額の3分の2

    金額は、よく給与の3分の2と言われますが、協会けんぽの場合は以下の計算式で求められます。

    支給開始日以前の継続した12か月間の標準報酬月額 ÷ 30日 × 3分の2

    標準報酬月額とは、従業員の月々の給与を1~50の等級に分けてあてはめたものです。例えば、月額給与(手当込み)が25万円から27万円までの人の標準報酬月額は26万円です。社会保険(厚生年金保険料・健康保険料)では実際の給料ではなく、標準報酬月額で計算します。標準報酬月額が給料明細書に記載されていない場合があります。知りたい場合は給与担当者に聞けばすぐに分かります。

    給与が支払われると減額や支給停止

    傷病手当金は療養のために仕事ができず、賃金を受けられない時の生活費補填のために支給されるものです。

    したがって、給料が支払われるのであれば、減額や支給停止となります。

    支給される傷病手当金より支払われる給料が多いかどうかによって以下のようになります。

    ①  給料が傷病手当金より多い場合 は傷病手当金は全額不支給です。

    ②  給料が傷病手当金より少ない場合は傷病手当金との差額を支給します。上限が傷病手当金ということになります。

    支給期間

    仕事ができず休業している期間が4日以上あるときに支給されます。最初の連続3日間は傷病手当金は支給されません。この3日間を「待期期間」といいます。

    最初の3日間は「連続」していなければなりません。例えば、2日目にいったん出社すれば、3日目から改めて連続3日をカウントします。4日目からは連続した休みである必要はありません。

    なお、最初の3日間は有給休暇や休日、祝日に該当する日であっても対象としてカウントされます。

    関連記事:社会保険や労働保険での待期期間とは

    傷病手当金の支給期間は、支給開始日から通算して1年6か月までです。途中で給与を受け取ったなどの理由で傷病手当金が支給されない期間があれば、その期間は1年6か月の期間に含まれません。

    言いかえれば、傷病手当金の支給開始日から、同一の病気やケガにより会社を休んだ日数の合計が1年6ヶ月に達するまで、傷病手当金を受給することができます。

    暦日の1年6か月ではないのでご注意ください(令和4年1月1日から施行)。

    これは、同じ病気であればという説明です。違う病気であれば、すでに受給していても新たに傷病手当金を受給することができます。

    病名が同じでも、新たな傷病手当金を受給できる場合があります。次の記事を参照してください。

    関連記事:人事担当者が知っておくべき「社会的治癒」の知識

    受給手続き

    確認する事項

    基本的には従業員が自ら申請する手続きですが、申請書に会社記入欄もあることから、会社が手続きをサポートするのが一般的です。

    従業員から病気やケガで休むという連絡を受けたときは次の点を確認します。

    □ その傷病は仕事に関係あるか
    仕事に関係があれば労災の可能性があります。労災であれば傷病手当金の手続きはできません。

    □ 何日休む予定か
    4日以上であれば傷病手当金の支給を受けることができることを伝えます。待期期間の3日間、あるいはそれ以降に有給休暇を使用するかも確認します。

    手続きの流れ

    協会けんぽまたは健康保険組合のホームページから「傷病手当金申請書」の用紙を入手します。

    本人が「被保険者本人記入欄」に記入します。

    医師に「療養担当者が意見を記入する欄」の記入を依頼します。

    会社が「事業主が証明する欄」に記入します。

    すべての事項を記入したら、「申請書」を協会けんぽまたは健康保険組合に提出します。

    添付書類として、賃金台帳の写し、出勤簿又はタイムカードの写しなどが必要です。添付書類は状況によって異なります。問い合わせるか、協会けんぽや所属する健康保険組合のホームページでの確認が必要です。

    提出は通常は郵送で行います。

    1か月以内の復帰が見込める場合は復帰後に申請するのが一般的です。1か月以上になるときは、給与締め日ごとに申請することもあります。

    受給までの期間

    申請されれば必ず支給されるわけではありません。審査があります。申請してから支給決定までに通常1~2か月かかるようです。

    支給決定があれば従業員の自宅に通知書が届き、支給決定から1週間くらいで従業員の銀行口座に傷病手当金が振り込まれます。

    従業員から思っていたより少ないと言われることがあります。多くの場合は支給対象の認識違いによるものです。医師が労務不能と認定した期間に出勤した場合。逆に、医師が労務不能と認定しない日に、本人が大事をとって仕事を欠勤した場合などは傷病手当金の支給対象期間になりません。本人が申し出た申請期間にこうした期間が入っていることがあります。

    別の傷病が生じた場合

    傷病手当金を受給中に、新たな傷病が生じた場合、1つ目の傷病と同様の受給手続きをすることになりますが、二重に支給されることはありません。最初の傷病による支給期間が満了したり支給停止されたときは受給できます。

    退職後の継続給付

    傷病手当金は条件が適合すれば退職して被保険者でなくなってからも支給される場合があります。

    関連記事:健康保険の資格喪失後の給付



    会社事務入門社会保険の手続き変更があったときの手続き>このページ

  • 社会保険料の変更を従業員に通知する

    通知義務

    毎月の給料から控除している社会保険料(厚生年金保険料と健康保険料)の額はときどき変更になることがあります。

    給与明細を交付しているので見れば分かるだろうということではなく、変動があることを通知しなけばなりません。

    厚生年金保険法29条、健康保険法49条に事業主の通知義務が定められています。正当な理由なく通知しない場合は、6か月以下の懲役または50万円以下の罰金が科せられる可能性があります。

    変動する場合

    まず、標準報酬月額の定時決定があります。年に一度、各従業員の社会保険料計算の基礎になる標準報酬月額を見直しすることになっています。

    標準報酬月額は、4月~6月の給与ををもとに決定して、標準報酬月額に変動があれば9月分の給与(支払い基準では10月給与)から社会保険料が変動します。

    関連記事:社会保険料の算定基礎届

    また、給与の大きな変動があったときは、その都度標準報酬月額が改定されます。

    関連記事:社会保険料の随時改定

    上記以外にも標準報酬月額が変更される場合があります。また、標準報酬月額が変動しなくても社会保険料の料率が変われば社会保険料が変化します。

    いずれにしても、給与から控除する社会保険料が変更になる場合は従業員に通知しなければなりません。

    通知の方法

    法令にはどのように通知するか詳細は定められていません。したがって、「今月から変更になったので給与明細書で確認してほしい」旨を全員に通知するだけでも法令違反ではありませんが、個別に変更内容を通知するのが親切な対応です。

    変更通知書の例

    令和 年 月 日

    〇〇〇〇殿

    総務部長

    社会保険料の変更について

    貴殿の標準報酬月額および社会保険料の個人負担分が、令和 年 月分( 月支給分)より、下記の通り変更されるので通知します。

    1.新標準報酬月額
    健康保険  千円 厚生年金保険  千円

    2 個人負担分保険料
    健康保険料   円 厚生年金保険料   円

    3 変更の理由
    資格取得時決定・定時決定・随時改訂・保険料率変更・介護保険料徴収開始・その他(     )

    以上


    会社事務入門社会保険の手続き変更があったときの社会保険手続き>このページ

  • 出向させるときの社会保険料と労働保険料

    出向者の賃金はどちらが支給するか

    出向者の賃金をどちらが支給するかは、特に法律上の制限はありません。出向元と出向先が出向契約によって定めます。

    3つのパターンがあります。

    □ 出向元が賃金の全額を支給する
    □ 出向先が賃金の全額を支給する
    □ 二つの会社から賃金を支給する

    どちらが賃金を支払うのかによって、保険料の負担の方法が異なります。

    なお、これは、出向者に賃金を支給するのがどちらかということで、実質的にどちらが負担しているかということではありません。

    例えば、出向先が賃金を支払うが、その費用を出向元の会社が負担している場合は、2つの会社が支払っていることにはなりません。実際に賃金を支払っている出向先が賃金を支払っている会社になります。

    出向元が賃金の全額を払う場合

    出向元の会社が賃金を支払う場合は、次のような扱いになります。

    労災保険の扱い

    出向者は出向先の会社の指揮命令下で業務を行うので、労災保険の保険料は、出向先の会社に納付義務があります。出向元の会社が賃金を全額支払っていても、出向先の会社が労災保険の保険料を負担しなければなりません。

    雇用保険の扱い

    雇用保険は、賃金を支払っている出向元の会社に保険料の納付義務があります。

    社会保険の扱い

    社会保険(健康保険、厚生年金保険)は、雇用保険と同じで、賃金を支払っている出向元の会社に保険料の納付義務があります。

    出向先が賃金の全額を払う場合

    出向先の会社が賃金を支払う場合は、労災保険、雇用保険、健康保険と厚生年金保険の保険料は全て、出向先の会社に納付義務があります。

    出向元で資格喪失の手続きを行って、出向先で資格取得の手続きを行う必要があります。

    二つの会社から賃金を支払う場合

    出向先の賃金水準が低い場合に、低くなった分を出向元が支給して、結果的に二つの会社から賃金を受け取ることがあります。

    労災保険の扱い

    労災保険の保険料は、実際に業務に従事している出向先の会社に納付義務があります。労災保険の保険料は、両方の会社の賃金を合計した額を基準にして、出向先の会社が負担しなければなりません。

    雇用保険の扱い

    雇用保険は、賃金が高い方の会社が支払っている賃金額を基準にして雇用保険料を負担することになります。賃金が低い方の会社は納付義務がありません。

    失業給付を受給することになれば、片方の会社の分の賃金を基準にした給付が算出されます。これでは出向社員にとって不利益になるので、雇用保険を考慮すると出向の場合に二つの会社から賃金を支払う方法はお勧めできません。

    社会保険の扱い

    社会保険については、両方の会社で加入する方法があります。

    関連記事:複数の会社で働く従業員の社会保険をどうするか

    会社事務入門労働条件を変更するときの注意点出向させるときの注意点>このページ

  • 複数の会社で働く従業員の社会保険をどうするか

    社会保険の手続き

    同時に複数の会社に勤務している場合、社会保険(厚生年金と健康保険)は、それぞれの会社で加入条件を満たせばそれぞれの会社が加入させて、それぞれの会社で保険料を天引きしなければなりません。

    パート勤務を掛け持ちしている場合に該当することがあります。

    関連記事:短時間労働者の社会保険加入条件

    従業員に主たる事業所をどちらにするか選択してもらいます。

    主たる事業所として選択された事業所を通じて年金機構に「健康保険・厚生年金保険 所属選択・二以上事業所勤務届」を提出します。

    すでに全国健康保険協会(協会けんぽ)の被保険者である場合は健康保険被保険者証を添付してもらいます。

    これを、事務センター(年金事務所)に提出します。期限は事実発生から10日以内です。電子申請、郵送、窓口持参のいずれかの方法で提出します。

    二以上勤務届で選択した主たる事業所を「選択事業所」と呼び、もう一方を「非選択事業所」と呼びます。

    社会保険料は、複数の事業所の給与額の合計で標準報酬月額を決定し、それぞれの事業所で按分した社会保険料を天引きします。この按分金額は、年金事務所がそれぞれの事業所の保険料を算定し、天引きする保険料額について各事業所にそれぞれに通知が発送されます。

    健康保険証は選択事業所の方で作成されます。

    雇用保険の手続き

    同時に複数の会社で雇用関係にある場合は、社会保険と違って重複加入することはできません。具体的には次のようになります。

    1.雇用保険の加入要件を満たす会社で加入することになります。

    2.複数の会社で雇用保険の加入要件を満たす場合は、生計を維持するに必要な主たる賃金を受ける雇用関係にある会社でのみ加入することになります。基本的には給与が多い方ということになります。重複加入することはできません。

    3.いずれの会社においても加入要件を満たさない場合には雇用保険に加入できません。

    関連記事:雇用保険の加入条件

    マルチジョブホルダー制度

    マルチジョブホルダー制度とは

    雇用保険は、基本的には上述のように、主たる事業所での労働条件を要件を満たしてときに適用されます。

    令和4年1月より、1社での雇用関係では被保険者要件を満たさない場合であっても、他社での労働時間を合算して雇用保険を適用する制度が始まりました。(雇用保険のマルチジョブホルダー制度)

    65歳以上の労働者本人からハローワークに申出を行うことで、申出を行った日から特例的に雇用保険の被保険者(マルチ高年齢被保険者)になることができます。

    制度の適用対象者

    マルチ高年齢被保険者となるには、以下の要件をすべて満たすことが必要です。加入後の取扱は通常の雇用保険の被保険者と同様に任意脱退はできません。

    1.複数の事業所に雇用される65歳以上の労働者であること
    2.2つの事業所(1つの事業所における1週間の所定労働時間が5時間以上20時間未満)の労働時間を合計して1週間の所定労働時間が20時間以上であること
    3.2つの事業所のそれぞれの雇用見込みが31日以上であること


    会社事務入門従業員を採用するときの手続きダブルワークについて>このページ